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「ごめんなさい」その百五_第百二話_露出でお散歩愉しいな

 こんばんは、三日月です。 

 遅れて本当に申し訳ないです。ごめんなさい。これからも頑張ります。 
 作中での季節の移ろいも少しは早くなりましたが、現実は加速度的に増すばかりに感じますね。季節の変わり目、花粉症など、本当に毎日面倒というか、はぁ。
  そんなときこそ露出を楽しみましょうね。そう、お話の中で、特に。
  拍手コメントメール、ありがとうございます。励みになっております。
  それでは第百二話です。どうぞ。


 

 百二 露出でお散歩楽しいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 今年の勤労感謝の日は月曜日、三連休。そのため、学生時代からの友人である聡里(さとり)ちゃんの帰省はそこに当てられ、私、広子(ひろこ)とも日曜日に落ち合う予定をしている。紗絵子(さえこ)さんとは違い、そのときになんやかんやしろとの指令はないため、純粋に楽しむんだ。地産地消、でないけど、地物を食べて飲んで騒ぐの。

 

 

 うちの院長は先代からスタッフに対する処遇は厚く、有休をとっていないとむしろ休め休めと急かしてくれていた。実際はみんな休もうとしなかったけれど(できなかったけれど)、最近は運営にゆとりができ出し、ぽつぽつと今年の分を消化する人が生まれてきた。私もそれで三連休休んじゃった。これも憲邇(けんじ)さんの進める計画のおかげ、かな。

 

 

「疲れでふらふらの医者看護師に診てもらいたい患者はいない、全員きっちり養生しろ」とは、急病で実際に自分の病院へ入院した院長自らの実感こもったありがたいお言葉である。しみ、じみ。

 

 

 それはそうだ。疲れたら休もう。無理はしないでおこう。それでなくとも人命を預かるのだ、万全の体制を期せずしてどうする。

 

 

 それは向こうの工場勤務の聡里ちゃんも同じようで、最近は労基がきつくがみがみ言うから休めってむしろ言われちゃったと、日曜日、昼間っから生簀付きのイカ専門店でお酒と戯れながら言ってきた。

 

 

「だぁいたいねー、日本人は働きすぎなんじゃあなくって休まな過ぎなの! 有給は使うの! あたしゃねー、みんな休んでないから自分も休めないなーって空気、だいっきらい!」

 

 

 その労基のお達しも最近になってようやくだ、以前は今聞いたような空気でいっぱいだったと、不満が爆発している。なだめながら私はお酒は控え目にしようと、お昼は飲まないようにしていた。

 

 

 いつできていてもおかしくはないから。

 

 

 なんと静香(しずか)ちゃんに先を越され、毎日妊娠検査薬を使っていた彼女は、父の日にめちゃくちゃにされたためか、おめでただったそう。くそう。

 

 

 今のところほかに検査薬を使っている子はいないのでまだわからないけれど、そろそろ(いずみ)先輩含め大人組はできてそう。

 

 

「もーそのせいで彼氏ともいちゃいちゃできないでよー、悔しいわあたしゃ。休み合わないのー、どうしたらいいー、広子ちゃーん」

 

 

 しなだれかかれおおよしよしと撫でてあげる。三交代制の工場勤務の聡里ちゃんと、新聞記者という彼氏さんとではなかなか休みが重ならないのだそうだ。

 

 

「んーでもそれ、聡里ちゃんのことだから前日に聞いたりしてるでしょ? 明日休みなのどう、飲まない? とか」

 

 

「え、そりゃそうでしょ」

 

 

「なに言っているの、急に予定聞いたって空いているわけないじゃない。休みだとしても先に予定入っているかもしれないでしょう。私は新聞記者さんの都合はよく知らないけれど、もうお互い社会人なら、ある程度先の予定考えて聞いておくものでしょう」

 

 

「……そういうもん?」

 

 

「そういうもん。そっちのがお互い都合つくでしょ。聡里ちゃん学生時代の癖残ってる。それもいいけど、とにかくお休みを合わせたいなら来月のスケジュール教えて、くらい先だって聞いておいた方がいいよ」

 

 

 お互い二十三、聡里ちゃんは私と違い大学を卒業後、現在の工場に努めてまだ二年目。まだまだ大学時代の遊びまくった経験が残っているようだった。

 

 

「あちゃー……うちの彼氏はね、そういうの言ってくれないのよね。寡黙っていうか。ごめん、明日は仕事だ、だけなの。記者なのにねー。うーんこれはコミュニケーション不足ってやつね。帰ったらちゅっちゅしよう」

 

 

「そうしなさいそうしなさい。自慢じゃあないけど、私ちゅっちゅちゅっちゅいっぱいいっぱいだから」

 

 

「なにっ。ちゅっちゅちゅっちゅいっぱいいっぱいうふんあはんだと? 許せぬ、ここはおごるのだ」

 

 

 また口調が砕ける。私はおごらぬ、いやおごれと、お互いがぐいぐい迫り合った。

 

 

「そういう広子ちゃんは相手とよく連絡取り合って休み合わせてんの?」

 

 

「うん。というか、うちはお休み確実に週二で固定だからね、病院だけど。合わせやすいよ。最近こっちも有給とれるようになってきたし、なんなら私、相手の家によく泊まるしさ」

 

 

「え、それじゃあお父さん一人じゃない? 大丈夫?」

 

 

「お父さんね、最近籍は入れないけど再婚相手と出会ったの。特にその人が来る日は私が気を利かせて外へお泊まりしてる。もう事実婚みたいなもんなんだから婚姻届けが泣いてるよ、って言ってもいやそれはもう年だから、ってしないの」

 

 

「へぇー……そっかお泊まりか、その手があったか。ふむ、そうして? 相手の家に泊まっていくうちに?」

 

 

「あれよあれよと私物が相手の家に置かれだし?」

 

 

「趣味の本だの音楽CD映画DVDが置かれ?」

 

 

「パジャマが置かれ?」

 

 

「歯ブラシが置かれ?」

 

 

「下着まで置かれて完成、と」

 

 

「完璧な計画ね」

 

 

 私がのってあげて締めの言葉を言っても、聡里ちゃんは苦い顔。

 

 

「不可能、ってことに目を瞑ればねー」

 

 

「あら、どうして?」

 

 

「どうしてもこうしてもブンヤは家にいないことのほうが多いんだから、こっちから自宅を侵食するのは効果が薄いわよ。といってこっちも家事全般を引き受けられるほどスキルもないし、そもそも時間もないし、お泊まり自体効果薄だろうなー。同棲もしたところで、ってかーんじ」

 

 

「あらあら。本当大変ねぇ」

 

 

「そーなの。大変なの。そのくせ付き合いは結構長くなってきちゃったから、なんかさ、そんな不安もなくって、このままいつか自然と結婚してそうな雰囲気」

 

 

 なるほど、そういうのもあるのか。ありだわ。

 

 

「でもやっぱりもっといちゃいちゃしたーい! したいしたしたーい!」

 

 

 脚をばたばたされはしたないと押さえる。

 

 

「わかったわかった。相手さん寡黙なら押せ押せって押しに弱かったりしないの? 休み教えろ、その日一日あたしにとっとけ! ってさ」

 

 

「なるほどそうしよう」

 

 

 酔いの勢いとは恐ろしく、あっという間に電話でそう告げるととんとん拍子にわかったと相手さんも受けてくれたようだった。また急ににまぁーっと笑う聡里ちゃんは日本酒をおかわりしてしまった。これで止めよう。まだまだ何軒も回るんだから。

 

 

「言ってみるもんね。あいつもどこかうれしそーだったし。えへへ」

 

 

「そのいい気分のまま里帰りで実家に笑顔振り撒いときなさいよ。いいことあるかも」

 

 

「せやな、せやせや。うふふ」

 

 

 いい気分になる彼女とその後もしばしおいしいイカを堪能し、舌鼓を打ちのんびりと過ごす。

 

 

 お仕事も順調にお休みをとれ出し、プライベートは憲邇さんといちゃいちゃらぶらぶ最高潮。こうしてパートナーといない日ですら友人と贅沢に過ごせ、こんなに充実していていいのかしらと思うものの、でもおいしいご飯は聡里ちゃんといるときの特権だ、楽しまなきゃ。

 

 

 父のこともお世話をしないといけなかった時期も終わりを迎え、あとは子供のことなど気にせず悠々自適に暮らしていてほしい。

 

 

 押しに弱い、言うことは言う、か。もぐもぐと二軒目のタイ料理屋さんでロティ・マタバを頬張りながら、憲邇さんにも、父にももう少し積極的であってもいいかと思う、午後なのでした。

 

 

「このロティっての、おっいしー!」

 

 

「おいしいねぇ、ふふふ」

 

 

 ああ食道楽。最高だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 主とはいえ、絶対服従は憲邇さんも面白くはない。それはもうわかっている。

 

 

 慎み深くあるのも一興、なれど一言、やんわりと妾女房のほうから言づけを送るくらいは、してもいいと思う。

 

 

 体力づくりをしたいと千歳(ちとせ)ちゃん可奈(かな)ちゃんが言い出し、みんなで同調してある子は個人でウォーキングから、ある子は憲邇さんと一緒に早朝ジョギングをし始め、私も深町(ふかまち)宅へ泊まった日はよく同行するようになった。

 

 

 そこで十一月に入り、とみに忙しくなった憲邇さんに手伝えることはないか、聞いてみた。

 

 

 早朝のスポーツウェアがと日光で眩しく光る憲邇さんは、うーんと唸りながらメイド長謹製のデザートを頬張る。

 

 

「確かに、今月から急に忙しくなったから、手伝ってほしいと思うことはあるよ。けど、そうだなぁ……具体的になにか、うーん……」

 

 

 考えながら食べたせいでほっぺにチョコがついてしまった憲邇さんに、その、申しわけなくむらっとしてしまう。母性が、母性がっ。スイッチでも入りそう。しあわせそうに拭いてあげる良子(りょうこ)さんがなんとも羨ましい。

 

 

「ありがとう、思いついたらその都度言うよ。今パッとは出ないからさ。嬉しいね、最近は君たちのほうからぐいと来てくれる。頼もしいよ」

 

 

 そっと頬をなぞられ、ぶるぶる震えてしまった。ああ運動後に冷えてはいけないわと、しっかりと汗をまごまごしつつ拭く。

 

 

「なんかむらむらしてきたぞ。ん? もう月末だな……今月なんにもしてないや。いやでもこれは準備が……」

 

 

 急にぶつぶつ言い出した憲邇さんに不穏なものを感じたのもつかの間、すぐにそれは現実のものとなった。

 

 

「うん、決めた! 明日楽しみにしていなさい、広子。あと良子もだね」

 

 

「……お、お手柔らかに……」

 

 

 別につーかーではないけれど、さすがにもう予想がつく。良子さんと二人、戦々恐々としながらもどこか期待に胸(お互い大きな)膨らませていたの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日早朝。今朝のジョギングメンバーは憲邇さん、私広子、加えて良子さん、春花(はるか)さん、柚香里(ゆかり)さん、そして可奈ちゃんがいた。可奈ちゃんは以前言っていたジョギング参加だとわかっているから終始恥ずかしそうにしていたけれど、それはほか、みんな同じ。

 

 

 なぜなら──

 

 

「ああ写真撮るのやっぱり楽しいなぁ。自慢だ。そうだこの際だしいっそ全員でホームページ作ればいいんじゃあなかろうか。ちびっ子は別にしてね。うんそうしよう。ばらばらにでなく、主の愛奴隷衆って形で、一つのホームページに全員のリスト作るとかさ、愉しそうだ」

 

 

 フラッシュが焚かれるたびに身をよじる五人。柚香里さんはすでに一部分のみ完全にずぶ濡れ、ド変態さんだった。

 

 

「そ、それはさすがに……許してはもらえませんでしょうか」

 

 

 震えながら良子さんが言うと、豊かなバストが風に泳いだ。憲邇さんは一瞬カメラを持つ手を止めて考え込む風だったがすぐに反論する。

 

 

「じゃあ今日のジョギングで達しなかった子は免除してやろう。まだホームページ持ってない面々も個々に条件付きにしてやるか」

 

 

「ああ、そんな……いや……」

 

 

 泣きそうな柚香里さんの言葉が、どちらの意味なのか。わかるようで、わからなかった。

 

 

 裸より恥ずかしい、ボディペイント姿なのだから。肌に直接スポーツウェアをペイントされたままでジョギングに走らされるのだから。露出狂の色情魔、柚香里さんは果たしてどのような意味合いなのか。

 

 

 私たちは。どのような意味合いでいやと顔に書いたのか。わからないわ。

 

 

「よし、そろそろ出るか。ハロウィンのときにはすでに噂だって話だけど、一か月で鎮静化していたらいいなぁ」

 

 

 どうでしょう。していますかねぇ。

 

 

 誰に会うのかしら……そう、思えば恥ずかしくってしょうがない。

 

 

 けれど、玄関の外に出される。ああもう、最初は良子さんと柚香里さんだけだったはずなのに、どうして、私のお胸がおっきいからって……

 

 

 全裸ボディペイントでジョギングが、始まった。

 

 

 背中で纏めた髪が左右に揺れる。同時に、露出した紺色の乳房も、左右に揺れる。隠すものから解放され、ぶるん、ぶるんっ。いやらしく、あまりにもわかりやすく。

 

 

「んっ……はぁっ、はぁっ」

 

 

 前を歩く春花さんのキュッと引き締まった美しい桃尻も、左右に弾む。色気を振り撒き、艶美なお尻ふりふり。たとえ紺色に飾られていたとしても、男を誘うフェロモンがむんむんに薫っていた。

 

 

 憲邇さんは前で巨乳群を堪能したり、横に回り背後に回り、並走しながら五人を舐め回すように見つめてくれていた。

 

 

 その視線が、あるから。走って行けるの。

 

 

「みんな綺麗だよ……たぷんたぷん大きな胸もお尻も揺れ放題で最高だ……いいよ、ほら速度落とさないで、頑張ろう?」

 

 

 いやらしい甘いテノール。楽しげな声色がすべて。私たちは恥じらいながらも、充足していた。隠しながら走らない。前も後ろも、丸見えにしたままで走るの。着地のたびにそれぞれが前後左右、さまざまな方向へバストを弾けさせ、暴れさせる。男心をくすぐるのか、それはあまりにいやらしくて恥ずかしくて、堪らないの。

 

 

 でも──

 

 

 家々の間を走る間は誰にも会わなかった。けれど憲邇さんはどんどん人の通るほうへと向かっていく。まずは国道に繋がる近所の車どおりの多いところ。そこに沿い、同じようなジョギングや散歩、あるいは通学する生徒が多く通る河川敷へと、向かう。

 

 

 といっても田舎だし、早朝だしでそんなに会わないはず……

 

 

 そんなわけ、なかった。

 

 

 車道の脇道から河川敷へ入っていくと、ジョギングをしている人が向こうから走ってくるのがもうそこでわかってしまう。川沿いの土手は絶好のジョギングコースらしく、何人も何組も、流れの早い河川と競うように走っていた。

 

 

 それなのに憲邇さんの足は止まらない。私たちもはぐれてはそれこそ卑猥な格好を晒すのみ、ついていくしかなかった。

 

 

 迫りくる人との距離が狭まっていく。女性だ。あっという間に目の前……その時点ですでに、柚香里さんは遅れて後方、ふらふらとふしだらな面を晒け出しながら遠目でもわかるほどぴんとニップルを屹立させていた。

 

 

 感じているのが、ありありとわかる。緑がかった黒髪が優雅になびき、一流モデルと見紛うほどの細くしなやかなボディライン。ポーズをとれば目を奪う完璧な彫像とでもすぐに化せる、それでいて幼さの可憐を残した絶世の美女(というか美少女)。なのに、今や『おんな』の貌をしていた。

 

 

 恥ずかしそうに感じたよがり顔。これほど細くありながらふっくらと実った双房としとどに濡れしきった陰部は、薄膜一枚のみで覆われ完全に透けてお披露目されている。シミ一つない(羨ましいっ)キメ細やかな肌が汗で輝いて艶めかしい。そして走るたびにそれらが飛ぶように弾けてる。きっとそれは、気持ちよくて感じるから。

 

 

 お辞儀をして向こうから女性が走り抜ける。こちらも返し、どうやら気づかれなかった模様。

 

 

「あんっ……ま、待ってぇ」

 

 

 振り返れば柚香里さんは後方でがくがくと膝を震わせ、人が過ぎただけで達したよう。風さえも、空気さえも愛撫に等しいと、燃えるように色欲まみれのブラウンが泣いていた。

 

 

「柚香里は負けだね。置いていくよ?」

 

 

「や、いや、脚が動かないの、走れない」

 

 

 ホームページはいいのか、このまま感じっぱなしでいるほうがつらいのか、柚香里さんは甘ったるい声でどうにかしてほしいと迫った。

 

 

「汗でなかなか溶けないはずだから大丈夫だよ。頑張ろう?」

 

 

 説得の間にもまた一人、通り過ぎていった。柚香里さんは見られたと、一瞬でもと目線が透過しただけでいやいやと身をよじっていた。

 

 

「じゃあここで一回性欲発散して、白いの垂らしながら走るかい?」

 

 

「……いじわる」

 

 

 非道な言葉には逆らえない、悲しい姉の性。必死に笑う膝を整え、ようやくと前へ進み始めた。

 

 

 集団で走ると、人を隠れ蓑にしようとする子が出てくる。もちろん憲邇さんは許さず、何度も私の背中に隠れようとした春花さんを引っぱりだしていた。

 

 

「おはようございます」

 

 

 いい汗を流す人が通るたび、全員が身を硬くする。今のところ女性ばかり、それも四十代五十代ばかりで、主に先頭の憲邇さんを見ていたので気づかれなかった様子。

 

 

 けれどとうとう男性がやってきた。ウォーキングをする、六十代のおじいちゃん。女たちの先頭を走る良子さんの美貌にまずは目を奪われ、そして……

 

 

「あっ」

 

 

 気づいた顔が静止した。良子さんはぷるんぷるんおっぱいを揺らしながら通り過ぎていき、そうして人とすれ違うたびに速度を落とす卑劣な憲邇さんを急かし続ける。

 

 

 見られたね──そう、海の瞳は教えるの。いじわるなの。

 

 

 気づかれたね、と。教えられるまでもなく、男性とすれ違うたびにボディペイントだと見抜かれていた。視線が好色にいけないところへ集中され、全員が恥ずかしくてしょうがなくなるの。

 

 

 可奈ちゃんが急にダッシュし、汚すのも構わずそのまま憲邇さんの背中へ抱きついてしまった。もう恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがなく、憲邇さん成分を吸収しないと我慢できないと若さゆえの爆発。さすがの憲邇さんも足が止まり苦笑いしながらよしよしとあやしていた。

 

 

 瑞々しい肢体が、ふっくらお尻がふりふりと左右に踊る。もう放したくないと、というかもう帰りましょうと意思表示するのがぷりぷりするお尻からでもわかるけれど、さすがにそうは問屋が卸さない。

 

 

「ダメだよ、まだまだ走るから」

 

 

 ぴんっと桃色ニップルを爪弾かれ、ぶるっと震える可奈ちゃん。それは歓喜か、それとも恐怖か……いくらか剥がれ落ち最早ペイントと丸わかりの上半身をくなくな揺すっても、触っていいですよとたぷたぷ巨乳を持ち上げてみせてもノーだった。

 

 

「ぐすん。えっちっ、バカッ」

 

 

「おいしそうに食べてくれるお前もかわいいけれど、それ以上に今の綺麗なお前が見たいんだ、ダメか?」

 

 

 騙されちゃあいけませんよ! そんな女たらしでみょうちきりんな台詞にっ。ああでも哀れ可奈ちゃんは女子高生、そんな言霊に勝てるはずもなく。あっという間に幼い瞳をめろめろにしてしまって、いやんえっちと腰を振りながら頷いてしまう。

 

 

「しょうがない人ですねぇ、もうっ」

 

 

 なら、見ていいですよとばかりまた巨乳を下から持ち上げ強調する可奈ちゃん。憲邇さんもじっくりと眺め、全身を見下ろし、ぞくぞくするのか撫で放題。可奈ちゃんしあわせそう、いいなぁ……

 

 

「あ、あの、こんなに遠出をしたら帰る時刻が遅くなりますわ」

 

 

 立ち止まりいくらか時間も経つと、恐る恐る春花さんが進言してきた。麗しのお嬢様はうるうるとずっとべそをかきっぱなしで、恥にどうにかなりそうと、愛しご主人様が見てくれるから頑張れると、常に無言で全身から叫んでいた。

 

 

 もうすぐ不惑の、熟した肢体。完成された美を体現する、小柄なのに凹凸のはっきりとした、むっちりと表現するのが相応しい肉体。男を知らず過ごしたはずの女体は紺のいたずらを受けてもあまりにも柔らかそうに膨らみ、起立して身じろぎするだけで色気抜群、極上のヌード。

 

 

「大丈夫、ゴールに車用意してあるから」

 

 

 準備が必要とはこのこと。はぁ、まったく。

 

 

「さ、左様ですか。あとどれくらいですの?」

 

 

「もうすぐだよ。よし、走ろう。ほら、おいで」

 

 

 いっぱい見られようね──残酷な優しい瞳は穏やかに笑う。私たちはどうやってもやはり屈してしまい、従順についていくの。

 

 

「はっ、はっ」

 

 

「はぁっ……ああ、いや、いや……」

 

 

「あん……んじぃ……あっ、あっ」

 

 

 私たちは走った。気づきながらすれ違う大勢の人の前を。そろそろと登校する学生も出始める時間。老若男女問わず、

 

 

 見られた。

 

 

 ボディペイントの裸を。恥ずかしいボディラインを余すとこなく。揺れる、おっぱいを、お尻を残さず。

 

 

 憲邇さんの露出調教の成果ははっきりと出ていた。恥ずかしいとだけ思うのに、こなせるのだ。不思議だった。でもそれはやっぱり、愛の力。

 

 

 愛されていると、わかるから。できるの。

 

 

 やがて河川敷を離れ、最寄りの公園に向かった。そこで小休止するも、まだゴールではないよう。汗を拭い、水飲み場を利用して一度リフレッシュする。幸いほかに誰もいなかった(小鳥くらい)。

 

 

 カメラ小僧さんに遊ばれるのはもう慣れてきたようで、まったく慣れない。外で、証拠を残されるのだ。恥ずかしくないはずがない。みんな頬染め、くなくな、もじもじ。おっぱいがまた、あん……

 

 

 あ。尖ってるのは柚香里さんだけでなく、可奈ちゃんもだった。さっきのがよほどうれしかったのか、若いから開発が進むのが早いのか。はてさて。自分のは見ない。

 

 

「柚香里はもちろん負けでホームページやるけど、可奈もさっき粗相したから負けにするね。あとは春花と良子と広子だね。頑張るなぁ。うーんみんなの作りたいぞ。どうにかして……」

 

 

「あ、あの」ずるい私はこういうことを言っちゃうの。押せ、なの。「私のは高級にしましょうっ。有料会員制で、入会金年会費とか、高くして、その代わり質の高いサービスって、差別化を図ればよいかと」

 

 

「おっ、なるほど。ナイスアイディア。そうしよう」

 

 

 そうすればまだ見られるのは少ないわ。きっといじわるな憲邇さんには負けるだろうし、そのときの保険、かけとかなきゃ。

 

 

「でもそうすると、量も必要だから大変だね、広子。頑張ろうね?」かしゃっ。

 

 

「……」やだ、もう。えっち。しまったわ。藪蛇だわ。どうしよう。あ、あ、柚香里さん違います、自分からそんな、いやらしくなんてっ。

 

 

「ふむ、しかしそれは面白いね。確かに差別化か。主の愛奴隷衆として、個々人の個性を出す、と。なるほど。では春花辺りも高級娼婦然とさせてみようか」

 

 

「いやですわ、ああ恥ずかしい……」

 

 

「成果次第でお前の望み、叶えてやるよ。これまでののどかな夫婦の営みがいいというのなら、ホームページの評判でそうしてやってもいい、どうだ?」

 

 

「またそんな、お上手な……悪いお人」

 

 

 なじりもお上品な春花さんだけは、まんざらでもないという風は一切なかった。いついつまでも、恥じらいが最高点なのだ

 

 

「良子はどうする、やはりメイドを全面に押し出すかい?」

 

 

「そ、それより先を急ぎましょう。いつ人が来るかもしれません」

 

 

 誤魔化すのがうまいメイド長、さすがに付き合いも長い。話すのは自宅でゆっくりとすれば、よりよいものになると付け加え、納得させていた。

 

 

「そうだね、確かに長居するとみなに迷惑だな。ところで、今朝は早起きしたから目覚めの奉仕がなかったんだ。すぐ終わるから」

 

 

 言うが早いかさっと全裸になった憲邇さんは良子さんの背後を取り、メイド長らしく機敏に察知した彼女がすぐに陰唇を広げるとそこへ挿入した。

 

 

 おっきくなっちゃって、大変だったんだ。私たちはすぐ人垣を作りカバーをする。

 

 

「あっ、ああっ……ご主人様……すみません至らず、私がしておくべきでした、お詫びにどうぞいくらでもお使いくださいまし、あんっ」

 

 

 抽送は激しく、良子さんのことなど微塵も考えない勝手なものだった。だからこそ良子さんは濡れて、あっさりと結合を果たし腰遣いによがる。気持ちよさそうに顔を歪めるメイド長はうっとりと、恍惚に頬染め場所を弁えて恥じらいながら乱れた。

 

 

 パンパンパンパン、激しく乳房が脈打つほど打ちつけられ、憲邇さんだけが気持ちよくなる素敵な愛戯が公園で行われた。ふと人が通りすがるも、園内には気づかず行ってしまう。けれど良子さんはやはり恥ずかしく泣いて、声を抑えた。

 

 

「んっ……あん、ごしゅ、あっ、あっ……好き、んっ、んぅっ」

 

 

「ああいい穴だ、気持ちいいぞ。ほら孕めっ」

 

 

 ナカダシが行われた。良子さんは絶頂に至り、全身を震わせる。憲邇さんが気持ちよさそうに腰を打ちつけているので私たちもしあわせに見守るの。

 

 

 ずるっと陰茎が抜ける。とろとろと愛蜜塗れのおいしそうな、い、いいえっ、違う違う、いやらしい男性器、だわ。あん、どうして見ちゃうのかしら。ちら、ちら。

 

 

「お使いいただき誠にありがとうございました。あん、どこへお行きですか? メイドですもの、お掃除いたします」

 

 

 すぐにお掃除フェラに移行しようとしたふらふらの良子さんを置いて憲邇さんはまた勃起を強くしてから、ぎゅっと目を瞑りっぱなしの春花さんを四つんばいにさせまた犯し始めた。一度では足りぬとばかり、また強く、ひたすらに自分勝手な、妾女房思いの素敵なセックス。

 

 

「あぁ……んっ……ふぁっ、あ、ぁ……」

 

 

「ああこっちの穴もいい。極上だ。春花は数の子天上と俵締めかな? いいぞ、孕ませたくてたまらん。いいね、春花も露出で濡れるようになったんだ?」

 

 

「あ、汗ですわ……ああそんな、すぐお射精しに、ふぁぁっ」

 

 

 またすぐ生ナカダシが行われた。妾女房全員生ナカダシ尽くしの幸福に、春花さんも大人のイキ顔を見せつける……もじ、もじ。もぞ、もぞ。

 

 

 満足いくまでの射精を終えると、どっと倒れこむ春花さんを一度抱え、ベンチに横たえてからまたそのまま私のところへ直進。

 

 

 私だって、メイド長や第一夫人ほどではないにしろ、気が利くわ。すでにベンチに手をつき、お尻を掲げふりふりと左右へ躍らせる。ぐっと高く掲げた臀部を、がっしりと指が食い込むほどつかまれ一気に最奥まで挿入が果たされた。

 

 

「や……っ」

 

 

 息が止まるほどの、快感。ああ私も、露出で濡れていたのかしら、なんでこんなあっさり……うぅん違うわ、わかりきってる。愛する人に瞳で犯され続け、濡れちゃったの。

 

 

 気持ちいいの。露出が、ではなく、愛する人の調教が。

 

 

「この穴でちょうどかな、よし。いい子を孕めよ、孕むまで何度でも犯してやるから」

 

 

「はい、嬉しいです、あんっ……憲邇さん、大好きっ、や、やぁっ」

 

 

 三度目の吐精。どくどくと注がれる濃厚な精液は私を女から母へと昇華させてくれるであろう、大切なもの。逃さぬようきゅっと下腹部に力を込め、飲みこんでいく。

 

 

 気持ちいい、いい、いいの……しあわせ……いつだって何度だって、生ナカダシがいいの……あん……

 

 

 ずぽっと抜けたらたらと欲液塗れの大切な男性器を、犯してもらった三人で共同お掃除フェラをする。ピンク色の舌先が蠢き、陰茎にヘビが巻きつくようにまとわりつく。鼻先を繊毛が掠めるのも気にせずあまりにもおいしい精子を我先にと舐めとる様はまさに主冥利に尽きるのか、撫で放題をくれたの。

 

 

 まるで道具のように扱われ、性処理をされる。愛奴として、これ以上ない誉れだわ。うふふ。

 

 

「さあ行こうか」

 

 

 休む間もなく、あっという間に服を着終えた憲邇さんがまたリードする。愛奴隷たちはうっとりとその背中に見惚れながら、三歩後ろの距離感を保ちつつまた走り、ボディペイントかつセックス直後の裸体を揺らした。

 

 

 あん、漏れちゃう、えっち……ああでも、見てもらいたい、かも……け、憲邇さんにだけ、あん、やだ、ほんと漏れ、ちゃう……恥ずかしいっ……

 

 

「あぁん、お、お待ちに、あん、恥ずかしい、ひっ、ううっ、深町様ぁ、あ、ぁ──」

 

 

「ご主人様、いつも素敵でメイド冥利に尽き、あ、あ、んっ……つきます……これからも一生ついていきます、から、はぁ、ま、待って、あ、あ、やだ、ん──」

 

 

「はっ、はっ……好き……こ、こんにちは……見られ……憲邇さん……ん……や、や……あんっ──」

 

 

 どろどろは言うことを聞かない。三人ともいけないお漏らしをしながら、それでも走らされた。様子のおかしい女五人組、町中を走れば注目の的。揺れる乳房が隠れないままに、見られ続けた。お尻がキュッと力を込め、引き締まったえくぼを作りながら左右にたわむところも、見られ続けた。

 

 

「おい見ろよ、めっちゃ揺れてる。あれノーブラだぞ、ていうか裸かよ」

 

 

AVAV、いや例の痴女連中だ、やべー追っかけようかな」

 

 

 実際ついてくる男の人までいた。憲邇さんが微笑むと退散したけれど、それまでにも好奇の視線の矢が、いやらしく刺さり、感じさせる。

 

 

 下着がないとこんなに揺れるのか、と、裸より恥ずかしいボディペイントでの、羞恥恥辱のジョギングは続いた……

 

 

「残り三人もイッたからホームページ作るように、いいね?」

 

 

「……はぁい♥」

 

 

 目も眩む、快楽だった。露出調教生ナカダシつき、しあわせ……えへへ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十七の乙女が外出するには深い時間。けれど十一月三十日月曜日はお休みではなく、どうしてもこんな時間になってしまう。

 

 

 駅までの道のり。電灯だけでなく、通りはコンビニやファミレスなどの明かりでしっかりと照らされ、夜を遠くへ押しやってくれていた。

 

 

 光に照らされ……自分の姿がしっかりと映し出される。陰影が描きこまれ、体のラインがくっきりと表現される。

 

 

「おい、見ろよあれ、すっげぇ美人……」

 

 

「めっちゃかわいい」「わぁお……」

 

 

 どうやら自分のスタイルがよく、見目も麗しいほうだとは、大好きな人にも言われる。こうして外を歩けば、周りの人もほめてくれるし、それはうれしいの。

 

 

 でも……こうして肌を見せつけてほかの男の人に自慢するみたいなことが好きだなんて。あたしはなんて人を好きになってしまったんだろう。

 

 

 一歩歩くたびにブラのないおっぱいがぶるんぶるんする。腰回りも妙にくねって歩いてしまうし、つられるようにお尻もふりふり、ぷりぷりってダンスでもしているよう。もちろん全身まっかっかだし、早くお洋服が着たい。

 

 

 素肌に直接、全身網タイツを着ただけで外をお散歩だなんて。恥ずかしすぎる。履き慣れないヒールがよく似合うよだなんて、素敵な低音で言われたって許せな……うぅん、許せちゃう。

 

 

 大好きだから。

 

 

 桃色乳首が細かな網目からちょこんと自己主張をし出した。黒色の網タイツと同じ色をした局部もまた、いけない汗がにじみ出す。

 

 

 教え込まれた。露出の悦び。女としてのしあわせ。体がもう、覚えてしまっている。

 

 

「あっ、ん……やぁ……」

 

 

 隠したい。うずくまりたい。けれど近くから見守る、大好きな人がいるから。その人に喜んでもらいたくって、笑ってもらいたくて、そばにいてほしくて。まっすぐ前を向くの。

 

 

 駅から降りてくる人、駅に向かう人たち、大勢に見られながら。あたしは歩いて行った。あまりにも恥ずかしい羞恥露出散歩……頭がどんどん熱くなる。はぁはぁと息が荒く、頬が朱に染まる。色めき立つ視線の波に揉まれ、ちくちくと痛く甘痒く、どこか気持ちいい。

 

 

 網タイツ越しにおっぱいを見られてる。お尻を見られてる。顔も見られてる……けれども、正面切ってあそこを見る人はほとんどいなく、あたしはどうしてかそこだけもどかしい思いをしていた。

 

 

 やがて駅の入り口が見えてくる。振り返り本当に構内に入っていくのか、電車に乗ってしまうのかと瞳で訊ねても、答えは変わらなかった。

 

 

 汗がすごい。冬なのに緊張と興奮で自分が自分でないみたい(特におっぱい)。ヒールで地面を踏みしめるたび、なにかいけないものを押しつぶして進んでいく気がして、どうにかなりそう。

 

 

 どうも地元は田舎らしく、この駅の改札は未だ自動ではなく駅員さんが手動で切符を切っていた。はぁ、はぁと荒い息のまま、目的地への切符を購入し、駅員さんに提示する。

 

 

 当然ぎょっとされる。裸に網タイツだけの十七歳が突然やってきたのだ。あたしは童顔ともよく言われるため、驚きも強く通報されやしないかと心配だったが、あとから来る大好きな人がなにか説明したのか、騒ぎにはならなかった。

 

 

 向かいのホームまで、構内を歩き、階段を上り下りしなければならない。胸が高鳴る……もじもじと、太ももをこすり合わせてしまう。

 

 

 大好きな人を呼ぶ。答えてくれた年上の人はにっこりと笑い、肩に手を置いて語りかけてくれた。

 

 

 きちんとできたらなんでも一つ、言うことを聞いてくれる──その約束を果たすからともう一度言われ、ぎゅっと唇を噛み、手を握って(汗だくだ)、歩き出した。

 

 

 陸橋をまずは上がっていく。かつ、こつと階段を上がるたび、下から見上げる視線が強まっていく。駅に入ったときから、あとをつけてきた人や、構内にいた人があたしを見つめていた。やっぱり自分は注目を集める容姿をしているみたい。好きな人にだけそう思われたくとも、現実なかなかそうはいかないよう。

 

 

 できるだけ堂々としているつもりが、階段を一度踏み外しかけ、ヒールの難しさを感じる。これでは早く移動はできず、常に周囲の目線にさらされる。それも狙いと、わかっていての調教だと気づくのに少しかかった。

 

 

 でもそれがいい。そのおかげであたしは今、とっても気持ちが昂ってる。

 

 

 多分これ、気持ちいい、だ。気持ちいいんだ、あたし……

 

 

 すごい顔、してる。

 

 

 陸橋を渡り、ホームに降り立つ。電車を待つ人は見当たらず、ここから移動する人はいないみたい。けれど田舎のほうだからこそ、この駅で降りる人は多いはずだった。

 

 

 腕時計で確認をしようとして、残念ながら今の網タイツには着けていないことに気づく。後ろから降りてきた大好きな人に時間を尋ねると、次の電車の到着まで三分もないそうだ。

 

 

 幸いホームに人はいない。陸橋を渡ってまで見に来る人もいない。誰にも見られて──

 

 

 いた。人があたしを、見ていた。

 

 

 改札口からこのホームが見えてしまう、小さな駅。線路こそ四本、ホームも三つあるけれど、待合室も小さな売店と同じ一室に詰め込まれ狭く、駅自体はとても立派な建物とは言えなかった。

 

 

 そのためか、ホームに立つ人は駅の外からでも見ようと思えば見えてしまうし、今のように改札口手前にある切符売り場や時刻表を眺めるふりをすれば、いくらでもホームの様子は見えてしまう。それはともすれば長所だろうけれど……

 

 

 今のあたしには、恥による死刑宣告のようなものだった。

 

 

 たった三分が、あまりにも長い──

 

 

「……んっ……」

 

 

 ここまで我慢してきたものの、思わず手が局部へ伸びた。するといけない海の囁きが惑わせにくる。

 

 

「隠しちゃダメだよ」

 

 

「んー……」

 

 

 首を振ってもダメだった。もう帰りたいと訴えても却下され、きちんと起立するよう促される。仕方なくその場に立ち尽くして時間が過ぎるのを待った。

 

 

 恥ずかしい。

 

 

 自分の体が熟れてだんだん赤く染まっていくと、ようやく電車がやってきた。甲高い音を立てて停車すると、降り口からやはり数人が降車してきた。

 

 

 ぎょっとして立ち止まる、人たち。全員が帰宅するサラリーマンか、スーツを着た壮年の男性だった。車掌さんも驚いている。

 

 

 泣き出したいくらい恥ずかしくってしょうがないのに、どうしてかあたしは逃げ出せもせず、隠すこともせず、ただ立ち尽くし困ったように眉を寄せて微笑むだけだった……

 

 

 十一月も終わる、寒気にぴんと乳首とその周囲が勃つ。もぞもぞとこすり合わせたお股の様子もおかしく、なぜか水気を含んでいた。またその動きのせいでヒップラインが泳ぐ。こもる吐息、色づく頬、潤む瞳。すべてが、あたしをただの露出狂に見せかけていた。違うのに、この男の人たちにはそうとしか映っていないよう。顔に書いてある。

 

 

「乗らないと」

 

 

 とんと背中を押され、ようやく動き出せた。異常に重たい足を動かして、車内に突入していく。

 

 

 誰も乗っていないことを祈ったけれど、無情にも乗客は二人、いた。一人は遅くまで部活か、男子学生。もう一人はどこかで見た覚えのある、二十代半ばの青年だった。

 

 

 よりにもよって二人とも男性……しかもボックスでなく普通の座席に座っており、乗り込んできたあたしを見て目を見開いていた。

 

 

「どちらかの正面に座ってあげなさい」

 

 

 ポニーテールで遊びながら大好きな人はひどいことを言う。でも従ってしまうあたしは恐る恐る足を踏み出して、すぐに視線を逸らしてくれた学生の真正面に座った。

 

 

 電車が動き出す。彼らの目的地がこの先であることはわかっている。いつ降りるのか、次の駅で降りてくれるのか、知りたいことはたくさんある。いつ降ろしてくれるのか、隣に座った人に聞きたい。なのに緊張と興奮で息が荒くなる一方で、声を発することが難しくなっていた。

 

 

 なにをしなさいとも言われず、学生もぴくりとも動かず喋らず、ただがたんごとんと古い車両が揺れるだけ。次の駅まではわずか数分なのにまた、また長く、永劫に等しく……

 

 

 はぁ、はぁ。恥ずかしいよう。ただただ自分を晒すだけって、こんなに……どうにかなっちゃいそうだよう。助けてほしいよう。あぁんなのにどうして、体はびくびくしちゃうの あたしの体、えっちなの? やだ、いやだぁ……

 

 

「……あん」

 

 

 学生の体がびくっと跳ねた。あたしもまた思わず喘いじゃったせいで恥ずかしくってたまらない。穴掘って埋まってたい。どこか隠れて、それか隣の人にさらわれたい。

 

 

 ぐるぐるって、ぎゅうってされたい。背中から抱きしめてほしい。なでてほしい。今すぐ、あたしをいつもみたいにやさしく包みこんでほしい。

 

 

 おっぱいこんなにとんがって、あそこもこんなぐしょぐしょになってるんだから。

 

 

 不意に電車が止まった。隣駅に停車したみたい。すぐにそそくさと学生は降りて行ってしまった。

 

 

 ……あんなにちらちら見てくれてたんだから、かわいいくらい言ってほしかったなぁ……

 

 

 ハッとする。今なに考えてたの? やだ、やだもう。隣の人のせいだ。にまにましてこっち見下ろす大好きな人のせいだ。

 

 

「綺麗だよ、奈々穂」

 

 

「もう、お兄ちゃんのいじわる」

 

 

 あたしはぷんぷん怒っていた。けれどよしよしとあやすようになでられすぐににへらっと笑ってしまう。全身網タイツなのにそれをすぐ忘れちゃうの。弱いなぁ、この人のなでなで。はぁ。気持ちいよぅ。

 

 

「さて、じゃあ私はちょっとトイレでも行ってくるから、一人で待ってなさい、いいね?」

 

 

「あーん、そばにいてよぅ。帰ってくる? おいてきぼりしない?」

 

 

「しないしない。安心して。じゃあね」

 

 

 お兄ちゃんは去ってしまった。じっと見てる若い男の人にウインクして(男同士なのに)。するとその男の人はすぐにこちらを向いて、話しかけてきた。

 

 

「あの、君が連絡にあった子、だね?」

 

 

「れんらく?」

 

 

「君たちのリーダーである絵里さんから連絡もらったんだ、ほら」

 

 

 携帯電話の画面を見せられる。じいっと目を凝らしてみると、確かにこの電車にあたしが電車露出で乗るから、よければどうぞとあった。文末に絵里より、ともある。

 

 

 あ、思い出した。この人ハロウィンで絵里さんと知り合った人だ。連絡先交換してたんだっけ。さっきのウインク、お兄ちゃんも知ってたな。いじわるなんだから、もう。

 

 

 気づけばずいぶん距離が近い。あたしはすっと身を引いて、近いですと言った。

 

 

「ごめん。さっきの人が君の彼氏? こういうことをやらせてるんだね、まだそんなに若いのに」

 

 

 以前ならそうなの、奈々穂六歳なのにひどいよねぇ、と相槌を打っていたところだ。けれど今は違う。が、違うにしても恐らくこの人にはあたしは女子高生か女子中学生に見えているだろうから、そんなに遠くもないけど。

 

 

 あたしは、奈々穂はもう──

 

 

「と、ところで、いいかな? 彼も行っちゃったみたいだし、見てても」

 

 

「手、出さない? 触んない?」

 

 

「もちろんだよ、わかってる。俺、見てるほうがいいんだ」

 

 

 なんてちょうどいい人を見つけたの、絵里さんったら。困る。こんないやらしい、視姦に等しい目つきでじろじろ見られるなんて。

 

 

 気持ちよくなっちゃうもの。

 

 

「……ん……え、絵里さん、なにしたの? あなたに」

 

 

 あたしはわざと(じゃない、きっと違う)胸を下から押さえ、持ち上げるようにして身じろぎをしつつ言った。網タイツ越しにおっぱいが踊り、彼の視線が集中する。

 

 

「え? ああ、ほかの子と一緒にレズプレイしてくれたよ」

 

 

 そっか。絵里さんすごいや。あたしそんなことできない……

 

 

 恥ずかしさで頭がおかしくなったあたしは、とんでもないことを言った。

 

 

「じゃ、あん、じゃあ、あたしにはなにして、ほしい?」

 

 

「いいのか? 実はずっと君たちに言いたいことがあって。初めて会ったとき以来、見てて思ったんだ。露出にはまって、その、君たちは、君たちみたいな女の人は、見られている姿が一番、綺麗だって。だから……」

 

 

 これも以前ならわからなかっただろう。けれど今、彼がなにを言おうとしているのか、はっきりとわかる。あたしは微笑み、そう、笑って立ち上がった。

 

 

「わかった、いいよ。お兄ちゃんにも会いたいし」

 

 

 兄妹とわかると男の人は困惑したけど深く追及はしなかった。あたしはヒールを鳴らし、隣の車両へ移る。

 

 

 もっとほかの人に見られてほしい。この男の人が言うことはわかりすぎるくらいわかる。

 

 

 そしてあたしも……

 

 

 重い扉を開けるとまた別世界が広がっていた。三両編成の車両の真ん中は一番人が多く、五人も人が乗っていた。手前に座っていた若い女性があたしに気づくとさっと顔を伏せ、そそと奥の車両に駆け出して逃げこむ。

 

 

 残り四人。お兄ちゃんはいない。ボックスシートに座ったおばさん二人組はこちらに気づいておらず、奥の座席で眠っているおじいさんも目覚める気配がない。残りは目の前の座席に座り、驚愕と歓喜にこちらに釘付けになっている中年男性だった。

 

 

 またみられる……じゅんと、お腹の奥がうずいた。むずむず、する。お兄ちゃんのち〇ぽを妄想してぶんぶんと首を振った。同時に自分の柔らかい体が揺れ、おっぱいがぷるぷるするとさらに食い入る視線が刺さる。

 

 

「歩いて通り過ぎるので、いい?」

 

 

 背後にいた男の人も頷いてくれたので、そのまま中央を歩いて行った。こつ、こつとヒールがうるさく話す。ブラじゃあない網タイツはやっぱりおっぱいを震わせ、プリンみたいにさせちゃうの、なんて恥ずかしい……

 

 

「へへ、いい格好してんじゃん、姉ちゃん」

 

 

 かああっと恥を加速させられる。なじる声は一番嫌いで、一番耳から遠ざけたいのに、なぜかしっかりとキャッチしてしまっていた。

 

 

 ボックス席のおばさん方は幸いお喋りに夢中で気づかないでいてくれ、おじいさんも起きなかった。すぐに最後尾の車両へ移れそう。

 

 

 ……けれど。あたしはぐうぐうと寝息を立てるおじいさんの前で立ち止まった。男の人は不審がるもさっきの羞恥に揺れるあたしで満足していて、自分の股間に意識が強くいっていていつ出しちゃおうか悶々としてる。

 

 

「おじいちゃん……」

 

 

 お兄ちゃんせんせぇはきっと言う。だからそれをこなしてるだけなの。

 

 

「奈々穂のおっぱい、見ていいよぉ? おま〇こもいっぱい、見ていいからねぇ」

 

 

 おじいさんの目の前でかがみ、たぷんと乳房を持ち上げわざとぷにぷに揺らす。指をおへそからなぞり、下げ、じゅくじゅくと主を待つクレヴァスを掠める。

 

 

「ん、ふぅ……」

 

 

 爪弾かれる桃色乳首。キュッとつねられるお豆さん。ぴりっとした電気刺激にあたしは酔い、気持ちよくなっていくの。

 

 

 目の前で行われる情事にもまだ目を覚ましてくれない、大切なお客様のおじいさんにあたしはあられもない痴態を見せ続けた。いやらしくなじったおじさんがこちらにやってきたのにも気づきつつ、でも手を緩めない。

 

 

 網タイツのラインを自分でなぞると、官能の響きが背筋を通り声になる。くぐもった喘ぎがこぼれ、さらに瞳が色めき立つ。妖しい匂いは汗か自分の女の子の匂いか、いやらしい。たゆんと揺れる自分のDカップに指を沈め、揉みほぐすと夢みたいな心地よさ。こんなに柔らかく、こんなに気持ちいいのは、きっとお兄ちゃんがいじってくれていると錯覚するから。事実以前は気持ちいいのは桃色の付近ばっかりで、白いおっぱいを潰されてもあんまりだった。そう開発されたの。あたしおっぱいが性感帯なの。

 

 

「はぁん……起きないの? 見ていいのに、あん……」

 

 

 へんたいだ。自分で知らない人の前でストリップダンサーみたいなことしてる。おじさんと男の人がガン見しているのに、それがこんなにも恥ずかしいのに、できちゃうなんて。

 

 

「んっ……はぁ、はぁ……もう、行くね、ごめんね、起きないおじいちゃんが悪いんだよぉ……おま〇こ、とろとろなのに、ふふっ」

 

 

 あたしは立ち上がり、ふらふらと最後尾の車両へ入った。トイレがあったけれど中には誰もおらず、果たしてお兄ちゃんはそこにいた。

 

 

「やだ、なんでここまで来るのよ」

 

 

 先ほどの女性がまた立ち上がり、あたしとすれ違って中央車両へ戻っていった。

 

 

 また停車する。名残惜しそうにさっきのおじさんはここで降車した。乗りこむ人はいない。

 

 

 そしてこの車両にはお兄ちゃん以外に一人しかいなかった。奥の出口のすぐ横の座席で携帯を動かし続けている青年。こっちには目もくれていない、夢中だ。座席を仕切る壁によりかかっており、お兄ちゃんも反対側から壁によりかかっていた。

 

 

 お兄ちゃんの指が彼を指す。なんにも気づく様子はないから格好の相手だよ、と。自分と位置を入れ替わって、すぐ背後に人がいる状態で露出しなさい、と。わかるとあたしは頷いた。

 

 

 うるさいヒールでも彼は気づくことなく、あたしは壁越しに背中合わせになった。

 

 

 この、すぐ近くに人がいて、見られるかもしれないという危機感。先ほどあれだけ眠る人の前で乱れたくせに、今もそれ以上に鼓動が早まっている。

 

 

 この、どきどき感。教え込まれた、露出の妙。あたしは──

 

 

 笑ってた。

 

 

 その場でお兄ちゃんの携帯が撮影を行う。すぐ背後に人がいるのに網タイツ姿を晒す十七歳が記録に残る。またこれでいじられるんだ、お兄ちゃんに、ああ、想像しちゃう。

 

 

 綺麗だよ──唇の動きだけで感じちゃう。腰がくねくね、動くの。

 

 

 ジェスチャーで伝えられた指示を受け、あたしはまた自らおっぱいを揉みしだいた。網タイツ越しに四方八方へピンク色のとがりを動かす。ぶるんぶるんおっぱいを遊ばせると興奮で芯から熱くなってくる。指はそのままウエストラインをなぞり、すべすべと二の腕を遊んだり、太ももと戯れてみせた。そこもお兄ちゃんはいいみたい(ついでにまだついてきた男の人も)。

 

 

「……んっ……くふぅん……」

 

 

 バレないように声を潜めて、密やかな愛戯。あたしはだんだん、イッちゃいそうになってた。

 

 

 ジェスチャーが網タイツを破くよう指示する。どこをかなんて言わずとも、あたしはまずびりっとお尻の部分を破き、ぷりんとした桃尻を完全露出させる。

 

 

 そのまま乳首をくにくにと回すようにこねつつ、びりびりとその付近を破いた。とんがりはわずかな枷から解放され、さらにうれしそうにツンと上向く。

 

 

 お股を破くと、官能的な電気刺激が伝わり、弾けた。ただでさえほぼすけすけの網タイツが、さらに意味を失う。

 

 

 恥ずかしい……あん、お兄ちゃんせんせぇ、今夜はいっぱい、がばぁしてね……

 

 

 まだ足りないとジェスチャーが動くも、あたしは意味がわからず困惑した。どうも太ももやお腹周りなど、大事なところ以外も破いてほしいそうな。うぅん男の人の趣味ってわかんない、とあちこちびりって伝線させると、興奮した携帯が何度もうれしい叫び声をあげてた。へんなの。

 

 

 背後の青年は完全に携帯電話に夢中で、あたしがじっと見下ろしても視線に気づきもしない。男の人ってなんで視線に鈍感なんだろ、あんなに突き刺さる感じするのに……

 

 

 でも今はそれが好都合。あたしは次の駅まで少しかかると知り、そのままそこで恥ずかしく過ごした。

 

 

 楽しい露出の、時間だった。

 

 

 やがて次の大きな駅に到着のアナウンスがされる。開くドアがどちら側か案内され、お兄ちゃんはその前に立つよう指示した。

 

 

「恐らく次で乗ってくる人がいるから、綺麗な奈々穂を見てもらおう。写真撮ってもらうつもりで笑ってごらん」

 

 

 言われた通りにしとやかさを出すためおへそで手を組み、しゃなりと笑みをとる。格好だけがアンバランスに卑猥なことを除いて、清楚な雰囲気をできるだけ演出する。男の人はまたそんなあたしを見て、ごくりと生唾を飲み込んでいた。

 

 

 ぷしゅう、と開く扉の前で、立ったまま。やがてゆっくりと速度の落ちる電車。流れる景色が緩やかに止まり……

 

 

 出口の前ぴったりの位置で、待つ人がいた。

 

 

「こ、こんばんはぁ」

 

 

「……」

 

 

 思わず挨拶しちゃったけど、茫然といった面持ちで目の前の女性は立ち尽くしていた。

 

 

 するとキッとこちらを睨んで、汚らわしいものでも見るかのような軽蔑の目線を向けてずかずかと足音荒く乗りこみ、すぐ別車両へ移動してしまった。やっぱり同性の目は厳しい。

 

 

 それだけに……

 

 

「お前ふしだらな目、してるな。わかる? ふしだらって、教えたよね?」

 

 

 軽く震えながら頷くとまたよしよししてもらえた。それにしても座ってる青年、これだけ間近で人が話してても気にしないの、ある意味すごい。

 

 

「次が目的地だからそこで降りよう。あなたも付き合ってくれてありがとうございました、ええっと、杉尾(すぎお)さん、でしたっけ」

 

 

「あ、はい」まだいたんだ。

 

 

 お兄ちゃんは穏やかに告げる。

 

 

「もうちょっとだけ続けますけど、ご一緒します? へたをすると私たちの仲間だと勘違いされるかもしれませんが」

 

 

「ぜひ」

 

 

 自分の欲望に素直な人だった。こちらの条件にここまで合致するのも珍しい。それだけに長い付き合いになりそうで、まためまいでもしそう。

 

 

 すぐに目的地へたどり着いた。お兄ちゃんと一緒に駅へ降り、すぐに陸橋へ上がる。

 

 

「騒ぎを起こさないでくださいね」

 

 

 杉尾と呼ばれた人に釘を刺すと、お兄ちゃんは階段を上がりきったところの角にあたしを呼んだ。

 

 

 本当にするんだ……こんなところで……ちゃんとできたら、なにお願いしよう……もうほとんど決まってるけど……えっちなのにしようかなぁ。

 

 

 ここで、陸橋の角で、犯してもらえるんだから。

 

 

 陸橋はコの字型の簡単なもの。その右上の角に位置取って、向こうの階段を上がってくる人を待ち構えるように、立ったまま犯されるの。

 

 

 背後のお兄ちゃんは勃起した桃色乳首を楽しそうにこね回し、股間を押しつける。いつもいつの間にかお外に出てる大事なおち〇ちんが、ぬらぬらって破れた網タイツごとあたしの大事なところをこすりつける。すでにおつゆのせいで摩擦はほとんどなく、ぬるぬると性器と性器は触れ合った。

 

 

「あーん、ねぇ、早く挿れてぇ」

 

 

「奈々穂は積極的だね。ちゃんとなにをどこにって言わないとダメだよ、ほら奈々穂のこれ、教えたろう?」

 

 

 ちらり、目線が周囲を確認する。見物客は今のところ一人、階段を上がってくる人はいない。それでもいつ来るか知れない陸橋の角、始まった情事に芯からとろけそうだった。

 

 

 もっと見られるかもしれない。その妄想は、たぎる。

 

 

「えっちぃ。あっ、ん、お兄ちゃんのおち〇ぽ、奈々穂のおま〇こに挿れてぇ、ねぇん」

 

 

 自らお尻も押しつけてしまう。実際もう我慢の限界だった。

 

 

 えっちは、好き。好きなの。教えこまれちゃった、から。

 

 

 子作り、大好き。

 

 

「あぁん!」入ってきた、大好きなおち〇ちん……これだけでイけそう……ああ……

 

 

 右太ももを持ち上げられ、ぐっと正面を見せつけながらのセックス。思わず振り向いて唇をねだり、男のごつごつした舌とれろれろ舐め合う。舌を外に出してぺろぺろ、好き。いやらしくって、たまらないの。

 

 

「んくっ、ちゅぱっ、はぁ、お兄ちゃん……好きぃ、えへ、奈々穂気持ちい?」

 

 

「ああ、お前のおま〇こどろどろで最高だよ、よく締まるしね」

 

 

「あーん、あんまり言わないでぇ」嘘つきなの。

 

 

 ばちっ、ばちんってお尻に腰を打ち付けられる。そのたびに下からぐいぐいぐりぐりってかたぁいのが突き刺さってくらくらしちゃう。ごりごりこすれて戻ってくのもまたお腹がきゅんとしちゃって、とっても気持ちいいの。子宮にぶつけようぶつけようって、大人の男の人が頑張ってるの、好き。こつん、ごつんって行き止まり当たるのなんてもう最高。もっと強くお願いって、おっぱい触っていいよってキスしながら言うの。

 

 

「わっ」

 

 

 誰か来た。その瞬間、あたしの膣はきゅううって締まっちゃうの。

 

 

 なんて気持ちいい、見られた、って……

 

 

 お兄ちゃんもぐって硬くして、思いっきり突き上げてくれる。楽しそうで本当にうれしい。はぁはぁって息がかかってくすぐったくって、でもぐいぐい来てくれてうれしい。空いてる左手があっちこっちまさぐってくすぐってなで回して、最後にいっつもおっぱいもみもみしてくれるのもうれしいの。あん、そんな見つめちゃやぁ、えへへ……大好き。

 

 

「……」

 

 

 二人の世界に夢中でいると、やってきた三十代くらいの男の人は携帯で写真を撮り始めた。最近のは動画もいけるって聞いたけど、その人は何枚も何枚もぱしゃぱしゃしてた。杉尾っていう人も思い出したみたいに携帯電話を使いだし、あたしたちのえっちしてるとこ、撮られちゃうの。

 

 

「んっ、ふぁ、ふぅ、えへ……きれえに撮ってねぇ、奈々穂、これからなまなかだしされるからねぇ、そこも逃しちゃだめだよぅ、やん、お兄ちゃん破いちゃやぁ、やぁん」

 

 

「裸より恥ずかしい格好しておいてよく言うよ。ほら、もっとよく見てもらいなさい」

 

 

「はぁい。見ていいよぉ、いっぱい、奈々穂見てぇ」

 

 

 言えば言うだけ興奮する。イクときはイクって、言うほうが気持ちいい。あたしは本能に従った。素直になれば、それだけ快感が訪れるから。

 

 

「んっ、はっ、はぁ、はぁー……おにい、ちゃ、ああ、あーっ……うふ、奈々穂も好きぃ……はぁ、はぁん……やん、えっちぃ、お豆さんくりくりしちゃやぁ」

 

 

 じゅぷじゅぷってあそこからお水の音がすごくする。体の奥からするから響いてすごい。下から突き上げられるたびにおっぱいがぶるんぶるん弾けて汗が飛んでっちゃう。ポニーテールもぶんぶんお互いにぶつかってちょっぴり痛いけど、なんだかそれもいい……と思ってるとほっぺはむはむされたぁ。甘噛みされると本当にお砂糖みたいに甘い感じがそこから伝わって、あそこがもっととろとろになっちゃう。

 

 

 お股が、うねうねしてる。気持ちいいって、ぎゅうぎゅうして、る。びっしょ、びしょ。早く精子ほしいほしいって、おねだりずっとしてる。

 

 

 お兄ちゃんのもぐって、ぐぐってかたぁいのをぶつけにきて、あたしの弱いとこをこすろうとリズミカルにぱんぱんしてくる。ごんって、浮いちゃうくらい強くされるとくらくら、気が遠くなるの。

 

 

 そんなところまで、全部。見られてた。撮られてた。いつの間にか、二人だけじゃない、何人も……

 

 

「そろそろいいかな、ほら言って、言えるだろう、なな?」

 

 

「はぁい。えへ、奈々穂イクところ見てぇ! 奈々穂がなまなかだしされてはらまされてイッちゃうとこ、ちゃんと見てえ!」

 

 

「いい子だ、ななっ!」

 

 

「あぅっ、うううううーっ♥ おにいちゃぁん♥ イク、イクううううーっ♥ あん♥ も、だめ、立って、ああああ♥」

 

 

 場所を気にせずあたしは絶叫した。心から気持ちよくって、それをそのまま表現した。どろどろの精液が子宮にたっくさん流れこんでくる……しあわせぇ……お兄ちゃんせんせぇ、大好き♥

 

 

 いっつも一番奥で射精してもらえるからあんましこぼれないけど、今日は下からだったから外れるとすぐこぼれてっちゃった。あーんもったいない、どうしよ。でも地面に落ちたのなめなめ、ばっちいよねぇ。とりあえずお兄ちゃんのお掃除フェラして、綺麗にしてあげるの。ぺろぺろ、垂れる甘くて白いのを舌で捕まえると、とってもしあわせ。

 

 

 見られながらだともっとだった。お兄ちゃんもにっこり、見てくれてありがとうと言って、フェラが終わると広げてよく見せてあげなさいって言うの。えっちだなぁって思うけど、言うこと聞きたくってたまんないからすぐにみんなに向けて、破けた網タイツの奥を広げちゃう。

 

 

 とろお……いやんもう、みんな食い入るように見てる。えっちぃ。

 

 

「お、戻りの電車が来たね。帰ろう奈々穂」

 

 

「はぁい。お兄ちゃん、とっても気持ちよかったよ。ちゃんと電車露出したから、いっこ言うこと聞いてもらうかんねっ」

 

 

「ああ、なんでも聞くよ」

 

 

 二人はそのまま腕を組んで、戻りの電車に乗りました。見てくれた人たちも満足そうに順次帰宅していったのか、騒ぎも通報も起きなかった。男の人ばっかりだったのがよかったのかもしれないし、噂のせいかも。ふふ。お兄ちゃんがえっちなのがいけないの。

 

 

 これで電車露出は終わり、と思ってたけど……大きな駅でいったんホームに出て、お兄ちゃんは最後にちょびっとだけ、って紙を渡してきた。これを持ってホームだけでいいから見せて回りなさい、って。

 

 

『生ナカダシされたてです。ま〇こからザーメンがこぼれるところが見たい方はお早めにお言いください、なくなるまで何度でも開いて見せます』

 

 

 とんでもない、こと、はぁ、はぁ、書いてある。これ、やるのぉ? あたしが見上げるとお兄ちゃんはらんらんと楽しそうで、逆らえない。

 

 

「ううう……しょうがないなぁ」

 

 

 ちゃんと見守っててね? と確認してから、大きな駅のホームをあっちこっち、歩き回った。夜だけれど当然人がいて、あたしを見るたびにぎょっとしている。

 

 

 ああん……また、ちくちく、見られてるよお……恥ずかしいよお……とろおって、開かなくってもこぼれちゃうよお……網タイツ破けてるから、おっぱいもお尻もおま〇こも丸見えだよお……隠したい、しゃがみたい、逃げたい……でも、いいって言うまで歩かなきゃ……ヒール、転びそう……あっ。

 

 

 びたん。ふらふら歩いてると詩音(ふみね)お姉ちゃんみたいに転んじゃった。持ってた紙を思わず手放して手をつけたからよかったものの、そのまま正面からお姉ちゃんみたいにべちゃあってなったら大変だった。

 

 

 ふらふら、立ち上がる。紙を拾い、また見せながらホームを往復する。どんな人も今の異様な熱気に包まれたあたしを見るとすすと後ずさりし、距離を取って関わろうとしなくなる。

 

 

 でもちらちらと、盗み見するように男の人は見てくれる人が多く、あたしはそれで感じながら垂れちゃわないようもぞもぞと太ももをこすり合わせつつ歩いていった。

 

 

 くねくねと妙なキャットウォークもどき。ぷるん、ぷるんってまたあちこち、揺れた。やっぱりおっぱいとお尻は人気だ。いっぱい……見られてる。

 

 

 お兄ちゃんのとこに戻ると不服そうな顔。誰も声をかけなかったし、あたしも声を出すことができなかったからなんにも起きず面白くないみたい。

 

 

「電車の中でも続けようか、いや駅から出るまでもうずっと続けよう」

 

 

「やぁ、やぁ、恥ずかしいよぅ」

 

 

「言うこと聞きなさい、なな。いいね?」

 

 

 ぐいって迫られるとぐうってうなっちゃって、頷くしかないの。

 

 

 お兄ちゃんの言うこと聞くの、楽しい、から。

 

 

「あん……いやん……」

 

 

 またがたごとと走る電車の中、あたしは先頭車両から最後部車両をずっと往復し続け、破けた網タイツ姿を晒し続けたの……

 

 

 気持ち、よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イクっ♥ お兄ちゃんまた奈々穂イクっ♥ いっぱいイッちゃうよぅ♥ あん♥ 出て、ああ奈々穂イク、イクうっ♥」

 

 

 三度目の生ナカダシにまたイッちゃうあたし。お兄ちゃんのベッドで二人っきりのお誕生日いちゃいちゃえっち、最高……

 

 

 どくどくって注いでもらった精子をまた開いてこぼすとこをきちんと撮影してもらう。えへへと笑いながらピースしてる写真が残って、またいじられるの。楽しみ。

 

 

 結局破けた網タイツ着たまんまでごろごろお布団でいちゃいちゃ。お兄ちゃんこういうの好きなんだね。覚えとかなきゃ。

 

 

「おっとえっちに夢中で忘れるところだった。奈々穂、プレゼントがあるんだ」

 

 

「うふふ、知ってるー。そこの紙袋、隠してあるの見っけたもん。中あとで見るね」

 

 

「なんだバレてたのか。ふふ」

 

 

 なでなでしてもらう。とーっても気持ちいい。ごろごろって甘えて、お誕生日万々歳なの。

 

 

「それで奈々穂、一つだけなんでも聞くけど、今すぐできることかな?」

 

 

「うん、今すぐできるよ。あのね──」

 

 

 あたしはやっぱり、考えていたことをそのまま口にした。

 

 

真崎(しんざき)の家が最後どうなったか、知りたいの」

 

 

「……」

 

 

「家族もそう、みんなも、周りも、知ってる限り全部。せんせぇの知っていること、教えてほしいの」

 

 

 やっぱりお兄ちゃん驚いていた。あたしが、五歳でも六歳でもないことに、今気づいたみたい。うぅん薄々感じてたろうけれど、確信は持ててなかったんだろうな。

 

 

「……本当に、あの奈々穂じゃあ、ないんだね? もう、子供の」

 

 

「今日で十七歳だよ、あたし」

 

 

「そうか……ごめんね、忙しくて気づけなかった、いや忙しさを理由に聞かなかったんだ」

 

 

「うぅんいいの。本当につい最近だから。それにあたし、戻ったってわけでも、ないから。真崎でも、深町でもないんだ。その二人が一緒になって……元通りのような、別人みたいな。不思議な感じ」

 

 

 実際今の自分は不思議な存在だろう。五歳のとき、紗絵子お母さんに捨てられたと思い、別人格を作り出した。その真崎奈々穂も、義父に首を絞められて逃げ出した。幸いにも目覚めた先にお兄ちゃんがいて、深町の奈々穂が顔を出した。その間、多重人格と思われ続けた。けれどそれは正解でもあり、正確ではない。真崎の奈々穂も残っていたから。そのまま表向き深町の奈々穂で過ごし、徐々に一つの存在になっていったのだから。

 

 

「そうか、そうだったのか……おかしな感じではないんだね? なにか変な感じだったり、苦しくなったらすぐ言ってね」

 

 

「うん。ごめんね、自分でもうまく説明はまだ、できないの。だから先に、真崎のお家がどうなったのか、知りたい」

 

 

「わかった、話すよ。その前に飲み物でも用意してもらおう、少し長くなるからね」

 

 

 ちりんと鈴でメイドさんを呼び、やってきた(ともえ)さんに頼んでおく。ゆっくりと背中をなでられながら待ってるとすぐに温かいココアが運ばれてきた。

 

 

 温かい。このお家そのもの、みんなそのもの。

 

 

「さて……どこから話したものか。うーん……言いにくいけれど、真崎のお家はもう奈々穂以外みんな亡くなったのは、わかるかな」

 

 

「うん。あたしだけが助かったんだよね。真崎のお父さんが──」

 

 

 その先は続かなかった。思い出すだけで震えそうな、きっとトラウマと呼ばれるもの。首飾りはもう死ぬまで着けたいと思わない。

 

 

 首を絞められ殺されかけた。それも今まで、大好きだった義父に……その思いは、つらすぎた。だからかせんせぇもこれ以上触れず、頷いて先へと話を進めた。

 

 

「それで真崎家、家ももうないんだ。財産もない、そもそも苦しい家計だったからね。奈々穂はアルバイトで助けていたことは?」

 

 

「覚えてる。ケーキ屋さんでアルバイトしていたの。たまにおみやげに残ったケーキもらって、家族で食べてた」

 

 

 勝手にしんみりとした感じで言ってしまって慌てて違う違うと取り繕うも、いいんだよってせんせぇはぎゅっとしてくれる。やっぱり、それは、これは、つらい記憶を思い出すから、って。

 

 

「親戚の人たちがちょっとひどくてね……お金を貸してた人がいたのもそうなんだけど、そのせいか家とか、売れるものは売って現金に換えようってあっという間にことを進めたみたいなんだ。奈々穂を引き取ろうって話もそこで少し出たみたいなんだけど、奈々穂が……その、五歳に多重人格でなった、と知ってみんな煙たがっていた」

 

 

「いいよ、全部言って。ただ知りたいだけなの」

 

 

「うん……」せんせぇのほうが苦しそう。あたしもなでなでしてあげると、ふって笑う。かわい。

 

 

「それで病院に言ってきたんだ。入院費とか、仮に元の高校生に戻ったときの養育費とかは、面倒は見きれないから、ある程度家を売ったお金でできるだけのことはして、尽きたら施設へ預けてください、ってね。誰も、その、引き取りたくない、って」

 

 

「……」

 

 

「元々養子だから、真崎の家以外ではあまりかわいがれなかったから、と……十二年前の引き取った当初は真崎も立派な家だったけれど、だんだん凋落して、家計が苦しくなると金の切れ目が縁の切れ目、じゃあないけれど、周りは冷たくなっていったみたいなんだ。いや逆か、周りと元々そんなに仲良しではなかったから、奈々穂を養子にとろうと思ったんだろう」

 

 

 わかる気がする。記憶に残る真崎家の面影はあたしを見てとてもしあわせそうに微笑むけれど、どこかさみしそうな顔もときどき、見せていた。近所づきあいはともかく、親戚とのおつきあいはそういえば疎遠だった気もする。

 

 

「だから……今現在、真崎家の奈々穂に連絡を取ろうとする人は、ほとんどいない。この前君に会いに来た友達の男の子だけ、と言える。乃木坂(のぎざか)という名の子だね」

 

 

 学校のお友達にも五歳のままで接した結果、二度お見舞いに来てくれた人はいなかった。あたしがどれだけ、希薄な友人関係を築いていたのかがよくわかる。うぅん違う、誰だって面倒は避けたいから。しょうがない、か。

 

 

 しょうがない、よね。あんな顔、されても……

 

 

「逆に言うのなら、真崎家の一員として今後なにかをする必要はないと思う。義理も義務もないよ。真崎家の親戚縁者たちとも、以後交流をする必要もないと思う。そこは奈々穂次第だから、奈々穂が好きにしていいんだ」

 

 

「……うん」

 

 

 完全にあの家族は、あたしが過ごしてきた家族は、家は、なくなったんだと。やさしく言われる。直接言われずともわかってしまう今の十七らしい思考回路が、ちょっとだけ憎い。

 

 

 五歳のままでいられれば。きっとどんなにか楽だったろう。あのしあわせだった日々の思い出に浸り、それがそのまま再開されたと思い込んでいられれば、どんなに──

 

 

 けれど今はもう、奈々穂は十七になってしまった。お誕生日を迎えて、一つ年をとったんだ。それは絶対に変えられない、事実だ。

 

 

 だからあたしは、前へ進もうと思う。

 

 

「わかった、ありがとう。真崎の家でのことはもう気にしないし、なんにもする気も、ないんだ。お墓参りには行くよ、でも……」

 

 

 自分で自分の首をなぞろうとしても、指先は決して触れようとしてくれない。自分で自分の体が自由にできない、首に関してだけは。

 

 

「こうなった、から。あたしはもう、真崎奈々穂としては生きられない。養子にしてもらっておいて親不孝者かもしれないけれど、でも、無理。もう、戻れない……」

 

 

 か細くつぶやくとしばらくお互い黙りこくってしまった。秋が終わり冬の到来がすぐそこに来ている、寒い夜に。二人の体温だけがとくんとくんと、温かく脈打っている。

 

 

 せんせぇは言葉を選んで、言いにくそうに、でも言わずにはいられないと、そっと告げた。

 

 

「真崎の父親も、奈々穂のことが嫌いとか憎かったから手をかけたわけじゃあない、きっと違う。愛していたから、それでもって、複雑な感情があったことは、理解してやってほしい。ほかの家族ももちろんだけれど」

 

 

「……うん。今は正直、整理しきれない、から。もっと時間がたってから、考える」

 

 

 きっと今考えを巡らせても、つらいだけだ。そっと距離を置いて、時間が流れるのを待つほうがいいことだってあるはず。

 

 

 今は無理だ。

 

 

 また少し沈黙する。なんとか次の言葉を探せたのは多分十分はたってたように思う。

 

 

「あのね、それでこれからなんだけど……お金、平気? あたし大人になったら返す、今からでもまたケーキ屋さんでアルバイトするから」

 

 

「そんな心配はしなくてよろしい。忘れているかもしれないけれど、私は君の父親だよ。扶養する義務がある」

 

 

「あ、そっか」言われるまで本当に忘れていた。お兄ちゃんだとばかり思っていたのだ。そういえばそうだ。

 

 

「高校に通い直したいの。できたら、大学も。アルバイトに時間いっぱいとられなくなるんだったら、自分がなにをしたいか、なにになりたかをきちんと考えたい」

 

 

 アルバイトをしていた当時の高校生の自分は、きっと高卒後すぐに就職して少しでも家計を、としか進路を決めていなかった。そうでなくなった今、もう一度しっかりと自分の将来を見つめ直したい。

 

 

「ああ、それがいいと思うよ。できる限り力になってあげる。やりたいことをやりなさい」

 

 

 ふっと微笑んでくれる大好きなお兄ちゃん……兼、お父さん。うぅんでも、どうしても父親って思えないなぁ。深町の頃からそうあろうとしてくれていたのはわかるけれど、その、やっぱり若すぎる。

 

 

 ほっぺに手を添えながら、続けた。言いにくいことでも言う。お兄ちゃんにもお母さんたちにも、全部相談して、言ってしまいたい。

 

 

「高校には行きたい。けど、前の学校はいや。あのクラスメイトたちとまた、笑顔で元通り過ごすなんて、できっこない。あたしそんな、えらい子じゃあ、ない」

 

 

 真崎も深町も、二人分の記憶が今、はっきりとある。お見舞いに(せんせぇが無理を言って)来たクラスメイトたちのことも、覚えてる。担任の先生もいた。

 

 

 友達を、友達だった女の子を見る目じゃあ、なかった。ただ面倒なものを見る目。関わり合いたくないと、あまりにもわかりやすく顔をしかめた、人たち……

 

 

 戻るなんて、無理だ。しょうがないなんて、割り切って平気な顔でいられや、しない。

 

 

 お友達って、なんなんだろう。あたしが多くを求めすぎたのかな。理想が高すぎたのかな。苦しいときに、五歳の奈々穂で泣いてわめいたときに、心配してくれるのが本当のお友達? それも違う気がする、けれどあの、お見舞いにやってきた人たちも違う気がする。

 

 

 五歳になったあたしを気にかけてくれた、見守ってくれたあの男の子が。乃木坂くんが、一番あたしの考えるお友達に近い、気がする。

 

 

「うん、わかった。通える範囲は広いからね、調べておくから、ゆっくり選びなさい」

 

 

 そして誰もが、この人のようにはきっとなれないだろう。クラスには三十人からいる。似ている人はいても誰も彼も同じじゃあない。

 

 

 人は一人ずつみんな特別だ、違うってこと。同じだとどこか、勘違いして忙しくて、変に接していた気も、する。

 

 

 真崎だった頃と、深町だった頃、そしてせんせぇと再会してからの時間。全部を足して、これから変わっていけたら。成長していけたら、いいな。

 

 

「あの、アルバイト先のケーキ屋さんには事情は知られているのかな?」

 

 

「いや、さすがにそこまでは話していないよ。噂で知っているかもしれないがね」

 

 

「そっか。じゃあ今度会いに行きたい。親切にしてくれたの。お礼と、もしまた人手が足りないなら、働きたい」

 

 

「わかった」

 

 

 最後にこれ、言わなきゃ。絶対そうだって、確信があるもの……

 

 

「あとね、お兄ちゃん。その辺とも関係あるんだけど……あたし多分、妊娠してる」

 

 

「え?」

 

 

 お腹をなぞってもまだ、鼓動が聞こえるわけじゃあないけれど。柚香里お姉ちゃんみたいに膨らんできてもいないけれど。でも。

 

 

 感じるの。

 

 

「確かめるために産婦人科も紹介してほしいの」

 

 

「……ああ、わかったよ。そっか。それはめでたいなぁ。ふふふ」

 

 

「あー? お兄ちゃんへんたいなんだ。普通女子高生孕ませて喜ばないよ?」

 

 

「うぐ、それもそうだが、でも嬉しいんだ。子供ができるのはとっても嬉しい」

 

 

「うん、あたしも」

 

 

 ぎゅうっと抱きしめ合った。息が止まるくらいキスもしちゃう。あまあまな時間を過ごして、うっとりするの。

 

 

「だからその、通学とかいろいろ困らないかな、って。どうしよう?」

 

 

「確かに、あらかじめ相談して、通わせてくれるところを探したほうがいいかもね。難しいかもしれないけれど……でも本来、子供ができるのはとってもおめでたいことなんだ、どこか必ずあるよ。出産も通学も両立できるべきなんだ、できるだけサポートするよ」

 

 

「ありがとう。お兄ちゃん、だぁいすき!」

 

 

 ああ、この人が好きだ。好きだ……今も昔も、変わらずずっと……

 

 

 うれしくて泣いちゃうくらい。

 

 

 夜はもう寒くなく、眠るのももう、こわくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然のように告白をされ、当然のようにみなが驚いた。

 

 

 声も仕草もなにも変わっていないのに、奈々穂ちゃんは六歳ではなくなったと、はにかむ。

 

 

 これで疑似母親も終わりか……とさみしく思っていると、その奈々穂ちゃんがにっこりと私と紗絵子さんに微笑みかけてくる。

 

 

「これからもお母さんでいてねっ」

 

 

 ひまわりのような笑顔は変わらない。私は心がじんと温かくなるのを感じて、穏やかに微笑み返した。

 

 

 紗絵子さんは──ぽろぽろとまた泣いていた。すべてを知って、思い出したうえでなお、自分を母と認めてくれる。その幸福と罪悪感とで、泣かずにはいられない。私にもはっきりとわかるほどの、感動……

 

 

「ごめんな──」

 

 

「謝っちゃダメだよ、紗絵子お母さん。ありがとうだよっ」

 

 

「っく、ええ、ええそうね、ありがとう、ありがとうっ、奈々穂──」

 

 

 まるで紗絵子さんのほうが子供のように、奈々穂ちゃんに抱き留められよしよしとなでられていた。

 

 

 奈々穂ちゃんの現状をきちんと説明してもらいながら、私たちは微笑ましく、仲良し親子の触れ合いを見守っていた。

 

 

 ……ついでのように赤ちゃんできましたとも、告白され、ちょびっとだけ羨ましく思いつつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 季節の巡るのは早いこと、もう師走が足早に駆ける音が聞こえてくる。

 

 

 今年の冬はしんみりと寒く、珍しく風模様が穏やかに凛とした冷気を震わせていた。

 

 

 十二月も三日を回り、あと二十日でみなの愛する人の誕生日(と、パティちゃんも)。いかに盛大に祝ってやろうかと思う反面、ただでさえ忙しない師走にあまりに凝ったお祝いはいかがなものかと、大人連中はちょびっと悩んでいた。

 

 

 愛娘のまゆはあれもこれもとやりたいことをのべつまくなしに並べ立て、私を閉口させる。駅前のでかでかと飾られる予定のクリスマスツリーのすぐ傍でパーティーがしたいと、無理難題を言い出しあーだこーだ。はぁ。

 

 

 気持ちは、わかる。あの人のものとなってから初めての、みなみなの主のめでたい記念日なんだから。自分の記念日はもちろん、パートナーの記念日も祝いたくってしようがない妾女房連中、日に日に相談は熱くなるばかり。

 

 

 そんな中……春花さんがふと気がかりなことがあるのか、旦那のいない夕食の場でおずおずと話し出した。

 

 

「あのう、皆様はその、深町家の歴史についてご存知でしょうか」

 

 

「歴史? そんなの別に大したことないわよ」こともなげに紗絵子さんが言う。

 

 

「実はお父様より耳にしまして。なにか深町家には歴史があるとか。その、以前もお話しました通り深町様は影でなにがしかなされているようですし、最近のお忙しさからもそのためかと思いまして。せっかくですし、もっと深町家に対して知見を広めたいな、と」

 

 

 あの宿六は私たちみなが危険に晒されないよう、こっそり手を回していたと春花さんからハロウィン終わりに聞いている。その際一人でなんでも抱えこむなと、みんなで割とがみがみ言うと頼るときは頼るから心配しないでと苦笑いされたっけ。

 

 

 それはさておき、歴史についてか。確かに気になるところではあるわね。先月終わりからこっち、あいつの多忙も加速して、もうちょっともうちょっとで終わるから、と言い続けて幾星霜。知ればどうにかなるものかも。

 

 

「うーん、そうはいってもねぇ……お母さんもぱっぱって話せるほど知ってはいないわ。ええっと、先々代、憲邇くんのおじいちゃんの代は割と栄えていたわね。そのときにこれだけの大きさの家を建てたわけだから。交友関係も広くって、仕事は貿易関係って言ってたけど、それくらいかしら。村一の富豪ではあったんだけど、私が嫁いだ頃には普通、っていうか貧乏なほうだったかしら。そうなるのになにがあったかは、知る前にみんな亡くなったし、そういえば聞いていないわね」

 

 

 気にしたこともなかった、と紗絵子さんはあっけらかんと言ってのけた。早くに夫を亡くし、実家もなくし(これについては本当につらいのか紗絵子さんから語られたことはほとんどない)、日々をやり過ごすのに精いっぱいだったからでしょうね。

 

 

「やはりなにかがあったのでしょう。気になりますわ。ああ早く帰ってきませんでしょうか」

 

 

 そわそわとする春花さんを尻目に、今日ははしゃぎすぎて疲れたのか花織(かおり)ちゃんはもう眠たそう。よしよしと姉にあやされ、瞼を擦っている。

 

 

「別いーじゃん。昔なにがあったって憲邇さん変わんないよ。ねーそれよかさー、やっぱりお誕生日は遊園地がいいよっ。どっかさ、どーんと行ってさ、なんかこう、どっかーんってさ」

 

 

 ふわふわした展望を話すまゆを宥め、一度連絡を入れてみる。もう一時間ほどだそう。夕食をすっかり食べてしまい後片づけをする頃、玄関に音がした。

 

 

「おかえりなさい、あなた。お疲れ様」

 

 

 食器を洗っていた手をエプロンで拭いながら出迎えると、彼は微笑みながら飛び込んでくるまゆたちの相手をする。

 

 

 父の日からこっち、普段は控えるようになったこの人は、すっかり良き父だった。お出迎えにスカートめくりなさいと言わなくなり、若干名を残念がらせてくれる。その代わり、ぎゅうっと妾女房全員を抱きしめ、めろめろにすることしきり。

 

 

 私も。ぎゅっと抱きしめられる甘い温もりに、蕩けそうな毎日。

 

 

「歴史? うちの?」

 

 

 食事をしながら軽く驚いた顔をするみなの亭主。うーんと小考し、悩みながら漬物を噛み締め、うんと頷いた。

 

 

「そうだね、話してもいいか。ちょびっとむつかしいから、まゆたちはわからないかもしれないけど、いいかな?」

 

 

「そお? そんならあたし先お風呂入ってきていーい?」

 

 

 頷くとまた駆け出す。もう眠ってしまった花織ちゃんがいないため、聞きたがったみゆちゃんを置いて一人で。

 

 

 場が少し落ち着き、神妙なものになると彼は訥々と語りだした。

 

 

「深町家はこの村とほぼ同じくらい歴史があるんだ。村の歴史も古く、記述が残っている限り江戸かもっと以前からあったらしい。その頃から、深町家には役割があったんだ。今でいう裁判所というか、お役所が一番近いかな? 昔の言葉で言うと町奉行が一番相応しい、というかそのものだったらしいね。ただ、実際に奉行人だったわけじゃあなく、それは村の人がそう、ええっとなんていうか、祀っていた部分もあったらしい」

 

 

 今で言うと警察と裁判所が合わさったような場所を奉行所、とは今日にも知られている。それに似た役割を持っていた、と。奉行そのものの歴史はもっともっと古いから、その頃からの名残か、あるいは村社会におけるなにかを深町家がこなしてきたのでしょう。そこまではさすがに、といったところね。

 

 

「それも明治泰平の世には近代化とともにほとんど形骸化してきて、一部の村の人たち以外からは忘れられていったんだ。ただ深町家がこなしてきたことは村の人たちに受け入れられていて、親しみを持ってもらえていたんだ。この村に今まで一番尽くしてきてくれた存在として、もうそんな意味だとみんな忘れてしまったけど村には本来深町家に感謝をすると言う意味合いのお祭りもある。……あまり言いたくはないけれど、貢物として巫女が捧げられたことも何度もあり、これは、これだけは本当に悲しいことだけどつい最近まであった」

 

 

 みゆちゃんがびくっとなる。よしよしと柚香里さんと詩音ちゃんが左右から寄り添い、力になっていた。

 

 

「やってきたことも別に大したことじゃあ、ないんだけどね。今でいう裁判所として、これは罪なのか、裁くならどうするのかとか、よろずお悩み相談もよく受けていたそうだ。村八分のような、村社会の悪習はここでは少なく、まずなにか問題があればうちに持ち込まれたらしい。それで解決し、村は平穏を保たれていた、とされている。要するにただの便利屋さ、言ってしまえばね。それに権威があった時代があり、そしてその尾を引いているお年寄りがまだいる、という程度に過ぎない。由緒あると評価する奇特な人もいるかもしれないが……あ、いやそうか、そうやってどんなものであれ社会に貢献し、私事を自由に動かせなかったことをありがたがる向きもあるのか、ふむ……」

 

 

 最後はまたちょっとよくわからないことを言い出したけれど、なんとなく歴史は把握できていたわ。みゆちゃんやパティちゃん、あとなぜか(めぐみ)さんもよくわからないとはてなマークをずっと浮かべていたけれど。

 

 

「そんな程度なんだ。ただし一つだけ、さっき言った巫女関連のことで、この村の町長たちごく一部の老人たちとちょっといざこざがあったんだ。それは……言いにくいけれど、紗絵子、いや母さん。父さんのことだよ」

 

 

「えっ」

 

 

 思わぬ方向から矢が飛んできたとばかり、紗絵子さんは珍しく目を丸くしていた。

 

 

「私もこの前、お盆に親戚の人たちから、ようやく家督を継げるようになったと、絵里の存在で言ってくれたことなんだけどね。さっきも言ったように巫女を捧げ、一人の女性を虐げていたんだ。その流れだけはずっと続いていて、父さんはそれがバカらしいと反発したんだ。もうやめろと、うちの役割は終わったと、確かに相談事や村の重要な決定に助言はずっと続いているけれど、それは深町家に限ったことではない。もうこんな少女たちを慰み者として、奴隷として売るような真似は許せない……これはね、別に父さんが気高いからなわけじゃあ、ないよ。なぜならそれまでの深町の家系はそれをよしとしていたんだ。時代さ。昔は人身御供なんて当たり前だった。近代化による価値観の変化によって、ようやく父さんの代で終わりにすることができただけに過ぎない。いや、一代前の祖父でさえもうその段階だったはずなんだ。ただ祖父は幸か不幸か、非常な商才があった。お金持ちであってしまったんだ。だからこそ妾はそれこそ何人も囲ったし、うまい汁は吸った。巫女に関しても受け入れたんだ。けして、決して、深町家は清廉潔白な名士などではないよ」

 

 

 それは自分も含めて、と海が言っていた。

 

 

「当然祖父も父さんに対して同じようにしろと、それでいいんだと宥めるように言ったらしい。ただ、父さんは意志が固く、強く、そしてなにより立派な人だった。当時の町長たちに抗い……事故を装った形で殺された」

 

 

 紗絵子さんの顔が見たこともないほど、蒼白になる。事故だと思っていたのが殺人と、わかってしまった衝撃。震えにパティちゃんと奈々穂ちゃんがまた寄り添う。

 

 

「町長側の巫女は、だからこそだろうが不思議な力を持った子がいたんだ。証拠もなにもなくすべて闇の中だ。あっけなく事故として処理された。今では真相を知っているのは町長側の数人と、深町家に縁ある筋の数人に過ぎない。祖父も知っていたろうがね。そこでいったん巫女に関する云々はおしまいになれた。なぜなら巫女を捧げるのは深町家当主、家を継ぐ男子のみで、すでにその頃私がいた。だが幼過ぎた。そのため、いったん休止することとなったんだ」

 

 

「ちょっと待って」紗絵子さんが迫る。「それなら、お義父さんがもうやめてとなるはずよ。黙っているはずないわ」

 

 

 息子を殺されて……と、愛する夫を殺された怒りが滲む、灼けるような温度の高い、声。

 

 

「そのお金がもう、なかったんだ。確か、父さんが存命の頃からすでに家計は苦しかったよね? 祖父は年を重ね、全盛期の荒い金遣いを改められずどんどんと転落していったはずだよ。それは母さんもよくわかっているはずだ。そして、お金がなければこれはどうすることもできようはずがないと、あがいた結果祖父は理解したんだ。覚えている。祖父は、おじいちゃんはいつも疲れていた。手を尽くしてくれていたんだ。でも、できなかった。超常の力で圧をかけてくる相手にできることはたかがしれている。それは私が一番よくわかっている。おじいちゃんを責められないよ。もちろん、親戚のおじさんたちもね」

 

 

「そうして、じゃあまた、憲邇くんでまた、そんな?」ひどいことが怒ったの? と瞳は困惑していた。あるいは、この人まで失っていたのではないかという、危惧が頬を赤白く染める。

 

 

「私は本当にその辺りなにも知らなかった。巫女とその候補に不思議な力を持った子が何人もいるとか、なにもね。父の早すぎる死から親戚も私に伝えるのはかなり後になるだろうと向こうもわかっていたんだろう。知らない私に、押せるのなら押すべきと迫ったのさ。続けられるなら続けるべきだ、と。当代の巫女は……ごめんね、その能力も非常に老人にとって有用だった。それも不幸だったかもしれない。幸いだったのは、その老人たちに相対する私も、桜園という存在が傍らにあったことかな。そして問題は解決した。もう、二度とない。絶対に」

 

 

 力強く光る海の囁きに、ようやく紗絵子さんも落ち着いたよう。

 

 

「語れる歴史は精々このくらいだよ。大したものじゃあない。この村に忌まわしい風習があって、それを容認してきた、情けのない連中さ、うちは」

 

 

「でもそれを止めたのは憲邇さまです。そんなこと言わないでください」

 

 

 キッと珍しく強くみゆちゃんが言ってくれた。自分たちに卑下するようなことを言うなと言っておいて、謙遜をまねた自虐など許さないと、子供の素直さが光る。うちの人も面食らったものの、そうだねと素直に微笑んでくれた。

 

 

「昔は昔で今と本当に違ったんですね。例えば、どんなことしていたとかってわかりますか?」

 

 

 単純に興味深いのか千歳ちゃんがぐいと迫っていた。いつの間にやら、好奇心の強いこと。

 

 

「ええっと、そうだなぁ……重いものだと、当時社会的に禁断だった身分違いの恋の処分とか、軽いものだと畑を拡充するお金をどうしたら工面できるかの相談とかかな」

 

 

「へぇー……ロミオとジュリエットですね。そういう恋はどうしてたんですか?」

 

 

「残された記述を見る限り、ほかほど厳しくはなかったにせよ、やはりそのような恋は許されないと処分していたようだよ。昔は恋愛は個人でするものではなく、家でするものといった考えが一般的だったし、そもそも結婚も、同じ農民や商人同士ならともかく、違う身分とはご法度が当たり前だったからね。ただ、今でいう情状酌量はほかよりきちんとしていたし、個人の気持ちというものを大事にしていたようには感じたかな。それもこの狭い村だから許されていたことだろうけれどね」

 

 

「どちらかというと現代的な価値観に近かったのね。なるほど。せんせーの家にそんな歴史があったとは……じゃあ今みたいに近親相姦とか、紗絵子さんみたいな早すぎるときに妊娠もいいよいいよってしてくれていたのかもしれませんねー」

 

 

 軽い冗談のつもりで言った泉さんの言葉に、うちの人はまじめに頷いた。

 

 

「その通りだよ。そういったことも持ち込まれた相談であったし、裁いてくれと言われたらしい。深町家ではありふれたことだったんだ。だから紗絵子の妊娠も産ませてくれたみたいだね」

 

 

「……そう。それで……反対もなかったのね……」

 

 

 感慨深げに何度も頷く紗絵子さんはハッと表情を変え、すぐにまた落ち着きを取り戻し、そういうことかと、なにか納得をしていたよう。

 

 

「私……そういえばいつも見守ってもらっていたような、笑顔で、笑顔で傍にいてくれたなにかの存在を感じていたわ。それは深町の家の、歴史だったのね……私、憲邇くんと交わったわ。いけないことだった。柚香里も、近親相姦して……でも、それが知られていないはずも、いえ知っていた人もいたはずだわ、子供同士、私も子供で……でも、誰も否定せず、見守ってくれていた、のね。お互いの気持ちが、大事だと深町家が教えてくれて、いた、から。当の深町家が近親相姦に走っても、若くして妊娠しようとも、道を外そうとも、大事なのは当人たちだと、その深町家の歴史が教えてくれていた……だからあの日見た、告白のときの幻も笑って……」

 

 

 しんみりとした言葉。現代の当主も目を閉じて受け取り、確かな肯定を見せる。

 

 

 肩の荷を下ろしたであろう、アルバム片手にしてくれた告白。そのときのことを思い出した紗絵子さん。ふと傍にある娘の温もりを感じ、またぎゅっと抱きしめ合う。

 

 

「ごめんなさい、ごめんね、柚香里さん、周りがみんないいと言ってくれたのに、当のお母さん──」

 

 

 黙って首を振る柚香里さんに、二の句を告げない、紗絵子さん。もう、いいのだと。それこそあのアルバムを前にした告白で、過ぎたことだと、教えていた。

 

 

 さらにしんみりした空気に、こほんと咳払いをして、

 

 

「でも今のこのハーレム状態も当人たちがいいなら、と村の人たちが許容してくれていると思うと、ちょっと悪いけどね」

 

 

 最後に冗談でオチをつける、いけない人。みんなも苦笑してしまう。

 

 

「それでは最近のお忙しいことと関係があるわけではありませんのね」

 

 

 春花さんが納得した一言を言うと、バツが悪そうにうちの人は頭をかいた。

 

 

「いやぁそこは本当にごめんよ。なんとか時間を作ろうと思ってはいるんだ。ただ交渉が難航してね……医師を増やすと、そこまでは確約してもらえたんだけど均一にっていうか、ただ増やすとか言われて頭にきてね。足りてないところを重点的にっていうのは最初からずっと言ってるんだ。そこが叶わないと意味がないって今噛みついているところさ。なんなら医師会含め怪しいとこの首が全部すげかえることになるかもね」

 

 

 いきなり物騒なことを言い出したので春花さんもびっくりしてしまった。私も危ないことしてやしないかと目線を送ると、そんな橋は渡っていないと返事が一応帰ってくる。本当かしら。

 

 

「それでは今年のお誕生日はどうでしょう。お時間ありますか?」

 

 

 不安げな花雪(かゆき)ちゃんの言葉に、そこだけはと自信満々に彼は頷いて、胸を叩いた。

 

 

「任せなさい。約束するよ。破ったら針千本飲む。一日絶対空けてみせる。その、申しわけないけどその代わり今月はそれ以外……」

 

 

「ああいい、いいわ、それで。あなたが仕事に集中してくれているのなら、みんないいわ、ね?」

 

 

 私がぐるりと見回すと妾女房全員、しっかと首肯してくれた。

 

 

「ただし! いーですかせんせー、体壊したら許しませんからねっ。ぶっ飛ばしますから」

 

 

「まっかせな、さ、さい……」

 

 

 最後自信なさげに眉を困らせるとそんな調子では困るとみんながやいのやいの。メイド連中は今夜もマッサージの相談に、純真なみゆちゃんや春花さんが気遣いの目線で休んで下さいねと無言の圧力をかける。

 

 

 私は食後の紅茶の用意をしながら、すぐに戻って来るであろうまゆにどう説明したものかと思案していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第百二話あとがき的戯言

 

 

 

 

 こんばんは、三日月(みかづき)です。

 

 

 ちょっぴり大事なお話がありましたが、深町のハーレムが変わるということでもありません。これからもしあわせな日々が続いていくことでしょう。

 

 

 しかしここまで書くのにこんなにかかったのは作者の力量不足というほかありません。誠に申し訳ない。頑張ります。

 

 

 さて、今回はリクエストのうち、全裸ボディペイントでジョギングをやりました。ありがとうございました。これはやはりの定番ですので、また書きたくなったら書こうかな、と思っております。巨乳組とのリクエストでしたのでおっきい子を多めにしましたが、いかがだったでしょうか。ああ楽しかった。

 

 

 それではまた。ここまでお読みくださりありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。

 

 

 

 

 20180320 三日月まるる

 


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2018/03/26 20:00 | 小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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