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「ごめんなさい」その九十四_第九十一話_指令は唐突に

 こんばんは、三日月です。
 携帯電話の普及率って、今どのくらいなんだろうなぁと、ふとこのお話を書いているときに思ったりしました。これだけ一般に広まっていなければ今回のことは書けなかったわけで、そう思うとありがたい話であります。文明の利器を使ってこそのエロス、描いていきたいですね。でもマナーも忘れないよう、注意していきたいものです。
 最新の流行り廃りをもうちょっと取り入れられればなとは、常々考えてはいるのですが。ええ、エロスの流行り廃りのことです。しかしなにをやっても露出になってしまう、一種の病気が作者にはありまして……
 というか、作中での日にちを早く進めないとなぁ……ハロウィン、クリスマス、お正月、バレンタインのイベントをやりたい……
 いつも拍手コメントメール、ありがとうございます。うれしいです。
 次回予告のコーナー! 次回は淫乱な愛さん特集です。いっぱいえっちなことをします!
 それでは第九十一話です、どうぞ。






















 九十一 指令は唐突に








 マスターががちゃりと、扉を開けてやってきてくれる。私たちを犯してくれるために。


 今夜は私、パティと、
詩音(ふみね)さんと花雪(かゆき)さんとでえっちなの。ピザ露出した、三人でご奉仕なの。


 だから、あのときの格好をそのまましてるの。わ、私はバスタオル一枚でまだマシだけど、詩音さんは裸エプロン、花雪さんは透け透けの白いブラにすごいミニのミニスカート(プリーツ)にノーパン。すごくやらしいんだから。


「ふふ、いい格好だ」


 マスターが笑いながら言ってくれる。私たちも恥ずかしいけど、マスターが喜んでくれてるみたいだからふふふってなるの。


「めくって、見せて」


「はいご主人様」


 エプロンがスカートがバスタオルがめくられ、私たちみんなのあそこが、マスターに見られちゃうの。


「ふふ、やはりちょっと壮観だな、パイパンばかりだと」


「ぱいぱん?」


 あれ、詩音さんかああってなったけど、花雪さん首かしげてる。私もなんのことか、よくわからなかった。


「ああ、あそこに黒いのが生えてないことをそう言うんだ。詩音も花雪もパティもパイパンさ、だから三人並ぶと、くるものがあるね」


「はぁ……よくわかりませんけれど、
深町(ふかまち)さまはお母さまのような大人の黒と、私たちのぱいぱんとどちらがお好きなのですか?」


「どちらかというと、ふふ、これ詩音にはもう言ったね、パイパンのほうが好きだよ」


「まあ、それはうれしいですわ。うふふ」


「ねっ。はぁ、はぁ」


 詩音さん、花雪さんにのっかってどきどきしてるのがこっちまで伝わるなぁ。ふふ。でも私たちみたいなまだ生えてないほうが好きなんだ。よかったぁ。うふふ。


「それでしたら深町さま、私は一生生えないよう、処理したほうがよいでしょうか」


「うぅん、どうしようかなぁ。生えてても別に嫌いってわけじゃあないし。花雪が恥ずかしいと思わないのなら、そうしてもいいよ、よく考えて選びなさい」


「はいな。ではどうしましょうか、うふふ」


「ゎ、わたし、どうしようっかなぁ。そっか、生えないのもできるんだね。はぁ。どうしよ」


「好きに悩みなさい、そこは君たちの体だ。さて、では眺めるのも堪能したし、順に君たちを犯してやろう」


「はい、ご主人様。お好きな性奴隷から使ってやってくださいませ」


 三人で考えてた台詞を言うの。するとマスターはにっこり、笑顔になってくれるの。私たちはそれがうれしいの。うふふ。


 えいっ、て。それから私たちは言われるより先に、サービスしたいなって決めてた。一回転をしちゃうの。詩音さんが裸エプロンでふわり、回ってあそこちらちら、花雪さんがミニスカふわりで、あそこちらちら、そして私がふわり、バスタオル一枚でするとずるっとタオルが落ちてっちゃって、裸になっちゃった。


「きゃっ」


 軽く声を上げすぐにタオルを拾おうとする。するとますたぁがもう我慢できないって顔で、私をベッドに押し倒してくれたの。


 ずっしり上に乗っかる、ますたぁが大好き。


 キスをちゅ、ちゅっと、して。うっとりとマスターを見上げるの。


 そうだ。考えてたこと、やらなくっちゃ。


「あ、あの、チケット、使いたいんですけど」


「うん? いいよ、なにしたいんだい?」


 がさごそ、すぐ隣に置いてあったチケットをマスターに渡す。


「なになに……いいけど、パティの体が持つかなぁ」


「が、頑張りまむっ」


「ふむ、じゃあ、やってみようか。チケット通り、今夜はお前を、二回犯してやろう」


 そう、お願いしたの。二回えっちしてください、って。えへへ。聞いてくれるますたぁ、大好き。


「落書きのほう、射精回数もそうだけど、もう一言なにか書くぞ、いいな?」


「ひゃいご主人様」


 落書きもお願いしたの。二回もますたぁにえっちしてもらった証拠、残しときたいから、こ、この前の
柚香里(ゆかり)さん絵里(えり)さんのあれ、お願いしたの。


 どきどき、するの。


 それからますたぁはまたちゅっちゅ、キスばっかりしながら、私をいじってくれた。うれしいキスと一緒にあそこをいじられ、私はすぐにぬれてきちゃうの。


「いつもどおり、あなたって言えたら挿入してやる、言えないなら、挿入する権利はあげない」


「……」そんなじっと見つめながらあまあまに言われると、従うしかないです、ますたぁ。


「い、入れてください、大好きな、あ、あなた……っ」


 ずぐんっ。おっきいますたぁが入ってきたぁ。はぁ、大変、大変だぁ。


「あっ、あっ、ご主人様ぁ」


「ダメだぞ、今だけずっとあなたって言え」


「まあ羨ましい、うふふ」花雪さん、笑いごとじゃあないですよっ。大変、なんですから。


「言わないなら二回どころか、このえっちもおしまいだね」


 ずる、抜けそうになる。私はあわあわと、ますたぁがほしくてたまらず、言うの。


「あなたっ。大好きっ。あなたっ」


「いい子だ」


 ずぶずぶうっ。はぁ、はぁ。大変だ、今日、おっきす、ぎ……っ。あっ。「あんっ、あなたっ」


「パティ、かわいいぞ、パティッ」


 ずっぷんずっぷん、ますたぁが動いてくれるの。私はあそこが変な感じで、ぬれちゃって、気持ちよくって、うれしくって、えぐえぐ泣きながら、好きっていっぱい言ったの。


「好きっ、好きっ、あなたっ、大好きっ」


「ああ、私もお前が大好きだっ」


 ほんとならほかの二人も一緒のえっちだったはずなのに、興奮したますたぁは私に夢中になってくれて、すごくうれしいな。えへへ。もっと気持ちよくなってもらえるよう、私は脚でますたぁをがっしりつかんで、背中に手を回して、体を揺らされていったの。ぎっしぎっし、ベッドがうるさくなるくらいに。


「ひっぐ、ひゃんっ、ひんっ」


「パティッ、パティ!」


 ああもう、言っちゃお!


「あなたっ! 愛してるわっ、あなた!」


「ああ、私もお前を愛してる!」


 どきどきっ。ああ、うう、しあわせすぎるよう。私今すっごく体が揺れたな。あそこも変な感じ、いっぱいぬれて、気持ちいいの。


「まあ……なんて素敵な性の営みですこと、はぁ」


「ねっ。はぁ。素敵だなぁ」


 二人ともがなにか言ってる。けど私の目にはますたぁしか映ってなくって、耳にはますたぁのあまぁい声しか聞こえない。はぁ、はぁ、自分の吐息がうるさい。そこをふさぐように唇をぶつけられ、またうれしくって泣いちゃうの。そしたらますたぁ、涙を舐めとったりなんかしちゃって、なんだかかあって恥ずかしくってうれしくって、また泣いちゃうの。


 好きって、言っちゃうの。声で、体で。


「好きっ、あなたっ」


「私もだよ、お前、すごく気持ちいい。体もめっちゃくちゃ締めつけて、そんなにない胸まで揺れて興奮する」


 ああ、恥ずかしいこと言うんだ。でもすっごくうれしいんだ。えへへ。あっ、んっ。


「お前はどうだ? 気持ちいいか?」


「はいあなた。ひうっ、ん、あっ、ん……気持ちいいわ、うふふ」


「よかった」


「あんっ」


 奥までごつんってぶつけてもらう。体全部をますたぁのものにしてもらえて、うれしくってますますぬれちゃう。そうしてぶつかって戻っては私を味わってもらい、小休止で胸を舌で転がされ、キスの嵐も。うふふ。うれしくって、泣きながら愛をささやいて、しあわせな気持ちでいっぱいになってきた。


「綺麗だよ」や、「かわいい、お前」なんて、いっぱい言ってもらっちゃうの。私はうれしくって、思いっきり脚を絡めるの。お返事に「あなたもカッコいいですよ」って言うと、ちょっぴりますたぁ、照れちゃうの。えへへ。かわいいって、おこがましいけど思っちゃうなぁ。


 そうしてしばらく動かされ、だんだんへとへとになっていく。ますたぁがずっちゅずっちゅこすれ、気持ちよくって、硬くって、おっきくって、激しいから、疲れてきちゃうの。


「はぁ、はぁ、ひっ、んっ、はぁ、んっ……はぁっ、ひゃっ、う」


「パティ……お前をずっとこうして味わっていたいよ。甘い体、なんて気持ちのいい」


「うれしいでしゅ、あなた、えへへ……っ、んっ、はぁっ、うっ、んっ」


「ああそろそろ限界かな? しょうがない、お前に無理をさせるのもあれだしな。おねだりなさい。お前のさっきの愛してる、とっても嬉しかったから、それだけで膣内射精の権利は充分だ」


「はぁ、い……あなたが、ほしいの……っ」


 ぐぐっ。なんでか、そこでますたぁ、めちゃくちゃ反応してくれたの。な、なんでだろ。はぁっ。


「ナカに出し、てえ? あん、あなたを、ください。あなたの、あん、赤ちゃん、あっ、ん、産みます、から……」


「パティ!」


「あなたっ、はげ、し、あっ、ひゃんっ」


 ごんごんごんごん、ますたぁが激しくぶつけにくる。私は脚が外れるほど激しいえっちにがくがくして、でもうれしくってたまらなくって、好きを何度も連呼していったの。


「行くぞパティ! 
膣内射精(なかだし)だ!」


「はい! ああっ
 ああ、ん えへへ はぁ、あなた あなた、あなた、あなた……っ えへ


 どっくんどっくん、お腹をいっぱいにしてもらう。ますたぁの量ったらすごくって、すぐ溢れちゃうの。ああ、でもいっぱい、いっぱいいっぱい、出してもらっちゃったぁ。しあわせ……


 ずる、とますたぁが抜けると、びくんびくんと、体が動いているのがわかる。けいれんじゃあないと思うけど、余韻で全身が脈打ってた。はぁ。うれしかったし、気持ちよかったぁ。えへへ。ますたぁいっぱい、あん、こぼれてる。


 そこを詩音さんと花雪さんが舐めとってくれ、私に口移ししてくれる。私はうれしくそれを受け取り、ごっくんと飲み干すの。


「ん、へへ
」「うふふ」


 二人ともにっこりだ。はぁ。大変だったぁ。


「じゃあ、パティは小休止だね、また二人が終わったら犯してやるよ」


「ひゃいますたぁ、はぁ、はぁ」


「じゃ、まずは一回目と、先にこっちも書いておこう」


 ますたぁがペンを取り出し、右の太ももに『本日の射精回数』って書いてくれた。正の字も一画だけ書いてもらい、ますたぁにえっちした証拠だよって教えてくれる。そのまま、ますたぁは左の太ももになにか書いてくれた。えっと……


憲邇(けんじ)専用』、だ。矢印が私のあそこに向いてる。はぁ。そっか。わ、私のあそこ、ますたぁ専用だって、意味だ。


 ぞくって、しちゃう。


「まあ、いやらしい。ふふ、そんなの書かなくとも、私どもはみな深町さまのものですわ」


「ああ、わかっているよ。でもこう、体に落書きがあると興奮するだろう?」


「しませんわ、もう。ねぇ詩音さん」


「う、うん。でもちょっぴり、どきどきするよね」


「うふふ、そうですわね。では、深町さま、私とも愛のある営みを、してくださいませんか」


「ゎ、わたしとも」


 二人こくんって頷き合って、するって、エプロンとスカートをめくって、誘惑してた。ますたぁはあそこを見て、またぐっきりさん。


「へぇ、二人ともあなたって言いたいみたいだね」


「はい深町さま。あなたとあなたの妻であるよう振る舞えるのは、とてもうれしいですわ」


「わたしもです」


「いいよ、二人とも今だけあなたって呼ぼうか。さて、どっちの妻がいいかな、ちょっと二人でキスしてくれよ」


 ちゅっ。花雪さんと詩音さんがキスをする。女の子同士のキス、なんだか綺麗。


「いいね、ふふ。よし、じゃあ花雪からにしよう。おいで」


 マスターがベッドに座って花雪さんを招く。その膝の上にぎっ、と座った花雪さんはにっこりしながら、すっと目をつむった。


 ちゅっ。キス魔のマスターなの。うふふ。


 花雪さんもマスター大好きなので、そのままキスしながらあいぶされていくとすぐぬれたみたい。すぐにそうにゅうしてもらって、うっとりと顔をゆがめてた。


「あっ、んっ、深町さまっ」


「おや、あなたって呼んでくれないのかい」


「ああすみません、慣れなくって。ん、あなた、好き、好きです、あなた……」


 ゆっさゆっさ、動いていく。最後の詩音さんはマスターの指示か、座ったマスターの前にエプロンをめくったまま立って、あそこを見せていた。時折胸までぺろんとめくって、おっぱいも見せて、目でマスターを楽しませているみたい。


「あなた……あなた、あなた……うふっ、んっ、はぁ」


「そんなに呼べて嬉しいのかい? またこんな締めつけて」


「はい。あなたさまの妻ですわ。至福ですの」


「変なやつだ」ちゅっ。うふふ。


 そうしてゆっさゆっさ、旦那さまは奥さんをいじめたの。ぐっきりとした硬いので突き上げ、膨らみかけの胸を舌でなぞっていく。そのたび花雪さんはあえぎ声を上げ、でもうっとりとしながらマスターを見つめまたキスをねだっていた。ちゅっと、すぐにキスをあげるキス魔さん。うふふ。ねっとりと舌を絡め、唾液で橋を作っていく。


「ああ、あなた、愛していますわ……」


「私もだよ、愛している、かわいい花雪」


「ああ、うれしいお言葉、うふふ……あっ、んっ」


 ずっちゅ、ずっちゅ。ゆったりとだけど確実にマスターは花雪さんをいじめ、彼女の息を荒くしていく。涙ぐみながら愛をささやく花雪さんに、マスターも「いいよ、綺麗だよ」と返していった。


「気持ちいいかい、お前」


「はいあなた。気持ちよく感じますの」


「もっと突いてほしいならそう言いなさい」


「ああいじわる……んっ、はぁ、はい、もっと突いて、私を、いじめてくださいな……あんっ!」


 マスターが強くなった。ちょっぴり激しく花雪さんを突き上げ、ほらどうだいとでも言いそうな顔で花雪さんをいじめていく。


 その、強い顔。うっとりしちゃうな。カッコいいよ、ますたぁ。


「あっ、はっ、あ、あなたっ、ゆる、あっ、つよ、はげし、あうっ」


「お前が私を締めつけて困らせるから悪いんだっ」


「そんなっ、あっ、あなたっ、あなたっ!」


 そのままぐっと身を引き締めたマスターが花雪さんをいじめていく。ずんずん突き上げ、がっしり抱きしめ、離さない。ベッドはぎしぎし、その強さを悲鳴で教えてくれる。だんだん花雪さんの息が切れてきて、そろそろ大変そうだった。


「あっ、あなたっ、もうゆる、許して」


「そうだね、そろそろ終わりにしようか。おねだりしなさい、かわいい私の嫁さん?」


「はい……っ、はぁ、あなたが、ほしいの」


 またぐぐって、マスターが強くなったのがわかる。ああその言葉、弱いんだ。覚えたぞ、うふふ。


「なかに出して、ください。あなたの赤ちゃん、産みたいの」


「花雪のバカ! かわいいぞちくしょう! わかった、生膣内射精してやるっ!」


「ああっ、あなたっ、あなたっ」


 二人は最高潮を迎え、やがて……


「ほら花雪っ、膣内射精だっ」


「っ
 はぁ、はぁ はぁ、大変で、はぁっ…… あなた あなたが、いっぱい……っ


 ナカダシされちゃった。花雪さんもがっしりマスターにしがみついて、どくどくを受けていった。うわぁ、二人とも気持ちよさそう。私もあんな顔してたのかなぁ。


 やがて射精が終わると、花雪さんはずるりとベッドに倒れこんじゃった。大変だったみたい。と、詩音さんがすぐ溢れた花雪さんのあそこに口を寄せ、さっきの私と同じように白いのをすくいとり、花雪さんに口移しで分け与えていってた。


「ん、ふふ
」「ふぁ、ん、ふふ」


 そのあとすぐにマスターを綺麗にしてあげる詩音さん。ぺろぺろ、うれしそうに舐めてた。


 またすぐ、ぐぐってなるマスター。立ったままの詩音さんの背後に回り、ベッドに手をついた彼女に、後ろから襲いかかっていった。


「お前にも同じように精液を届けてやるよ。嬉しいだろう?」


「はぃ、あなた」


「いい声だ」


「ぁ、ん」


 顔を振り向かせてまたキス魔のマスター、いっぱいキスしながら、詩音さんのパイパンを指でいじっていってた。詩音さんもマスター大好き、すぐにぬれちゃうの。


「ほうら、挿れてくださいを言え」


「はぃ、あなた。あなたが大好きなの。入れてくださいませ」


 ずっぷん。マスターが後ろから詩音さんとつながり、一つになる。


「あぅ、かたぁい。あなた、今日、強いわ、激しいわ」


 あれ、詩音さん、あなたとか、言い慣れてそう。うふふ。マスターと奥さんプレイとか、いっぱいしてるのかな。


「お前たちがかわいいからさ。いいだろう? 嬉しいくせに」


「はぃ、うれしいです。ぁん、あなた、あなた、えへ、あなた……っ」


 またずっぷんずっぷん、マスターが詩音さんをいじめる。私より小さい彼女もしっかりとマスターを受け止め、小さくあえいでいってた。


「うぅん、どうしようかな。次の私の休みとみんなの休みの、土曜……はいろいろとあるし、来月かな。ふふ。妻であるお前の裸エプロン、やっぱりいいね。今度みんなにやらせないと」


「えっちぃ。うふ、わたしはいいわ、やります。ずっとずっとでも、やりますからね、あ、あなたっ」


 うわぁ、うれしそう。ずっと裸エプロンとか、恥ずかしすぎるのになぁ。うふふ。私もやるけどねっ。


 ずぶんっ。そこでマスターは一回思いっきり詩音さんを突いて、顔を歪めさせてた。


「良妻だね、まったく詩音は。そうだお前はハートのついたエプロン買ってそれにしてくれよ、愛らしい」


「はぃあなた。うふふ。うれしいな、あ、うれしいわ」


「ようし決まりだ。気持ちいいぞ、お前」


「ぁん、気持ちいいわ、あ、あなたっ」


 ずちゅずちゅ、ぱんぱんってお尻にぶつかって、二人は動いていく。マスターばっかり見ちゃうけどその、筋肉が、はぁ、すごく動いて、締まってて、綺麗でずっとずっと見ちゃうの。カッコいいなぁ。詩音さんも美しく乱れて、マスターがカッコいい、大好きってずっとずっと言ってる。


 マスターはちょびっとおかしいのか、詩音さんの長い髪を食べるように口に当て、楽しそうだった。変なの。「おいしいよ、詩音の体」って、髪も入ってるのかなぁ。


「ゎ、わたしも、っ、ん、あなたの、体、おいしい、わっ」


「ありがとう。ふふ。お前もお前で締めつけて、気持ちよさそうだな?」


「ええ。気持ちいいわ、ぁ、ん、はっ、はっ」


 だんだんマスターの動くのが早くなっていく。楽しげに詩音さんを突いて、あえぐ声が足りないと、もっと気持ちいいって言っていいんだよってあまあまでささやいてる。でも詩音さん私たちに聞こえて恥ずかしいって顔で、小さくあえいでた。


 それでも。長い髪が乱れるのと同じように、詩音さんも乱れていっていた。小さな顔の小さな眉を歪めて、色っぽい声を我慢して出し、全身を揺らしていく。お尻に体をぶつけられるたび、綺麗な声でお返事するんだ。裸エプロン姿の、良妻なの。


 そのまま動きが早くなっていくマスターに、そろそろと詩音さんも限界だって顔で、へとへとに懇願していった。


「ぁ、あなた、あの、んっ……はっ、はぁーっ……も、もうげんか、い……っ、はーっ」


「ならおねだりだね。ほら、言わないといつまでもいじめてやるよ?」


「ぁん、あなたったら……あなたが、ほしいの」


 ふふ、私たち三人、知っちゃったもんね。今度みんなにも言ったげよ。


 ほら、マスター、またぐぐぐってなってる。体が、背中がなってるもん。うふふ。


「ぁ、かたぁい、はぁ、はーっ……ナカにちょうだい、あなたの、熱いの、白いの、いっぱい注いで、くださいっ」


「孕みたいの、はい」


「はらみたいのぉっ、はぁーっ、あなたが大好きなのっ、大好き、大好きっ!」


「ああもう、詩音っ!」


 ぱんぱんぐちゅぐちゅ、もうすごい。猛り狂う獣みたい。マスターが思いっきり突くとああなんだ。と、どきどきがこっちまで伝わる。ああしてもらえて詩音さんとってもうれしそう、しあわせそう。わ、私もああだったのかな。どきどき。


射精()すぞっ、詩音っ」


「はいっ! あ、んっ
 はぁーっ、うふ、はーっ あなた あなた……っ


 また詩音さんに射精するマスター。もう何回目なんだろ。何回目で、あ、あんな、多いんだろ……こぽこぽ、詩音さんちっちゃいからすぐ溢れて、太ももを伝ってる。やらしい……


 まだ少し疲れてるけど、のそのそ、そっちへ向かって、こぼれ落ちる白いのを舐めてった。あれ、まだ抜かないんだ。


「あなた……愛して、います」


「私も愛しているよ、お前」


 ああ、心があえいじゃう。詩音さんはとってもうれしそうににこって笑顔になって、でも疲れたのかどさってベッドに倒れこんじゃった。びっくんびっくん、体が振動してて、さっきまでの私みたい。


 その、溢れ出る精液を。舐めとっていき、詩音さんに口移しする。はぁはぁと息の荒い彼女だったけど、それだけはちゃんとこくんと飲み干し、うれしそう。


「ん、ふふ」「ふふふ」


「さてパティ、もう一回だよ。寝転がって脚を開け、そうして、あそこも広げてご覧?」


「はいますたぁ」


「おいおい、あなたと呼びなさい、でないと挿入する権利をやらないぞ」


「ひゃい、あなた」えへへ。


 私はごろんと仰向けにベッドに転がり、脚を広げてマスターが入りやすいようにして、そこからあそこを、広げる?


「あ、あの、あなた、あそこを広げるって」


「あれ、わからない? そっか、こうするんだよ」


 ぐい、って。左右に線を開かれちゃう。わぁ、やらしい、丸見え、こ、こうなってるんだ、ピンク……な、なんだかかあってなっちゃうな。ああまた、白いのこぼれてっちゃう。もったいない、えいしょっと指ですくって、食べちゃうの。


「そんなに精子がほしいのか?」


 くいって、あごを持ち上げられちゃう。見つめられるとちょっと照れちゃって、でもうなずくの。


「あ、あなたの白いの、いっぱい、ほしいの」


「ま○こに?」


 こくん。「言えよ」はぁっ。どきどき。


「お、おま○こに、あなたの白いの、いっぱいほしいの」


「やらしい女だ、ふふ。そういうときは広げながら言うと効果的だぞ」


「はい」


 くち、って、音がする。私は自分で自分のあそこを広げ、さっき注いでもらった白いのをこぼしながら、もう一度言うの。


「このおま○こに、あなたの白い、精子がほしいの。いっぱい、ほしいの」


「いいぞ、よく言えたな」ぐぐぐっ。はぁ、はぁ。おっきいよ。


「お前はかわいい、私の妻だよ」


 ちゅっ。うふふ。うれしすぎるキスだ。


 ずぷう。それからすぐにそうにゅうしてもらう。実はへとへとからそんなに回復してない体はすぐに息を荒くしてしまってた。


「はぁ、はぁ、あなた……」


 脚が動かない。またますたぁをしっかりつかんでたいのに、よじよじ上がりそうで、上がらない。


「まだお前はそんなにできるほどじゃあないな。安心しろ、お前がかわいいから、すぐに射精してやるよ」


「あっ、はっ、ふうっ……で、でも、あなたにもっと、私を使ってほしい、わ」


「かわいいこと言うな、まったくお前は」


 ずぷんっ。はぁ、はぁっ。つ、強いよ。すぐ、限界、きちゃう。


「あなた、大好き、大好きなの……っ、はーっ、はーっ」


「ああ、私もお前が大好きだよ……」さわ、となでてもらう。うれしい。うれしいけど、息が戻らない。ますたぁも硬いしおっきいいしで、大変で大変で、はぁ、はぁ。


 ますたぁはやさしいから、そんな私にゆっくり合わせてくれてた。呼吸のリズムと、ずんずんやるリズムを合わせてくれる。なんとか楽にお相手ができてるけど、ますたぁは満足かなぁ。あ、目を開けるとこれも楽しいよって顔、してくれてる。うれしいな。よかったな。はぁ、はぁ……


「お前をゆったり楽しむのもいい。お前の感触がはっきりわかって、気持ちいいよ」ちゅっ。


「はぁ、はぁ、うれしい……私も気持ち、いい……」


 ほんとは疲れがいっぱいで、気持ちいいは少しだけど、でも、いいのはいいの。ますたぁに犯される喜びがいっぱいなの。えへへ。


 そうしてゆっくり動いていくけれど、ますたぁのおっきいのは徐々に徐々に、硬く大きくなっていき、終わりを迎えようとしてくれてる。こんなにしてくれた、こんなゆっくりでもって、思うとうれしくてたまらない。やさしい責めに私はうっとりして、涙を流しながら、精一杯声を出していった。


「あなた、好き、あなた、好き……あん、あなた、好き……」


「パティ、パティ……ああ、愛しいよ、お前が……」


 キスがいっぱい降ってくる。私はだんだん、あそこがいっぱいで頭がぼうっとしてきて、つぶやくように好きだけを連呼していった。


「はぁ、はぁ……好き、好き……あなた……あなた、好き……」


 ますたぁが動くのを感じる。それだけを感じる。あまあまな声も聞こえる。あそこが動いてる。かたぁい。おっきくて、私はずぶぬれで、ぐちゅぐちゅだ。


 頭がぼうっとする。ああ、目を開けるとますたがぁいる。うれしいなぁ。えへへ。


「パティ、射精すよ」


 やさしい声、やさしく、生ナカダシ。どくどくって注がれちゃうの。一番奥で、子供作っちゃうの。熱い、なぁ。えへへ。


 長い長い射精が終わると、ゆっくりますたぁが抜けていく。ちゅっとキスをして、よしよしとなでてもらっちゃった。


「ごめん、ちょっと長かったね」


 ぶんぶん、首を振ろうとしてうまくいかない。体が、ただびくびくんって動くばっかりで、思うように動けなかった。


「でも、気持ちよかったよ、お前」


 それがとってもうれしいの。うふふ。それからますたぁは正の字をもう一画、書いてくれた。えっちした証拠だ。


 あ、詩音さんと花雪さんが多すぎるますたぁの白いのをお口でまた運んでくれた。私はそれを受け取って、それを飲むのはちゃんとできたの。おいし。


「うふ、はぁ
」「うふふ」「ふふ」


「パティに二回は、休ませても大変か。もうちょっと優しくしないとね」


「まあ、深町さまはとびきり優しかったですわ。パティさんも優しかったからこそ、気絶せず二回目を終えられたのですわ」


 ああそっかぁ。そうだよね、ますたぁ激しいから、私たち子供はすぐ気絶したり、失神したりするよねぇ。はぁ。大変だ。


 やさしいから、二回できたの。それは間違いないな。


「はぃ、そうです憲先生。ゎ、わたし、二回経験ありますから、わかります」


「ありがとう、そう言ってくれて。でもパティにはもっと優しくしないとだね。ああ、相手してくれてありがとう、みんな」


 ちゅっ。キスをみんなにいっぱい、うれしいの。


 それからいちゃいちゃしてくれるますたぁ。大好き。私の隣に寝ころんでくれて、私にいっぱいよしよしなでなで、うれしかったぁ。花雪さんと二人でますたぁはさんで、ちょっぴり詩音さんに申しわけないけど。でもますたぁが中心でみんなにっこにこなの。


「かわいかったよ、お前たち。あなたと呼んでくれてとても嬉しかった」


「うれしいでう、ますたぁ。えへへ」


「はい、ありがとうございますわ、深町さま」


「おいおい、まだ続けてくれよ」


「ひゃいあなた。大好き」「うふふ。ええあなた。大好きですわ」「あなたが大好きなの」


「ああ、私もお前たちが大好きだ!」


 ぎゅうう、きつく抱きしめられて、ますますますたぁが大好きになってくの。


 そうやって眠っていく、しあわせな時間だった。


「パティ、そろそろ妊娠報告が聞きたいから、よろしくね」


 そう、耳に残しながら。
















 石の床に白い精液が流れていく。私はもったいないそれらを、舌を這わせて舐めとっていった。


 だってそう、ご主人様が言ったもの。憲邇様が言ったの。私に生ナカダシして溢れたのが床にこぼれたなら、奴隷はちゃんと全部舐めとらないとダメだよって、あのあまあまな声で言ってくれたの。私はただ、それをこなしてるだけなの。


 うふふ。でもこの格好、犯したいって思ってくれて嬉しいな。私で処理してくれて幸せ。ちょっと恥ずかしい、高校生の制服、ブレザー。私の通ってたところもブレザーだったけど、もう二年も前なんだよねぇ。ちょびっと感慨深いな。


 ぺろぺろと、床を舐めながら思う。やっぱり扉の鍵が開く音がするから、そのうちに準備だよね。心の準備もだけど、憲邇様が現れたらすぐ一回転して、スカートひらりしてよかったな。今回はそのまま押し倒されたけど、次は自分でスカートめくりまでやりたいな。そのあと四つんばいか、仰向けで脚を開こうっと。使ってもらうんだ、都合のいいときに。


 苦い精液の味が、冷たい床の石の味とざりっとした感触で混ざり、私はぞくぞくとした快楽を感じつつあった。憲邇様の愛のない乱暴なセックスでさえ、感じる淫売だもの。


 太ももを伝う白い液体を掬い取り、綺麗になったところでバケツの水で体を洗っておく。


 次はなに着ようかな。チアにしようかな。ナースは見慣れてるよね。巫女さんかなぁ。うぅんそれより、透け透けの下着か水着か、どうしよう。


 どうしたら憲邇様に喜んでもらえるか。監禁生活の中、私はそれだけを考えて、衣装を選んでいった。
















「十万、はい十二、十五万でました!」


 競売を取り仕切る人が大声で言っている。今の絵がいくらになるか、どんどん額が上がっていく。


 わたしの絵もああして売られたんだ。こうやって間近で見るとすごい熱気を感じる。


 今日は九月の二回目の日曜日。
早川(はやかわ)さんご夫妻に連れられて、競売の現場にやってきちゃった。ちょっぴり楽しみだったから、来てよかったって思うな。


 さっき競売にかけられた絵が、二十二万円で落札された。お花屋さんのお値段とは別も別で、なんだか違う世界に迷いこんできちゃったみたい。


 次の絵がみんなの前に披露される。ばさっと幕が取り払われ、出てきた素敵な絵に、壇に座る参加者の何人かがおおと目を見張る。競売の指揮者のような人が絵のタイトルと作者の名前を言い、最初の額を言う。そこから競売がまたスタートしていった。


「どうかな、こういう世界は」


 隣の早川の奥さん、
百恵(ももえ)さんが言う。わたしは何度かうなずくように首を動かし、ただ「すごいです」としか言えなかった。


「競売にもいろいろあって、こことは違う空気のところだってあるんだ、品がもっと高級なところとかは、参加にもいろいろ必要で、また別世界らしい。ここはこういう、熱気むんむん、一般の人が集まるところなんだ」


「そうなんですか」


 舞台脇、競売には参加せずにただ見学しているだけだけれど、その参加者のみんなの熱気はこちらまで充分伝わってくる。はぁ。すごいな。


「ああして値がどんどん上がっていくのか。いや、すごい世界だよまったく。前は見れなかったしなぁ」


 早川の旦那さん、
(いさお)さんが言う。しきりにわたしみたくうなずいてて、面白そうに場をながめていってた。


 場に出ていく絵はどれも作者の感情が色濃く出ていて、わたしは勉強になることも多い。みんなさすが強い思いで絵を描いているんだなって、思わずにはいられない。わたしも負けないようがんばらなくっちゃ。


 でも……希望や、幸せの感情が強く出る作品はあんまりなかった。暗いものが多く、ほかの作者さんはなんていうか、その、閉じこもってるような、変な感じがする。あんまり好きじゃあ、ないな、この感じ。


 わたしはわたしの描きたいものを、好きなものを描こう。ほかの人たちのような暗いものも、描きたいと思えば描こう。でも今は、光っているものがいい。世の中は素敵で、世界は輝いているんだから。そう、憲先生に教えてもらったもの。


「お、次が詩音さんのだぞ」


 百恵さんがわくわくを隠せない感じで言ってくれる。わたしもなんだかどきどきしてきて、値がつかなかったらどうしようと心配になる。前は前、今は今だもの。ハンバーグ、いいと思ってくれますように。


『その値段が、いいと思ってくれた人の気持ちみたいなもんなのさ』って、百恵さんが前に言ってくれた。値段がつけばつくだけ、それがわたしの絵への、評価の代わりなんだって。


 おいしいハンバーグの絵が、ばさっとみんなの前に現れる。……おお、とも、わぁっ、とも、ならない場。少し不安になる。


 と思ったら、みんなに笑みが次々出てきて、会場のみんなが笑顔になっていってくれてた。指揮者の人も笑顔でにっこり、「さあ
水村(みずむら)詩音の作品、『ハンバーグの時間』です。まずは五万から!」って言ってくれた。な、なんだかうれしいな。みんな笑ってくれてる。それがいいよ、一番だよ。はぁ。よかった。


「五十万!」


 あ、あれ、
(はやし)さんだ。またわたしの、買ってくれるんだ。うれしいな。


「七十、はい八十、百! 百万、これ以上ないか、はい百二十!」


 う、うわぁ……ど、どうしよ。こんなになるんだ。うわぁ……


 で、でも、うれしいな。ほしいと思う、気持ちだもんね。そうだ、お母さんも言ってた、わたしへの評価なんだって。す、素直に喜んどこ。


 うれしい。


 結局、わたしの絵は今度は二百十万円で落札されちゃった。わたしには身に余る大金、どうしよう。


 でも。それだけお金を出してでもほしいってこと、だよね、お母さん。ちゃんと受け取らなくっちゃ。


 今度落札したのは林さんじゃあなかったけれど、誰であってもうれしいな。ご挨拶とか、したらいけないかな。


「いやぁ、嬉しいな。ふっふっふ、盛り上がった盛り上がった」百恵さんがにっこりしてた。


「お前、前もわがことのように喜んでたもんな」そう言う勲さんもにこにこしてた。


「んだよ、お前だって嬉しいだろ」


「ああ。俺もわがことのように嬉しい」


「あ、ありがとうございます」


「いやいや、あれが正当な評価ってやつさ。それが値段、競売はそういうもんさ」


「はぁ。ぁ、あのあの、落札してくれた人に、その、ご挨拶したいなって」


「ああ、いいよ。最近は競売に制作者本人が来るのは珍しくないしね。おーいそこの人、あなただあなた」


 百恵さんが誰かとお話をしにいった。わいわい、競売はそこでおしまいみたいで、みんながなにか話していってた(ちょびっと興奮してる人が多いかな)。


「やぁ水村さん、いらしてたんですか」


 あ、林さんだ。にっこりしてる。


「はい。今日もお腹ぽっこりですね、ふふ」


「いやぁ、ダイエットは難しいですよ、わっはっは。ああそれにしても今日は悔しい、あなたの作品を落札できなくてね、いやぁ予算はあったつもりだったんですが、その上をいかれましたよ、なかなか競売は厳しい、この前も」


「はいはいその辺でストーップ。お前さん、噺家でもやってたほうがいいんじゃあないか」


 勲さんが止めてくれてた。わたしはこんないっぱい、たくさん話せる人はすごいなと思う。


「はっはっは、よく言われます。いやぁそれにしても今回は残念でした。代わりにうまいハンバーグでも食べて帰ろうかと思いますよ、ええ」


「ああ、俺も今晩はハンバーグにしようと思ってたところです」


「あれを見ると食べたくなること請け合いですからな、仕方ありませんな」


「まったくです」


 二人ともわたしを見るの。変なの。


「おーい詩音さん、向こうさんもいいってよー」


 百恵さんが戻ってきた。あ、林さん見てにやにや、変な笑顔。


「お前、ダメだったな今回は。残念でした。まあ前回のがとれたんだ、一勝一敗、次で勝ち越せばいいだろ」


「はは、そうですな。では私はこれで、おっと、次はいつ頃出品なさるつもりですかな」


「今月の第四はうちも無理だ、来月の第二ならいける。お前はどうだ?」


「はい、それなら今から充分予定は合わせられます。ではそのとおりに。水村さん、次も楽しみにしていますよ」


「はぃ。あ、今度そちらさんの、夫婦ともども描いてみたいので、お時間ある日、あとでいいのでご連絡してくれますか」


「おお、そうでしたな。はっは、いやぁこれは嬉しい。今はちょっとわからないので、ではお言葉どおりあとでご連絡しますよ。いやぁ楽しみにしておきます」


「よろしくお願いします」


「ではでは。ああ悔しい、二人前は食おう」


「また太るぞ、まったく」


 去りゆく背中に苦笑いの百恵さん。


「さて、んじゃあ呼んでくるよ、ちょっと待ってな」


「はい」


 たたたっと百恵さんが走っていった。すぐに人を連れて戻ってくる。隣にいる人は四十代くらいの男性で、わたしがハンバーグの絵を描いたのだと知るとびっくりしてた。


「初めまして、
久永(ひさなが)です。まさかこんなにお若いとは」


「は、はじめまして。こ、このたびは落札ありがとうございました」


「いえいえ、こちらもいいものをもらいましたよ。あれは素晴らしい。早く帰って飾りたいです、店に」


「お店をやってらっしゃるんですか?」


 わたしが聞くと、久永さんはうんとうなずいてくれた。


「ええ、小さなレストランを。ちょうど飾るものがほしかったので、いや、本当いいものをもらえましたよ。噂どおりでした」


「う、噂?」わたしが不思議がっていると、百恵さんと久永さんが二人で説明してくれた。


「前も言ったけど、無名の新人で百五十万なんて、とんでもない値段なんだ。でも、それだけいいものだった。だから、次詩音さんの作品が出るのがいつか、みんな噂してたんだ」


「そこで早川さんご夫妻がマネジメントしていると聞きましてね。今回出品なさるということで、参加させていただいたんです」


「あ、そうだったんですか」


「ええ。参加者もいつもと違い、気合も入りましたし、人数も多かったそうです。でもまさか作者の方がこんなにお若いとは」


「あ、す、すいません」


「いえいえ、謝ることではありませんよ。天才は総じて早熟ですから。今後も素敵な絵を描いてくださいね、陰ながら応援しています」


「ぁ、あり、ありがとうございます」


「いえいえ。本日はご挨拶までしてくれ、ありがとうございました。すみませんがそろそろ時間なので、お暇させていただきます」


「はい。こちらこそ、お相手してくれてありがとうございました」


「いえ、ふふふ。何度でも言います、いいものをもらいました。これで店も華やぎます。本当に、ありがとう」


 うわぁ、じんとくるなぁ。うれしいよ。


 久永さんが行ってしまっても、わたしはまだどきどきしていた。はぁ、すごい世界。


「よし、いいもの見れたし、いい人にもらってかれたみたいだし。今夜は飲もう! もちろんおごるぜ」


「飲もうってお前、詩音さんは未成年だぞ」


「あ、そうだな。じゃあぱぁーっと焼肉でも行こうぜ! ああよかった、ふふ」


「ゎ、わたしの分は払います」


 あと、憲先生、っていうかおうちに連絡しとかなきゃ。


「いやいや、詩音さんはいいんだよ。おごらせてくれ、私の楽しみだ」


「で、でも」


「いいからいいから、はっはっは」


 百恵さんは半ば強引にわたしに焼肉をごちそうしてくれた。こっちも払うっていくら言っても、いいからいいからで通されちゃった。あとでこっそり旦那さんが、「おごらせてくれよ、家内の楽しみでもあるんだ、わがままに付き合ってくれないか」って、言うからしょうがなくおごってもらったけど。こ、今度、いつもお世話になってるから、わたしからお礼、しなくっちゃ。


 ごちそうしてもらった焼肉は、とってもおいしかった。バーベキューで食べるようなお肉ばっかりで、いつもよりたくさん食べられちゃった。おいしかったですって、早川さんご夫妻に言うと向こうも笑ってくれるの。うれしかったなぁ。


 うれしかったの。わたしの絵が、評価してもらえて。今後もお世話に、な、なっちゃお。


 とってもしあわせで、楽しい一日だった。
















「そうそう、いい調子です。筋がいいですね」


 と、メイド長? 
良子(りょうこ)さんに言ってもらう。あたしは料理なんて久々、ひどい有様になると思っていたけれど、良子さんと(ともえ)さん二人に、本日の当番だと春花(はるか)さんのフォローを受け、どうにかまともなものができあがっていってた。


 花嫁修業、しておけばよかった。
上岡(かみおか)可奈(かな)は後悔してる。どうせ男の人なんて一生、そう一生好きになることない、なんて思ってたから。


 あの人にお料理をごちそう、したい。あたしと同じくらい、食べることが幸せだって、思ってほしい。そう、思わせたい。願っての夕飯のお手伝いは、難航を極めちゃった。練習しよ。


「それにしても、いつもこんなにたくさん作ってるんですか?」


 目の前には優に二十人前はありそうなほど、大量の食事が作られていた。


「ええ。いくらあってもご主人様が一人で平らげてしまうので必然的に多くなってしまうのですよ。今日は
(いずみ)さん宅でなく、こちらでお召し上がりとのことでしたからね」


「ふぅん……大食漢なのにあんな細いんだ」


 そういえば、この前も何人前も食べちゃうって言ってたな。そんなに食べるんだ。でも、太らない。


「痩せの大食いってやつですね」


「なるほど」


「早朝のジョギングから帰ってきたときに食べるものがないと困るくらい、よく食べるのですよ」


「ジョギングもしてるんですか。へぇ」


「なのでメイド二人も朝食とその前の準備に連日大変なのです。ふっふっふ」


 どうしてそこで自慢げなのかはよくわからなかったけど、ふぅん。じゃあ、細くっても納得しちゃうな。


「そのとき、叱らないんですよね、憲邇先生、その、ご主人様」


 ぼそりと巴さんが調理を続けながら言う。あたしも最後の仕上げを手伝いつつ聞いた。


「叱らないって?」


「メイドは主の言うことを聞くものでしょ? それなのにさ、ジョギングから帰ってきたら一口甘いものと、軽くなにかって仰せつかってるんですけど、あたしが当番で最初、忘れちゃって。なのに、叱らないんですよ、よくないと思います」


 叱られたい、っていうわけじゃあなくって、もっとプロ意識を持ってる人に相応の扱いをしてほしい、ってことなのかな。ダメなときはダメと言わないといけないって、意味なのかも。


「ふっふっふ、先輩として助言してあげましょう、巴さん。ご主人様は、言わずともそこまで悟りなさいと、叱らずともできるようになりなさいとのご深慮なのですよ、きっと」


「そうかなぁ。そこは憲邇先生の甘さだと思うなぁ」


「まあ、深町様も最初のうちだけはお目こぼしして下さっているだけではありませんこと?」


 春花さんが言うと、ああって、巴さんも納得してた。


「そうかも。最近はちゃんとできちゃってるしね、厳しいメイド長のおかげで」


「ふっふっふ、当然です! それに、巴さんには元々素養がありましたもの、よいメイドになりますわ」


「ありがとう。さて、できあがり、っと」


 二十人前からが完成する。こうしてみるとすごい量だ。


「そろそろご主人様も帰ってくる頃合いでしょう」


 と、そこで外から車の音が聞こえてきた(暑いので窓を開けっぱなし)。すぐに慌ててぱたぱたとみんなが玄関に向かう。


 あたしもその中に、混じって。玄関にやってくるの。


 がらがらと扉を開けて入ってくる、大好きな人にお帰りなさいを、言うの。


 幸せ、かも。


「おかえりなさいませ、ご主人様」まだなってないけど。


「ただいま」


 すぐに巴さんが鞄を受け取り、良子さんが上着を受け取る。ほんと、ご主人様だ。


「ああみんなの下着が見たいな、ちょっとめくって」


「はいご主人様」


 ……え、えっ。みんなが躊躇なく、ただし頬を染めつつゆっくりとスカートをめくっていく。あ、あたしはそそくさと、別室に逃げちゃった。


「あれ、今の……ああ、上岡さんか。ごめんごめん、じゃあいいよ、みんな下ろして」


 そそと、みんなが下ろしていく。あたしはそれを確認して、玄関に戻って深町先生に頭を下げた。


「ご、ごめんなさい、いつもなら」


「いやいや、こっちがおかしいんだよ。お客さんがいるならおかしなことはできないさ」


「……」


 スカートの裾をぐっと、つまんだ。あたしははしたない女だ。いいですよと、その意味でスカートをめくろうとしている。でも眉が困り、変な顔になり、スカートめくりを自分でしようとして、できない。ふわふわ、今日のプリーツが持ち上げられない。


 恥ずか、しいの。


「やめなさい。そんなことをしたから仲間入りさせてやるほど安いものじゃあないよ」


「……はい」ちょびっと泣きそうになる。あたしはダメな女だ。


「えーそーお? 憲邇さん仲間入りのとき、みんなの前でスカートぺろんってできなきゃダメだよって言ってたじゃん」まゆちゃんが言う。


「それはそうさ、最低条件だからね。でも、それだけじゃあないんだ」


「ふぅん。そっか、憲邇さんまだ可奈さんを彼女さんにしたいって思ってないんだ」


「ああ、そうなんだ」


 はっきり聞くとがっくりくるなぁ。はぁ。


「そっかぁ。あたしたちもいろいろあったしねぇ。お母さんなんて大変だったもんね」


「ええ、それはもう。可奈さん、頑張ってね、応援してるわ」


 望むところと言ってたの、そういう意味だったんですか? 絵里さんもひどい人ですね。


「さて、ご飯にしよう。ああお腹減った」


 ぞろぞろ、道を開けて(なにしろこの人数)、深町先生を奥へ通す。あたしがちょっと変に思っていると、みんな、彼が数歩歩いてからそのあとをついていってた。


 そっか。貞淑に三歩後ろを歩きたいんだ、みんな。まゆちゃん、
奈々穂(ななほ)ちゃんまで。すごい。


 でも、確かに。こうして後ろから見る、大好きな人の背中はとても広かった。触りたい、触れ合いたい、と、強く願うほど。


 この人の背中に寄り添いながら眠ったら、きっと安息の眠りになる。なにも心配事なんてなくなる、そう、確信に近いものがあった。


 それくらい、好きだ。ああ、うん。好き。


 そうだ、よ。この人が囲いたいって、思うくらい、いい女にならなくっちゃ。自分を磨くの。


 自分からほっしても、普通の告白じゃあダメ(したも同然だし)。普通の感覚じゃあ、いけない。そもそも恋なんてしたことないけど、だ、大体どんなものかくらい、わかるもの。


 自分を磨くの。そう、磨きたいと思えるほどの人だもの。待つわ。いくらでも。いつか、いつかあたし、あなたを振り向かせるの。ううんいつかじゃない、すぐにでも。


 いい女に、なるの。


 やっぱり卒業したらこの家にメイドというか、家政婦で仕事につきたいな。これくらい大勢いるなら、もう一人くらいいたほうがいいと思うし。今のうちから花嫁修業して、それでメイドの仕事もうまくやるの。大学よりそっちのほうが、あたしの後悔は少ないと思う。


 みんなで食卓につく。今日は日曜日、みんな集まってた。総勢、十七人の深町先生の女と、そうでない女の子が今日は二人、それと深町先生。合計二十人だ。と、思ったけれど、あれ、一人足りない。えっと、多分愛さんだ。愛さんがいない。でもみんな普通にしてるし、単に今日はいないだけみたいね。


「いただきます」


 おいしいご飯に、感謝して。これし始めてからまた、ご飯の味が変わったなぁ。子供の頃の習慣って意外とバカにならないんだ。あたしが乱雑なだけだったとは、思うけど。


 このお家のご飯は、控え目に言ってもすごくすごくおいしい。そこに大好きな人と一緒に食べることと、みんなで一緒に食べることが混ざって、極上のご飯の味になっていた。すっごくおいしいの。食べてて本当、幸せ。


 で、でも、横で食べさせ合いっこしてる静香さんほどじゃあないな。あれ、すっごくいいなぁ。この前もたこ焼き、すっごくおいしくなったし、おいしそうだったし。はぁ。ああ、気がついたら深町先生ばっかり見つめてる。どうしよう。


「ね、ね、憲邇くん、今日のおべんと、どうだった?」


「お、やっぱり
紗絵子(さえこ)だったか。昔懐かしい味だったよ、すごくおいしかった」


「本当? うわぁ、お母さんすっごく嬉しいわ。頑張ったかい、あるわぁ。うふふ」


 紗絵子さんすっごくにこにこしてた。そっか。お弁当も作ってるんだ。すごいな、この人たちみんなお料理できるんだ。


「さえこお母さんね、ななほがね、せっかくてつだったげるって言ったのにね、ひとりでやらせてって言ったんだよ、ひどくなぁい?」


「まあなな、お母さんの楽しみを奪うこと言っておいてそれはないわ。いーい? お母さんが一人でやりたかったの」


「ええー、ななほのときはさえこお母さんてつだうじゃん」


「それはなな一人じゃあ、できないからよ。ななも一人でおべんと作れるようになったらわかるわ。それまで頑張りなさい」


「はぁい。ちぇっ」


「そういえばあなた、今日はなんでこっちに? 私たちは嬉しいけれど」


「それが私にもよくわからないんだ。今日は外で食ってくれってね。誰か来るみたいだったから、その人が関係あるのかな、泉」


「さあー。おばあちゃんの気まぐれじゃあないですかね。親戚が来るのは間違いないみたいだったんであたしもいいかなって。気を使ってもらっちゃったのかも」


「そうかもしれないねぇ。うぅん、なんでもなければいいんだけれど」


「元気元気、最近は元気続きでいーことですよ、せんせー」


「ああ、確かに元気だね。このまま快調に向ってくれると嬉しいなぁ」


「きっとなりますよ、せんせ。はい、あーん」


「うん、おいしい。静香も食べなさい、あーんばっかりしてないで、ほら」


「やです、せんせが食べてからです。はい、あーん」


「そんなにいっぱい、すぐには食べられないよ、まったく」


 いちゃいちゃだ。すごくすっごくいちゃいちゃだ。いいなぁ。あたしもご飯、すっごくおいしいけど、ああして深町先生に食べさせてもらったら、もっとおいしいだろうなぁ。


「ししし、憲邇さんばっかりみてら」


「なんだい、まゆ?」


 まゆちゃんの小さな言葉は、あたしにこそ聞こえたけど深町先生には届かなかったみたい。


「なんでもなーい。ね、今日可奈さんもお手伝いしたんでしょ? なに作ったの?」


「なにをっていうよりは、下ごしらえとか、簡単な作業を任せてもらっただけで」


「その辺はみんなで分担しましたからね。まあ、可奈さんにはいろいろお手伝いしてもらいました。強いていうなら全部ですね」


「そっかぁ。ね、ね、憲邇さん今日の、おいしい?」


 うう、こんなちっちゃい子にまでくっつけようってされてるなぁ。とほほ、かも。


「うん、おいしいよ。上岡さんもよかった、おいしいみたいで」


「は、はい、おいしいです」


「よかった。本当どうして旅館のときは気づかなかったんだろうなぁ。おいしそうに食べてるとこ、やっぱりいいよ、かわいい」


 だからどうしてそう、軽々となんでも言えちゃうんですかっ。しかも全然裏表のない、屈託のない顔でっ。もうっ。


 そう、なの。裏表のない、単純に思ったことを口に出しているだけ、だから。だからこんなにも、あたしの心に残り、響くの、ね。


 ああ、うれし。


「まあ深町さま、それはハムスターなどの小動物へのものと同じではなくて?」


「ええっ。全然違うよ、あのかわいさとかじゃあない、あれはかわいらしい、だ。上岡さんはかわいいんだよ」


 うわ、うわ、うわっ。ど、どうしよ、心臓ばくばくいってきた。そっちかもって思ってたのに、違うって、うわ、うわ。


「まあ、そう思って自分の女となさらないのは不思議ですわね」


「花雪、かわいいと思うだけでほしいってわけじゃあ、ないからね。女は愛嬌がいっぱいあるからね。まあ、かわいいと思うから好きっていうのも、男なら当然のことだけど」


「ふぅん、そうですか。不思議なものですわ、深町さまなら、請われれば来るもの拒まずだと思っていましたのに」


「ほしいと、思うか思わないか、だね。私だって自分の心を百パーセントわかっているわけじゃあないんだ。だから、その、ごめんね、上岡さんの気持ちは知っているんだけれど」


「え、ええ」ばくばく。「そ、そこは別に、はぁ」


「しししし、憲邇さん、可奈さんかわいいって言われてうれしいってさ」


「え、そう? みんなも思わなかった?」


「いーえー。ふふ。あなたは男ですからね」


「はぁ……?」


 絵里さんの言葉に、みんなもしげしげと頷いて、それ以上説明しなかった。あたしは少しずつ落ち着いてくる心臓の相手が精いっぱいで、なんにも言えなかった。


「そういえば上岡さん、今日は帰りはどうする? あれなら、私が送っていくけれど」


「あ、えっと、そうだ、ふう」ようやく落ち着く。「泊まっていきます。良子さんに聞いたら、
OKだって」


「そう。お家には連絡した?」


「はい。うちは放任なんで、大体平気です」


「そっか。でも放任とはいえ、気になっていないはずもないからね。年頃の娘なんだし、あまり心配かけないほうがいいよ」


「いえ……」ちょっと口ごもる。「うちは本当に、あたしのことなんてどうでもいいって、思ってますから」


「そんなことない、なに言ってるんだ。子供のことが気にならない親なんているはずないだろう」


 ちょっと深町先生が口をへの字に曲げてくれた。なんだかちょっぴりうれしい。けど。


「……いいんです。本当に、あたしのこと、気にして、ませんから」


「そんなことはない!」


 強く言葉尻を荒げる、深町先生。ああ、ああそうか。この人はこういう、人なんだ。


 冷静に見えて、実は熱い人。そして本当に、本当に優しい。


「確かに私は君のことも、君の両親のことも詳しく知らない。だが、放任主義の家庭でも、親は子を気にするものだ、絶対にそうだ。陰から見守っているんだよ」


「……頑張っては、みたんです」


 返事になっていない言葉に、少し落ち着く深町先生。周りのみんなも少し落ち着いて、口を挟むことはしなかった。


「どうにかして、親の気を引けないかって。勉強でも、スポーツでも頑張ってみたんです。でも、ダメでした。いいとこへいっても、いけなくても、なにも変わらない。『頑張ったね』の一言以外、聞いたことないんです」


「……」


「気を引きたくて、悪いこともしてみました。家のものを壊したり、派手な格好して遊びまわったり、万引きして、みたり。でも、なんにもならなかった。通り一遍の叱り文句だけで、なにも。残ったのはただ、派手な格好しているときに集まる、気持ちの悪い男の視線だけでした。あ、あと、でも、ご飯はおいしいなって、学校でみんなと食べるご飯はおいしいなって、思うようになったんです。うちだと、なかなか家族そろわなくって、一人が多くって、あはは」


 うわ、空気沈ませちゃったよ。ど、どうにかして盛り上げなくちゃ。


「あ、で、でも、毎日割と楽しいので、あんまり気になさらず。ご、ごめんなさい食事中に。あの、忘れてください」


「……上岡さん。その、無関心にも近い状態、どうしてかご両親には聞いたのかい」


「無関心だなんてそんな、一応会話だってたくさん」


「そんなものは無関心と同じだ! ふざけるな! そんな親、親じゃない!」


 だん! とテーブルを強く叩く深町先生。怒ってた。周りの女の子たちがはらはらしてるのがわかる。ど、どうしよ、あたしのせいで。


「聞かなかったのか、君は!」


「き、聞けませんもん!」


 あたしもつい、大声になる。「怖い、あたしに興味がないって返事がきたら、怖い!」


「聞くんだ! そして愛しているとの返事をもらえ!」


「無理です、怖い!」


「じゃあ私がついていてやる! 隣にいてやる! 乗り越えなければならない!」


「憲邇、他人の家庭事情にそんなに深く関わるものじゃあ、ないわ。ちょっと冷静になりなさい」


「ぐっ……そう、だね。すまない。つい、熱くなってしまって」


 柚香里さんの言葉に冷静になる深町先生。だけど、あたしはぽろぽろと泣いてしまって、それをふくことも忘れていた。


 うれしかった。そんなに親しくもない、まだ友達の、女に、そこまで真剣になってくれる。怒ってくれる。うれしかった。やらしさをのぞけばあたしに興味がない人ばかりの中で、この人は……! やらしくもなく、ただまっすぐにあたしを見つめてくれて、いる! こんなにうれしいことはない……


「……っ、ついていて、くれますか」


「え?」


「あたしがその、っく、質問をするときに、ついていて、くれますか」


「ああ、君にその気があるのなら」


 はっきりとした、答え。あたしは信じられないくらいたくさんの、勇気を、もらった。


 いける。


「あ、明後日、深町先生、お休みですよね? そ、そのときに、お願いしても、いいですか」


「ああ、もちろんだ」


 あたしは
千歳(ちとせ)ちゃんに差し出されたハンカチで涙をふきながら、にこりと、なんとか笑顔になれた。


「ありがとうございます、深町先生」


「いや、いいんだよ。あー……私こそ、すまない、つい、大声を出して、熱くなってしまって」


「いえ、うれしかったです。ふふ。大好き、深町先生」


 涙をふいて、あたしは今度こそにっこりとちゃんとした笑顔をとった。


 幸せものだ、あたし。


「あり、がとう」


「どういたしまして。うふふ。ああ、なんだかなんでもできそうな気分」


「よかったね、上岡さん。先生がいれば百人力だよ、私もそうだったもの」


「うん、わかるよ。わかる……今なら……」


 じっと深町先生を見つめる。ああ、素敵だな。素敵な、いい人だなぁ、本当に。


 好きになって、よかった。


 そこからなんとか夕食は元の調子を取り戻し、あたしもまた、おいしいご飯ににっこりとなっていった(ちょっとだけ万引きはいけないことだよと言われたけど、反省、猛省)。


 つい言っちゃってよかった。


 明後日が怖くも、楽しみでもある。けど。はぁ。


 いい、かも。
















 がちゃりと鍵の明けられる音がする。さっき憲邇様に犯していただいたばかりだから良子ちゃんかな。でも一応、スカートふわりの準備しなくっちゃ。ああさっきと同じチアのまんまだ。でもしょうがないよね。


 光が入ってくるとほぼ同時に、くるりと一回転をしてみせる。そのあとぺこりと一礼をして、四つんばいで光の先を見上げた。その頃にようやく目が慣れ、そこに立っているのが良子ちゃんだと気がつく。なーんだ。やっぱり。


「お疲れ様です、愛ちゃん。ふふ、すごいですね、ちゃんとしてます」


「当たり前です、大好きなご主人様の性奴隷ですから」


「ふふ、そうですね。えっと、今はもう日曜日の深夜です。ご主人様がえっちしたあとに帰してやりなさいとの仰せなので、監禁生活はひとまずここでおしまいです」


「あ、もうそんな時間だったんですか」


「ええ。あ、もういいですよ、敬語も。今からはちゃんと、同級生の愛ちゃんで」


「そう? それなら、戻しちゃうけど」


 それはそれでよかったなぁと感じる自分。やっぱりやらしい。


「どうでしたか、二泊三日の監禁生活は」


「とっても息苦しくって、窮屈で、よかったなぁ。うふふ。好きな時間に憲邇様に使っていただけて、幸せだったの」


 床を舐めて興奮したもの。すごく。


「そ、そうですか。心底ですねぇ。はぁ。あ、で、では、ご主人様から、きちんと衣装を選んだり、喜ばせようとスカートふわりやポーズを自分からしたり、暴れたり大声出したりしなかったので、ご褒美です」


「そんな、もらえないよ」


「受け取らないともう抱きしめてあげないそうです」


「そ、そんなぁ。じゃ、じゃあ、もらっちゃうけど」


 良子ちゃんが紙を差し出してきた。これに書いてあるのがご褒美? なんだろう。がさごそ、開いてみると。


『指令。ウエストはそのままでバストとヒップをもう一センチずつ大きくして、髪を最低でも腰に届くくらいまで伸ばすこと。バストとヒップのほうの期限は一か月以内とする』


「こほん、ご主人様が言っていましたのをそのまま伝えますね。『愛は命令のほうが嬉しいと思うから、今回は素直に命令してあげるよ』、だそうです」


「わぁ……うん、すごく嬉しい。はぁ。もっと憲邇様好みの体になれってご命令なの。嬉しいなぁ。うふふ」


「そ、そうですか。ちなみにどんなご命令だったのですか」


 良子ちゃんにも見せる。ふんふんと、そんなに厳しくないって、驚いてた。


「ご、ご主人様のことですから、もっときついのかと」


「きついよ、バストとヒップ、太るんじゃあなくておっきくしなきゃだもの。それも一か月以内かぁ。髪はもう伸ばすつもりだったからいいけど。それにね、できなかったときのこと、書いてないでしょ? なにされるかわかんないから、余計怖いよ」


「それもそうですね。一か月なでなで禁止とかだと、大変です」


「うわぁ、それ想像しただけでも最悪だよ」


 二人でぶるぶる、なにをされるか怖くなってきちゃった(良子ちゃん関係ないのに)。


「ご主人様はちょっとくらいむっちりさんのほうが好きと言っていましたから、太るなということは多分、今くらいの愛ちゃんの太さがちょうどいいんでしょうね」


「そうなのかな。だったら嬉しいなぁ。憲邇様のための体だもの」


「ほ、ほんと、愛ちゃんすごいですね。静香さんもそうですけど、はぁ。感心しちゃいます」


「そう? これくらい当たり前だよ。良子ちゃんはメイド長のくせに、心構えがなってないのね」


「うう、そうかもしれません。引き締めませんと。では、お家まで送っていきますよ」


「いいよいいよ、一人で帰れる。ほら、車置きっぱなしだし」


「ああ、そうでしたね。つい学生さんたちのくせで。では、気をつけて」


「うん、ありがと。はぁ。またバストアップ頑張らなくっちゃ。ヒップはどうしよう」


「ヒップアップ体操とか、ありそうですけどね」


「うん、探してみる。それじゃあね、また」


「ええ、さようなら」


 良子ちゃんと別れ、シャワーを浴びさせてもらってから、私が使わせてもらっているお部屋で着がえて、自宅へと向かう。そういえば今回の衣装、どうなるのかな。また着たいな。憲邇様喜んでくれたし。


 バストとヒップか。もっと女らしくなれってことだよね。頑張ろう。


 ああ、でも、石の床の味。覚えちゃったよ。変態かなぁ。私。


 あれがおいしかった、もの。精液と混じって、うふふ。


 はぁ。楽しかった。
















 たとえほぼ同棲生活、毎日を一緒に過ごしていると言っても、デートは別なのです。二人っきりでお出かけ、それは別格なのです。


 本日はしっとり大人っぽい青のロングワンピース。シンプルでいいのです、もはやご主人様はここで気合を入れすぎなくとも、いい関係なのですから(かわいいとちゃんと言ってももらいましたし、うふふ)。苦手意識のあるお化粧も巴さんの影響で少しは慣れ、別人になれます。女は化けますねぇ、と、自分のことなのに他人事のように感じています。


 それはさておき。本日もお休みとはいえ、可奈ちゃんのお宅訪問と、自宅でお仕事の残りがあるそうで、私メイド長とのデートは午前のみと、本当にご主人様はお忙しいことです。それでも、少し短くとも嬉しいのは嬉しいですし、メイドのために時間を割いてもらう、ホームページのご褒美とはいえど私は幸せ者なのです。


 準備が整った私はご主人様と一緒に家を出ます。ご主人様の運転する車で、助手席に座らせてもらえるのです。なんと嬉しいことでしょう。本来なら私が運転するところですが、ご主人様が頑として譲らないため、こうなってしまいました。うふふ。


 二人、シートベルトを締めると、午前だけの短いデートが、始まるのです。








 商店街にやってきました。ご主人様ときたら久しぶりに名物の芋羊羹が食べたいそうで、買い食いするつもり満々だそうです。私はメイドですので、行きたいところはご主人様と同じところなのです。私が行きたいところをねだるなどありえないのです。ご主人様が行きたいところがある。そこに行きたいに決まっているのです。


「あ、あんころ餅がある。あれも食べてこうよ」


「はい」


 ご主人様に限っては、あんまり食べすぎてお昼ご飯が入らないなどないですからね。


 老舗の和菓子屋さんは店先に椅子があり、そこで座って食べることもできるそうです。抹茶もあるのでそちらも頼んで、二人椅子に並んで座りました。


「付き合わせて悪いね、良子も行きたいところとかあったろうに」


「いいえ。私も久しぶりに商店街来たかったですし」


「そっか。ああでも、資料が昼に届くんじゃなければ、仕事先に終わらせてゆっくり楽しめたんだけどなぁ。どうしても昼以降じゃないと無理なんだって、はぁ」


「それでもご主人様とデートができますし、私は嬉しいです」


「ありがとう」


 そこであんころ餅と抹茶が届けられます。二人でつい、とあんころ餅を食べ、口元が綻ぶのです。


「うん、うまい。やっぱりこの味だよ。おいしいです、とっても」


 お店の人に言うとおばあちゃんとおじいちゃんもにっこり、「ありがとさん」って言ってくれました。ふふふ。


「せっかくだしおみやげに買ってこうかな。帰りに忘れないで寄っとこう」


「そうですね、今買うと荷物ですし、車の中に置くとむしむしですからねぇ」


 ぱたぱたあおいでしまいます。九月も半ばだというのに、残暑は厳しかったのです。


 ずず、と抹茶を飲むご主人様。はぁと一息、にっこりとした笑み。ああ、これが間近で見られる、デートは最高でした。


「あんこの甘味に、この抹茶。最高だね。すいません、もう一つあんころ餅ください」


 はいよとおじいちゃんも苦笑い。


「もう。本当よく食べるようになりましたね」


 二年前とはまるで別人です。


「おいしいからね。うちでの良子の料理だって、ついおいしいからたくさん食べてしまう」


「ありがとうございます、ご主人様」


「いやいや。良子はもういいのかい、ほれ、あーん」


「……」ぱくっ。そんなあーんされたら、当番でないのにされたら食べるしかないのです。ああ甘いもの、太っちゃう。控え目な、でも甘さをちゃんと主張する、おいしいあんこ。


「おいしいです、ご主人様」


「そうだろう。ここのあんころ餅は本当絶品だよ。いつまでもこの味を守っていってほしいなぁ」


「ええ、守っていきますとも。はい、おかわりね」


 おばあちゃんが朗らかな笑みを浮かべながらおかわりを運んできてくれました。ご主人様は早速つまようじでそれを食べ、おばあちゃんにおいしいと言うのです。


「おばあちゃんはこの道何年なんですか」


「そうさねぇ。もうかれこれ、四十年になるかねぇ」


「そんなにですか。はぁ……すごいですね。ずっとこの味でしょう?」


「ええ、それはもう。この店も八十年経つしねぇ」


「八十年ですか、それはすごい。ずっとこの味を守って八十年かぁ。さすがです」


 間に戦争を挟んだことを考えると、確かにすごいことですね。


「ありがとうよ。あんたたちみたいな若い子には合わないかと思っていたんだけど、おいしいってのはうれしいよう」


「合いますよ、こんなにおいしいんですから。ねぇ良子」


「ええ。とってもおいしいです、おばあちゃん。作り方教えてほしいくらいです」


「あっは、そりゃどうも。でもねぇ、跡継ぎの息子がまだまだでねぇ。あたしは早く引退したいんだけどねぇ、ふふふ」


「跡継ぎがちゃんといらっしゃるんですか。じゃあ安泰ですね。まだまだっていっても、おばあちゃんたちが厳しいからなだけでしょう。すぐにここを任せられるようになりますよ、きっと」


「ああ、そうだねぇ。うちはおじいちゃんが厳しくってね、黙ってよし、黙ってダメって、言うからねぇ。息子も怒鳴られたほうが楽だって、毎日ひいひい言ってるよ、はっはっは」


 確かに頑固そうなおじいちゃんが奥に見えます。息子さんはどこでしょう。奥で修業中なのでしょうか。


「厳しい修行あってこそのこの味なんですねぇ。和菓子作りはやっぱり、職人さんの腕の結晶だ」


「そんな大したもんじゃあないよ、うちは。ただの商店街の一角さ」


「それでも、看板は守ってほしいですよ。ここのあんころ餅、ずっと食べてたいです」


「ああ、ありがとうねぇ。そう言ってもらえるうちは引退したくなくなるねぇ。ふっふふ」


「いつまでも元気でいてくださいよ、おばあちゃん」


「ああ、頑張るよ、ふっふふ」


 笑いながらおばあちゃんは奥へ引っこんでいきました。


「やっぱり和菓子の職人は長年の修業が必要なんだねぇ。職人の道は医者の資格を取るよりずっと厳しいんだな」


「そうかもしれませんね」


 ずず、と抹茶を飲み、またはぁとため息を漏らすご主人様。ちょうどほかのお客さんがやってきて、私たちと同様にあんころ餅をたくさん買っていっていました。そこで奥から、おそらく息子さんでしょう、壮年の男性が出てきて、なにごとかおじいちゃんたちと会話していました。店の外の椅子からだとその様子がよくわかりませんが、別に口論などをしているようではないようでした。話を終えて息子さんはすぐ奥へ引っこんでいました。やっぱり修行中なのでしょうか。


「ふむ、あれくらいの年齢の跡継ぎがいるなら、やっぱり安泰だね。ここのお世話になり続けようっと」


「私もあんころ餅、作れるようになってみようっかなぁ」


「あれって家庭で作れるものなのかい?」


「さぁ。でもチャレンジですよ、チャレンジ」


「ふむ、そうだね。新しいお菓子作りにはどんどん挑戦したまえ、どんな失敗作でも、私が食べてやるから」


「ええ、お願いしますね、ご主人様。ふふ」


「じゃあ、そろそろ出ようか。芋羊羹も食べないと。ああでも、あっちのコロッケ、うまそうだなぁ。先にそっち食べようか」


「もう、しょうがない人ですね。目移りするのも仕方ありませんけど」


 私たちは今度は今のお店から向かいの、お惣菜屋さんに向かいました。揚げ物のほっかほっかとしたおいしい匂いがこちらまで漂ってきます。


「すいません、コロッケ一つ、いや二つ、と、かぼちゃコロッケも二つ、あとかき揚げも一つ」


「毎度ー。家で食べる? ここで食べちゃうならプラスチックじゃなくて別の紙袋入れるけど」


 おばさんが柔和そうな笑みを浮かべて言ってくれました。ご主人様は支払いをしながらこくこくと頷いています。


「ああ、お願いします。やっぱりできたての熱いのを食べたいんで」


「はーい。じゃあちょっと待っててね、ちょうどコロッケできたてがあるんだけど、かき揚げは今から作るから」


 おばさんが後ろのおじさんに注文の品を言ってくれ、頷いたおじさんがかき揚げを作っていきました。と、すぐにおばさんが持ちやすい手のひらサイズの紙袋にコロッケを詰めて、渡してくれました。


 さくっ、と。コロッケを食べたご主人様、にんまりです。ふふふ。可奈ちゃんの食べてるとこをかわいいというのなら、このご主人様だって格別のかわいさがあるのです。


「うまい! これはジューシーでおいしいですねぇ。ほら、良子も食べなよ」


「どれどれ」


 さくっ、と。衣を突き抜けると確かにジューシーなひき肉の味がじゅわっと口の中に広がり、とてもおいしいです。


「おいしいです。これはうちでは作れませんね」


「そうだろう、これはうまい。あ、良子、私コロッケも好きだけど、かぼちゃコロッケも大好物だから、たまには作ってよ」


「はいご主人様。覚えときますね。あ、かぼちゃコロッケはいいんですね、その、邪道とかなんとか」


「ああ、かぼちゃコロッケはコロッケじゃないとか、コロッケの中でもダメなほうだって、言う人はいるねぇ。でも、私は好きだよ」


「そうなんですか。やっぱり、男の人のこだわりはよくわかりません」


「あはは、私だって他人のはわからないさ。そういうもんだよ、私のだけ覚えておいてくれ」


「はい、ご主人様」


 そのまま二人、はふはふとあつあつのコロッケを頬張っていきました。うぅん、この味を再現できたらますますご主人様のハートを、もとい胃袋をわしづかみですのに。


 ちょうど四つものコロッケを食べたところでかき揚げもできあがります。ご主人様はにこにことそれを食べ、またうまいうまいと称賛の嵐でした。これもおみやげに買ってこうと、はてさて帰る頃にはどれだけ大荷物になっているやら、なのです。ふふ。


「いや、しかし意外と人がいるもんだね」


 午前ですが商店街は確かに人通りがそれなりにありました。田舎とはいえ、まだまだここを利用する人が多い証拠なのでしょう。嬉しいことです。


「ふむ。人通りもそれなりにここはあるし、いいな」


「ええ、いいとこですね」


「ああいや、そういう意味じゃあ、そういう意味でも、あるけど」


「?」


「なんでもないよ。さあ、まだまだ食べるぞ──」


 そこでぴぴっと、ご主人様の携帯が鳴ります。


「ああごめん、ちょっといいかな」


「はい」


「もしもし、深町だけど。……うん、うん、ああ、わかったよ
相良(さがら)。そう、か。じゃあ明後日がいいな、明日はちょっと、うん。ああ、わかってる。ああ、ああ……そう思うならお前もちょっとは手伝えよ、はは。冗談、お前に引っかき回されるほうが困る。ああ、わかったよ。じゃあな」


 ぷちっと携帯を閉じるご主人様。


「ああごめん、こんなときに仕事の電話で」


「いえいえ」


 私はにっこりと笑顔で返しました。むしろ誇らしいのです。お仕事で忙しいというのは、素敵なことなのですから。


「ご主人様、今さら私たちの仲でデート中に携帯は切っておいてほしいだの、そんな浅い考えはありませんよ。気にするものではありません」


「ああ、そうだね。迷惑をかけると、もうわかっているものな、君たちは」


「精々可奈ちゃんへだけ気にしていただければいいかなと、はい」


「うん、そうだね。じゃあちょっと、いいかい? 連絡しなくちゃならないことがちょっとできたから」


「はい、いくらでもどうぞ」


 その間に飲みものでも買ってきておきましょうかね。うふふ。


 携帯をいじるご主人様を少しだけ放って、自動販売機へ向かい、ご主人様の好きな炭酸を買って戻っていきました。


 ぴっぴと、最後の操作をして終わったのか、携帯をしまうご主人様。はいと炭酸を差し出し、受け取ってもらいます。


「ありがとう。本当、良子は気が利くね」


「ありがとうございます。メイド長ですもの」


「それもそうか」


 かしゅ、と缶を開け、一気にごくごくと飲み干すご主人様。デートはいいものです、こうして間近で動く、喉仏を見られるのですから。ふっふっふ。ああ、ご主人様の匂い、かぐわしいのです。


「さて、じゃあ芋羊羹食べようか。ああほかにもおいしいものがいっぱいだね、商店街は。食べるもの以外も、いろいろ見ていこうよ」


「はい、ご主人様」


 そうして午前中を目いっぱい使い、商店街を散策していきました。ご主人様にたくさんあーんをしてあげたり、楽しげにお店の人と話すご主人様をじっと眺めたり、携帯でお忙しいご主人様をじっと眺めたり。至福のときでした。最高のデートなのです。


 ご主人様と二人っきり。なにをはばかることなく、ご主人様を見つめられる。


 それに勝る喜びはきっと、そう多くはないでしょう。うふふ。


 幸せ。
















 授業中に携帯電話がメールの振動を伝えてくれる。いつもなら授業が終わってから見るけど、今日はなぜか見なくちゃいけない気がして、こそこそと担任の先生から隠れて携帯を取り出し、見てみる。


 あ。そっか、こういうこともあるんだ。今度からは授業中のメールとか、ちゃんと見よっと。そっか。この予感だったんだ。先生お休みだしね、そっか。


 きょろきょろと辺りを見渡す。みんなつまらなそうに授業を受けているだけで、こっちを見ている人なんていない。できるかも。わ、私の心の準備さえ、整えば。


 いきなりだもん。大変だよ。先生のお相手は。でも、でも、できなかったら、いけないよね。先生の女なんだから。


 いそいそ、どきどき、ぱんつを膝までずり下ろしておく。ここまでは普通に見つからない、よね。またきょろきょろ、辺りを見渡しちゃう。誰もこっちなんて見てない、寝てる人もいるくらいだ。


 えっと、えっと、じゃあ次、スカートめくって、あそこを撮っちゃえば、いいよね。やっぱり先生がいないと、どう露出したほうが一番いいのか、わかんないなぁ。まさかここで、制服を脱いで裸になんてなるわけにはいかないし。


 携帯での撮影に少しまごつき、ようやく撮れると思ったところで、えいと、気合を入れて、スカートを上へめくった。


 ぱしゃり。のぞく自分のあそこを、撮影しちゃうの。うわ、うわ、結構大きい音、出たけど、平気かな。すぐにさっとスカートと携帯を戻しておく。


「おいこらー、携帯はせめてマナーにしとけー」


 先生が言うと、どきっとする。きょろきょろ、辺りを見渡すと数人が誰だと周りを見てた。


 私って、バレちゃう、かも。そう、思うと、どきどきした。みんな誰を見ているわけでもなく、ただ誰だろうと思っているようで、私に視線は集中しない。


 幸い授業はすぐに再開され、周りを見る人も黒板に視線を戻していっていた。ほっとしながら、ゆっくりと下着を戻そうとすると──


谷津(やづ)、次読んで」


「えっ」


「八十ページから」


 先生がこっちを、見てる。今不審な動作したら、気づかれちゃう、かも。ま、まだ、下着が、うう……


「どうした、教科書忘れたか? 立って」


「は、はい」


 がたっと、少し慌てた私は椅子で少し大きな音を出し、立ち上がる。まだぱんつが膝にある、のに。ど、どうしよ。


 意外と誰も私を見ていない、それを立ったまま確認すると、一度深呼吸して落ち着いてから、教科書を朗読していった。


 でも、どきどきは止まらない。突然の指令、大変だよ。


「よし、そこまででいい。座っていいぞ。えー、今のは──」


 ほっとへたりこむ。最後にもう一度だけ辺りを見渡して、誰も下着が膝まで下りていたのに気づいていないと、確認してから、ゆっくりとぱんつを履いていった。


 こういうこと、あるんだ。携帯は授業中でも、確認しなくっちゃ。


 先生のご命令を気にかけてて、授業が耳に入ってなかったのを、取り戻すように授業に集中して、今までのどきどきを、忘れようとしていった。


 またくる、のかな。また先生の気まぐれ、突然指令……考えると大変だよ。いつでも、先生に喜んでもらえるよう、ちゃんとしなくっちゃ。


 あ、送るの忘れてた。もう一度携帯を取り出して、先生に送っておく。すぐのお返事でいいよと言われ、ほっとする。はぁ、大変だった。


 写真、撮るとき音出ないようにできないかなぁ。あとで調べなくちゃ。


 今度はもうちょっとうまくやろうっと。
















 今日の会社は騒がしい。電話の応対、歩く足音、パソコンを動かす音、話し声。そんなに大きいところでもないので、今日みたく騒がしいのは珍しい。いつもはもっとみんな静かだから(一人を除く)。


 そこでやれ、との、大好きなご主人様の、仰せ。危険だけれど、やりなさいと、メールの文まであまあまで聞こえた、気がする。


 急に立つと目に入る。だから座ったままにしよう、とりあえず。左右の同僚は画面に集中している、今がチャンス。


 するするとショーツを膝までずりおろし、ブラウスのボタンを上から順に外していく。騒がしいからそんな小さな音は周りは気にしない。意外と露出に向いてる環境なのかも、と思いつつ。


 今日の下着は黒だけど、いいかなぁ。憲邇様気に入ってくれるかな、と、少し心配もしつつ。


 タイトスカートをたくし上げ、胸元を広げ、自分の秘部をどちらも見せていく。そうして、携帯を全身が映るよう前に掲げて、一枚。


 ぱしゃり。結構な音は、今日の会社が出す騒音に消されていった。左右の同僚も気づいていない。


 ……ハンカチ、あるよね。ごそごそとポケットを探すと見つかった。それを椅子に敷いておく。


 急ぎでもなんでも、私に用があることは多分、午前中はない、はず。みんなまじめにお仕事してるし、私も終わったらちゃんとしなくちゃとは思ってる。


 だから。私はショーツを完全に脱ぎ捨て、タイトスカートも下ろして、床に置いてしまう。


 下半身、裸で、椅子に座って、仕事をするフリをして、しまうの。一応周りを確認、誰も気にしていないのを見てから、もう一度掲げた携帯で、ボトムレスだとわかるように角度を調整し、一枚。


 隠れて露出、楽しい、かも。


長坂(ながさか)さん」


 正面向こうの席にいる同僚が声をかけてきた。私はどきりとし、一瞬硬直してしまう。でも、憲邇様の言うことこなさなきゃ、こういうとき、ちゃんとしなきゃと、自分に発破をかけ、なに、とそっちを向いた。


 私がボトムレスで座っているなんて、きっとデスクで、見えやしない。でも、ちょびっと興奮する。


「これ、お願い」


 机越しに紙を渡される。私は受け取り、わかりましたと頷くと、彼の意識も向こうへ行ってしまった。


 ほっ。私はすぐに下着とスカートを履き直して、胸をなで下ろした。やっぱり危険だなぁ。大変だわ。


 でも、ちゃんとできた。写メを憲邇様に送り、いいよと、よくやったねとお返事をもらい、にっこにこ。


 結果的に、私の本日の仕事効率は上がり、上司に褒められてしまうの。うふふ。


 ああ、突然の指令、最高だよ。
















「ありがとうございましたー」


 お花屋さんのお手伝いも慣れてきたものねぇ。まさかこの年で新しい職を経験するとは、ねぇ。


 実際、元気に外国を飛び回れるのも、やれて次が最後かしら。憲邇くんの女にもなったことだし、どうしようかしらねぇ。


「紗絵子さん、なにぼーっとしてるんですか」


「ああ、なんでもないのよ」と、愛娘の柚香里に返事をする。


 お店をやっているはずの
岡山(おかやま)夫妻は、今日は調子が悪く奥で伏せっていた。ごめんねぇと謝る彼女たちにいいえと、気にしないでくださいと言っておくも、こっちが気になってしょうがないみたい。


 なにごとも経験よ、柚香里だってそろそろ、一人でこのお店を切り盛りできるわ。きっとね。


「いえ、そうね、岡山さんたちもそうだし、うちの詩音ちゃんもちょっと気になって」


「ああ……」


 かわいいかわいい孫娘の詩音ちゃんは、熱を出してこれまた寝こんでいた。在りし日の柚香里を彷彿とさせるけれど、今はちゃんと家で詩音ちゃんを見ていてくれる人がいるから、安心して外へ出られるわ。昔はねぇ、柚香里の看病はずっとずうっと憲邇くんがしていたけれど。


「大丈夫ですよ、詩音は体が弱いかもしれませんけれど、すぐよくなります」


「そうね、そうだわ。心配しててもしょうがないわね。お仕事お仕事」


 そう言う、柚香里が一番心配しているのは、わかるものね。私はなにも言わないでおきましょうっと。


 そこで二人の携帯が同時に鳴る。今はお客さんもいないしと、二人で携帯を見ると。


 まあ憲邇くん、同時ってことは、これどうせ柚香里さんも一緒ってこと? ふんだ、私だけがいいのに。ふふ。


 ちゃんとやるわ。ええ、ちゃんとね。


 ちら、と柚香里さんを見ると、顔を赤くしてかすかに震えてたわ。野外露出、やれば興奮してすぐ濡れるけど、自分からはできない、命令を待つんだものね。ふふふ。それはそれで面白いわね。


「そっちにもきたの?」


「え、ええ。多分、いろんな人に一斉送信したんだと、思います」


「そっか。じゃあ私たちは二人一緒がいいわね、お客さんがやってくる前にちゃっちゃと済ましちゃいましょう」


 二人ともが白いワンピースにお店のエプロンという格好、脱ぎやすいわ。さて、どこまでしましょうっか。うふふ。私は心の準備なんて、すぐにできるわ。憲邇くんの女ですもの。


「し、下だけ脱いで、めくって全部見せる、で、どうでしょう」


 こっちは動揺を隠せないようね。今までこんなこと経験しなかったのかしら。心の準備が、準備が、と、大変そう。


「下だけって、ショーツだけ?」


「し、下着、だけ」


 あなた軽く震えてるけど、露出で快感を得てるんでしょ? そんなに恥と悦楽が共存しているの? まったくもう、はしたない。


「そうね、こちらさんに迷惑もかけられないし、傍目にはわからない程度がいいでしょうね。あ、でも、私はないけど、あなたスリップ着てたりするんじゃあないの」


「あ、そ、そうですね。ううう、じゃ、じゃあ、それだけ奥で脱いできます。け、憲邇も、それくらいなら許してくれるはずだから」


 そそくさと奥に引っこむ柚香里さん。まったく、手際こそしっかりやるくせに、心は恥を多量に感ずるのね。私もそうなったほうがいいのかしら。


 露出は、昂る。それだけで充分、憲邇くんは喜んでくれると思うけれど。


 私は店先で、こちらに来る人もおらず誰も通りにもおらずなので、その場で下着をするすると脱いでいったわ。早着がえには慣れたもの、すぐにショーツとブラを脱いで適当なところに隠しておく。


 ワンピース一枚、エプロン一枚。はぁ。どきどきするわ。憲邇くん。


 ぱたぱたと柚香里さんが戻ってくる。そっちでもう下着全部脱いだと思いきや、まだの様子。なにしてるの、と思ったけれど、そっちのほうが羞恥を感じて、憲邇くんが喜ぶと思ったのね、そこは同意だわ。


 おろおろと辺りを見渡す柚香里さん。誰もいないことを何度も確認してから、ぎゅっと目を閉じて恥ずかしそうにワンピースの下から下着を取り出していっていたわ。……私のほうがはしたなかったわね。見習わなきゃ。


 白い下着を私と同じところに隠して、二人ともがノーパンノーブラ、ノースリップになる。まだ誰も来る気配がないので、今がチャンス。


 二人、こくりと頷いて。自然に二人、並んで、同じように携帯を掲げる。空いた手がワンピースとエプロンを同時に、めくりあげる。


 お花屋さんの前で、すぐそこは人通りのある道の傍で、私たちはおっぱいとあそこを見せていったの。羞恥を感じる、赤い頬で。


 ぱしゃり。二人同時に写真を撮ったわ。うふふ。憲邇くん合格をくれるかしら。すぐにワンピースを下ろし、はぁとため息をつく柚香里さんを尻目に、私はぴっぴとさっさか写メを送ってみた。すぐにお返事の憲邇くん、いいよと言ってくれ、助かったわ。裸を晒しただけはあるわね。


 柚香里さんもすぐに写メを送り、憲邇くんにいいよと言われたみたい。ふふふ。


「柚香里さん、感じたのなら、そうと本文にも必要よ」


「……え、ええ、わ、わかってます」


「あら、ちゃんと書いてたの? ふぅん、さすがね」


「けっ、憲邇のやつ、ないと怒るし、絶対許してくれないから」


「そっか。ねぇ柚香里さん、このままノーパンノーブラでいたほうが、憲邇くん」


「え、ええ、それはもう、喜ぶと思いますけど」


「こんにちはー」


 びくっと二人して跳ね上がる。お客さんがやってきていた。


「あ、ああ、いらっしゃいませ」


「いらっしゃい」


 ああそうだわ、適当な鉢の裏に下着置いちゃってたけど、あ、あれ、見つかったらどうしましょう。どう言いわけ、あんもう、憲邇くんのバカ。


「見舞いに行くんですけどー、鉢植えはダメなんスよねー」


「ええ、お見舞いに鉢植えはちょっと……」


「あ、じゃあそこの、それでいいです」


 お客さんの彼は適当に見繕ってすぐ買い物を終え、去っていった。さっさぱっぱと買い物をする、男の人にままある人で助かったわ。私と柚香里さんはまたほっと一息つき、どうしましょうと顔を見合わせるの。


「……」「……」


 このままでいましょう、との、二人の意見が一致したわ。そそくさと隠した下着を奥に置いたバッグに詰めこみ、通常業務へ戻っていくの。憲邇くんがいたらよしよししてくれるところかしら。


 ああ憲邇くんの突発的な指令、困るわぁ。どんどんしてもらわないと。ふふ。


 私たちはノーパンノーブラでいる、羞恥を感じながら、お仕事をしていったわ。幸いワンピースにエプロンは体のラインを如実に表したりなどはせず、誰も気づいていないようだったけれど。


 と、男のお客さんの相手をしていると。


「きゃあ!」


 強い風が一陣、店先を通り抜け、私たちのワンピースを大きくはためかせたの。私も思わず思いっきりワンピースを抑え、柚香里さんなんかしゃがみこんじゃってた。


 はぁ。どきどき。ノーパンノーブラ、大変すぎるわ。


 顔を真っ赤にして恥じらう、かわいい娘の柚香里を、なだめて立たせ。お仕事をこなしていったわ。うふふ。


 お花屋さんは今日もそれなりに繁盛でした。
















 おっそうじおっそうじ楽しいな、っと。良子さんのように鼻歌こそ歌わないけれど、確かにお掃除は楽しい。なにしろ今日はメイド長が午前中デート、その間のお仕事はあたしにお任せなんだから。


 巴だってちゃんとできる。そう、帰ってきた二人に見したげないと。ふふ。


 おっと、メールだ。しかもご主人様から。なにかな、ええっと……


 う、うわ、突然すぎるよ。今良子さんとデート中じゃないの、もう。そ、そりゃあ、いつもどおりしてくれてたほうがむしろ、良子さんは嬉しいだろうけど。


 ちょうど深町邸前をお掃除していて、メールでの指令をこなすにはぴったりかも、しれない。けど、でも、心の準備が整わない。はらはら、人が通るかも、ここで、なんて。


 でも、なるべく早く、その場で露出して、写メを送りなさいとの、仰せ。あたしはどきどきしながら、憲邇先生のことを考えて、喜んでもらえるよう、その場で、深町邸前の道で、メイド服をめくっていった……


 胸の高鳴りは、快楽のサイン。望んでた露出への、昂りへの、サイン。


 ぱしゃり、と。道端で自分の白い下着を撮影し、すぐにスカートを下ろす。さっと左右を見渡して誰もいないのにほっとし、その写メを憲邇先生に送って、これで許してもらえるかを尋ねてみる。


 十中八九、ダメだとわかっていても。やらざるを、えないの。


 それ以上は、いけない。自分からだ、なんて。


 案の定、すぐに帰ってきたメールでは、ダメだよとの文に、にっこり返事をしてくれる憲邇先生の顔が浮かんじゃう。とほほ。


 ……胸の高鳴りは、快楽のサイン。そうよこれは、大好きなご主人様のご命令……


 ぱさり、と。メイド服を脱ぎ捨てる。地面にふりふりとしたかわいいメイド服が落とされ、あたしは道の真ん中で下着姿になる。今日は奮発した、うっすら透けるスリップ姿に、白いレースの下着。水色のガーターリングと白の長靴下がメイドらしさを表現し、それは頭に乗っけた、ヘッドドレスからもわかる。


 ぱしゃり。誰が通るかもしれない、道端で一枚、その下着姿を撮影、したの。


 ぞくりと、する。


 こ、これでいいわよね。これ以上脱げだなんて無理だわ。いそいそとメイド服を着直しながら写メを送る。すぐに返事が……


 うぐ。わ、わかりまし、た。で、でもここでは、よくないでしょうし、ちょうどそう、お掃除も終わったので、庭先で、っと。


 深町邸のお庭に入り、いそいそと、全部を、脱いでいく。お洋服がなくなり、下着が脱げ、自慢の肌が露出されていく。壁の向こうは人通り、それでもそこで裸になったあたしの、控え目な胸がぷるんと、揺れる。


 足音が聞こえた。それが過ぎ去るまで、硬直する。それが終わり、ようやくと。


 ぱしゃり。すぐに着直していきながらメールを送ると……


 お返事にお股が、くねくね。軽く粘っこいなにかが出現しだしたのを感じながら、あたしは着ていたものを放り出し、庭先から外へ、出た。


 靴と靴下、ガーターリングとヘッドドレス。それ以外はない、裸同然、いえそれ以上に恥ずかしい、格好で。ふらふらと深町邸をバックに、撮影をする。


 人がさっきのように、通るかも……そう思えば思うほど、あたしはおかしくなっていた。もぞもぞ、する。


 ぱしゃ、り。変な笑顔で撮れたものでようやく、許しを得る。ふう。すぐに駆け出して庭先で着がえをしていった。今度はここをね、お掃除しなくちゃだものね、はぁ。


 そっか。こうして、突然指令を受けることもあるんだ。が、頑張ろっと。


 おっそうじおっそうじ、はぁ。楽しい、わ。うふふ。


 ……ちらりと、メイド服をめくる。スリップの下は、白いレースの下着は……


 いけないお水でわずか、透けていた。着がえ、なくちゃ。ああ、うう。


 気持ち、うぅん、そんなこと、えへ……
















「それではテストを始めて下さい」


 担任の先生の代わりとして、言いました。生徒の皆さんはすぐにテストに取りかかり、さらさらと鉛筆の滑る音が教室に響いていきます。


 担任を持たぬ私が担任の先生のお忙しいときに代行をできるのは、実にありがたいことでした。こんなに真剣な、ふふ、生徒さんたちを見ることができるのですから。


 勉学に励む生徒さんを見るのは、とても嬉しい。音楽教師はそれが少し少なく、残念ですものね。


 と、そこで携帯電話が音もなく振動しました。この前購入したばかりで慣れぬ最新機器、どうしたのでしょうと、思いましたがとることはしませんでした。今は授業中……


 しかし、緊急だとしたらどうでしょう? せっかく今はテスト中で、忙しくはありません。なにか、花雪や
花織(かおり)の身になにかあったとの連絡だとしたら。これが普通の授業中でしたら致し方ないことですが、幸いにもテスト中。急ぎだとしたら確認したほうがよい、ですわね。


 せめて、生徒の皆さんの前ではよしておきましょう。一度教卓から立ち上がり、そっと教室を出ました。静かに扉を閉め、教室と教室の間の空白の廊下で、携帯を見てみます。


 それは深町様からでした。まさか本当に娘たちになにかが、と思ったのですが。


 ま、まあ、うう。そ、それを行いなさいと、深町様の女ならやりなさいとの、はぁ、仰せ。ど、どうしましょう。ああでも、これがあるのなら、今後授業中もなるべく、携帯電話を見ないといけませんわね。


 それはさておき。やらなくてはいけません。ああ、恥ずかしい。心の準備ができませんわ。いつもなら深町様が隣にいてくれ、大きな勇気をくれますのに。


 ああ、そう。そうして、一人でもできるよう、ちゃんとなさいとの、そのためのご命令ですのね。はぁ。で、では、生徒の前に戻りましょう。


 もう一度静かに扉を開け、皆さんがテストに集中していると、確認をして。こ、これなら、いけそうですわ。


 こつ、こつと、教室の後ろに、歩いていきます。げしげしと消しゴムで一生懸命間違いを直す、かわいい生徒さんたちの横を、通り。


 教室後ろの、黒板の前に、立ちました。後ろの背の低い棚には生徒の皆さんのランドセルが収納され、壁には書道の作品が貼りつけられています。


 時間はそれほど多くはありません。すー、はー、と軽く深呼吸をし、呼吸を整えていきました。さあ、やるのです、春花!


 ……こ、心の、準備が、やはり、足りません。胸が高鳴り、こんなところでと、思いが安全な方向へ逸れていきます。ああ、どうしましょう。できませんわ、深町様。


 羞恥に顔が歪んでいきます。まだ露出をしてもいないのに。ああでも、できませんわ、できませんわ……


 五分が経ちました。このままだと、せっかくのご命令がふいになります。けれど、でも、でも……


 ふいに、深町様の顔が、頭をよぎりました。にこりと、いつものように微笑んで下さっています。


 ……ええ。ええ、やるのですわ、春花。やらないとお仕置きですわ。もっとひどいことになりますわ。それに、それに深町様に、喜んでもらうのです、あの笑顔を見るのです、春花っ!


 なんとか発破に、勇気をもらい。本日のワンピースに手を、かけます。いつもよりずいぶんとまごついてしまいました、が。


 ぱさりと。それが脱げていきました。後ろの棚に置いて、高鳴る胸のままに、生徒の皆さんが振り返りませんようにと、祈りながら、心臓の鼓動が早いままにスリップを脱いで、同じように棚に置いていきました。本日のピンクの、総レースの下着姿に、なります。


 恥ずかしさに顔が真っ赤になり、身じろぎをしてしまいます。ああ、なんて恥ずかしい格好、生徒たちの前で……深町様の、いけず。


 でも、でも。喜んで下さいますわ、きっと。ええ、それだけが。


 ぷち、とブラジャーのホックを外し、脱いで、胸を披露し、ました。ブラジャーを棚に置いて、手で胸を隠しながら、ゆっくりと、ああ、恥ずかしいと、思いながら、ショーツに手を、かけ……


 全裸に、なりました。ここは学校、教室……テスト中の生徒たちが、何人も何人もいるのに、うう、恥ずかしい……いつ生徒たちが振り返るか、気が気でなく、でもここで終わりでは、なく……


 ゆっくりと、震える手で携帯を持ち上げ、ました。撮影のできる状態にし、ゆっくりとまた隠していた手を、どかし。


 ぱしゃりと。教室で裸でいる私の、胸とあそこを、残してしまいました。残してしまいました。


 思いのほか大きい音が出、生徒たちの何人かが辺りをきょろきょろと見渡しています。私はなにか言おうと思いましたが唇が渇き、なにも言えず、ただ後ろを振り向かないで、振り向かないでと、願うばかりでした。


 幸いにも、生徒の皆さんはまたすぐテストに集中していってくれました。ほっと一息をつき、いそいそと下着を着直していき、元のワンピースに戻ってから、再度教室を出て、深町様にお返事を送りました。


 すると。なんと慈悲のない深町様は、更なるご命令を下さるのです。ああっ、なんて恥ずかしい、ことを。


 ……やらないともっとひどいことをするよ、との、言葉がメールの向こうに透けて見えるようでした。ええ、まず間違いありませんの。私は覚悟を決めもう一度教室内へ戻っていきました。


 もう一度教室後ろへ、行き。もう一度ワンピースたちを脱いで、いき。もう一度全裸に、なります。


 授業が終わる寸前まで、このままでいるのです。ああ春花、頑張りなさい、ね。


 そして。今度は生徒たちの背中に背を向け、彼らの背中を背景に、また撮影を、するのです。もう一度、震える手で携帯電話を掲げ、ぱしゃ、り……


 ここが完全に小学校の教室だと、わかるものができてしまいました。ああなんて背徳的な、恥ずかしい。どうしましょう。


 そんな生徒たちを見ると、またきょろきょろしてはいますが、後ろを見ることはなく、時計を見て、左右を見て、首を傾げつつテストに集中していっていました。やはり後ろを振り向く生徒さんたちはいなさそうです。ほっとしますの。


 そ、そうですわ、これ、言っておきませんと。後ろ、この言葉で振り向いたりは、しないでしょうから。


「みっ」ごくん。「皆さん、きょろきょろするのはやめましょうね。カンニングをするように見えますわ。テストに集中しましょう」


 胸の高鳴りがすごいですの。裸なのになにを言っているのかしら、と、思います。けれど純情な生徒さんたちはその言葉にしっかりと従って、テスト用紙と格闘していってくれました。ほっ。ふう。


 で、では、次をやりましょう。さっきの言葉で、周りを気にする生徒がいなくなりましたものね。言いつけどおり、携帯電話で動画を録画できるようにして、そのまま後ろの棚の上に置きました。これで教室内をビデオカメラのように撮影、できますのね。はぁ。


 では、と。ゆっくり、と。教室の中を歩いて、いきました。生徒さんたちの机は横に三つずつ連結するようにくっつけてあり、それが縦に四組、並んでいます。その列が三列あり、合計三十六人もの生徒さんが教室にはいました。


 その、列の。隣を歩いて、いきました。裸で、ですの。ああ、なんて恥ずかしい……生徒さんたちの視界に入りませんように、入りませんようにと、祈りつつ、窓側の列から、歩いていきました。


 こつ、こつ。ガーターリングと長靴下、それから内履きだけはありますので、必然足音が、します。けれど生徒の皆さんはこちらに気づかず、なにも言ってきませんでした。


 教卓から見て右から二列目の、机と机の間を、歩いていきます。裸の胸が揺れ、お尻がたわみ、なんとも恥ずかしい。生徒の誰かに見られるかもしれない、誰か先生が訪ねてくるかもしれない。そう思うと、羞恥に身をよじり、歩みが少し遅くなります。ああでも、歩きませんと、こなせませんわ、深町様のご命令を、ああ……


 恥ずかしい、ですの。顔がもう、ずっとまっかっかですわ。動画としても残ってしまう、羞恥の極み、ですわ。


 なんとか二列目、三列目、そして反対の廊下側の窓際を、歩いていきました。皆さん見回りだと思ったのか誰も、面を上げませんでした。


 とてもとても緊張して、恥ずかしく、顔を俯けたままでしたけれど、どうにかこなせましたわ。裸で教室をぐるり歩き回るなど、正気の沙汰ではありませんの。


 ですけれどこれなら、深町様も喜んでくれますわ、きっと。はぁ。もう少し、頑張りませんと。


 幸い、最後尾に一人、うとうとと舟をこいでいる生徒さんがいるのを見つけました。こ、この子でいいですわよね。


 その子の隣に、立ちます。三つ隣り合った机の左端の男の子は、こっくりこっくりと眠りこけていました。普段なら見直しをしましょうというところですが、今回だけはすみませんわ。


 もう一度、携帯を掲げ。生徒の男子とほぼ隣り合い、一枚。はぁ。撮れましたわ。はぁ。


 心臓がばくばくでした。起きやしないか、反対側の生徒がこちらを向きやしないか。けれど先の言葉があったためか、今度は振り向く生徒さんはいませんでした。ほっとその場をあとにし、教室後ろに戻ります。送信、しましてっと。


 授業時間が終わるまであと十五分。私は最後のことを済ますため、教卓まで戻っていきました。もう一度携帯は後ろの棚で録画状態にします。教室中央の列の間を歩くとき、また誰か気づかないかどきどきものでしたけれど。


 教卓の前に、立ちます。持ってきておいたハンカチを、その傍の椅子に置き、私自身もそこへ座りました。


 教卓は下半身こそ隠してくれますが、上半身が裸なのは隠せません。私の、大きいだけの胸が、丸見えの状態で、そのまま座っていました。一分でいいとのことでしたので、一分だけ。六十秒を数えて、いきました。ああ、その間に、生徒さんたちの視線が、こちらに向いていないのに感じるほど、羞恥でした。恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしいですの、深町様と、後ろのカメラに、おかしな顔を、作るのです、深町様……


 一分とは思えぬとても長い時間を、そのまま過ごしていきました。たとえようもない羞恥を感じ、しゅうしゅうと顔全体がゆでだこのようでした。そのままではとてもいられず、一分確かにいましたわねと時計を確認して、そそくさと教室後ろへ戻っていきました。携帯は今回の私の痴態を、きちんと残しているようでした。うう。教室内を歩くときは全部とは言えませんでしたが、ちゃんと残ってしまっていました。


 そのまま。もじもじとしながら、深町様の仰せ通り、全裸で残りの時間を過ごしていきました。隠してはいけないよとの仰せでもあり、なんとも恥ずかしく。大変な時間でした。携帯がまだ動くので、そちらも録画を、うう……


 えっ。ま、また携帯電話が。震えながら画面を見ますと、まあ、な、なんてこと、ああ……わ、かりましたわ。やり、ますの。


 ぐしゃりと、自分で胸をわしづかみ。揉んでいくところを、ぱしゃり。己の淫らな女の花びらを、両側から開き、なかを丸見えにして、ぱしゃり。お尻をぐっとまたわしづかみ、背中からぱしゃり……


 色づく、肌。


 ああ、羞恥、羞恥露出ですの……


 二分前にもういいですわよねと、なんとか素早く下着とワンピースを着直していきました。こつこつと着直してから、一度髪をかき上げ、いつもどおりの声色を精一杯だし、教卓へ戻りながら声を上げました。


「はい皆さん、そろそろ終わりですわ。見直しをしましょうね」


 返事の代わりに、そうだったとテスト用紙を見直す生徒さんたちを見つめながら、私はほうとため息を漏らすばかりでした。


 大変ですわ、唐突な指令だなんて。はぁ。前もって言って頂けたり、深町様がお傍にいるのならもっと楽にできますのに。


 でも、だからこその、露出調教ですのね。そこがわかるくらいには私も成長していました。


 チャイムが鳴り、テストの時間は終わります。皆さんから用紙を集め、号令をしてからその場は解散となりました。私はほっと一息、駆け出す生徒さんたちが誰も私を見ていないと知ると、どっと疲れが押し寄せてきました。


 ああ、うう。深町様、愛していますわ。ああこの調教、階段を上れて、嬉しく思いますの……


 大好きですの。存分に送った、私の痴態を、見てやって下さい、ませ。
















































































 第九十一話あとがき的戯言




 こんばんは、
三日月(みかづき)です。


 今回はリクエストの『唐突な露出指令』をやらせていただきました。リクエストありがとうございました。うまくできた、かな? わかりませんが、どうぞよしなに。春花さんも大胆になりましたね。ふっふっふ。


 この『唐突な露出指令』だけではありませんが、リクエストのほかのものも、二度目を考えているものがいくつかあったりしますので、また日の目を見ることがある、かも? 期待せずどうぞ、よしなに。


 万引き厳禁! いけませんからね!


 それではここまでお読みくださり、ありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。




 
20150110 三日月まるる





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2015/02/07 17:04 | 小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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