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「ごめんなさい」その六十三_第六十話_新妻のお勤めは裸エプロン

 こんばんわ、三日月でございます。
 盆の只中に更新。いやぁインターネットはすごいなぁ。うちの墓参りは明後日(予定)なので今のうちにと。できるうちにしておきませんとね。盆くらいのんびりと。
 拍手コメントメール、ありがとうございます。嬉しいです。
 それでは第六十話です。どうぞ。




















 六十 新妻のお勤めは裸エプロン








 今日の夕方、仕事帰りには会えるという人が我々のリーダーだ。既に行動を起こしている人がいたというのは嬉しい限りだ。やろうとしていた人もいる、シンクロニシティのように。なんにしろ今のままでよいと、現状に甘んじない同志が多くて頼もしいものだ。


 私たちはろくでもない医者だ。医者だからこそ、できることがある。問題はどうやって問題提起、解決に導くかだが。それは皆で考えよう。


 私は昨日、全員と通じて元気百倍なのだ。いい案も出るかもしれない。


 医者の数は増えるべきだ。できたら待遇もよくなるべきだ、そうなれば医者になりたい、苦労してでも見合うものがあると、思う人も増えよう。看護師などスタッフもだ。医療に携わる人も。介護士など介護の現場にも目を向けるべきだな、そちらの給与も、現状では低すぎると思う。


 考えることは山積みだ。でも、充実している。私を支えてくれる女性たちに応えたい。その一心が今、心の中心にある。


 頑張ろう。心から思えるのだ。


憲邇(けんじ)は毎日あんなに走るんだ」


「疲れたかい?」


「そりゃあねぇ。えっちして体力補給してなかったらついてけなかったかも」


 さらぁ、と髪が揺れる。朝に髪を洗うと痛むそうで、軽く汗を流すだけ。
柚香里(ゆかり)にジョギングを付き合ってもらい、帰ってからシャワーを浴びて現在は着替え待ち。女の人は長い。いつものことなので慣れたけど。


 またお風呂で、やっちゃったしなぁ。


「それが体力補給なのか? 普通逆じゃない?」


「ちっち、女に限って言うならえっちは元気の源よ。やる気も体力も充実するの。大好きな人と夜を共にするとね。そういうものなの」


「ふぅん。やっぱり女の人はすごいな」


「感心するとこじゃないと思うけどね。ちょっと憲邇、見ないでって言ってるでしょう」


「さっき散々見せ付けてきたじゃないか。触りもしたぞ」


「それとこれとは別っ。なんべん言わせるのっ。学習しないわねぇ」


「うぅん、納得ができないんだ。理解できないんだ」


「そういうものよっ、ばかっ。次見たらめつぶしするわよっ、愚弟っ」


「わかりました、わかりましたお姉様。もう見ません」


 くるりと背中を向ける。はぁ、どうしてだろう。着替えの最中の女性の美しさを見たい男心なのに。はぁ。


 ようやくいいと言われるまで待つのが苦痛でならなかった。振り返る柚香里がいつもの花柄のワンピースに身を包んでいた。やっぱりお姉ちゃんは美人だなぁ。弟は幸せものだ。


「じゃあみんなを起こしましょうっか。ふふ、憲邇に起こされるとびっくりするわよ、みんな」


「そうだね、いつもは
良子(りょうこ)だからなぁ」


 二人きりはうんと甘える柚香里。誰も見てないからと腕を組み、柔らかな肉体を感じさせてくれる。風呂上り、香る女性のいい匂い。


 元気を注入してもらいながら
詩音(ふみね)の部屋をノックする。昨日はみゆはまゆたちの部屋で犯したから向こうで寝てるし、柚香里は隣にいるから詩音だけか。「おはよう」


「……ぁ、憲先生。おはよぅ、ございます」


 もぞもぞと起き上がった詩音の肩にエプロンが見える。そうだ、今日一日それだぞ。帰ったら裸エプロンでお出迎えかぁ、新婚みたいだなぁ。昔ちょっとやったけど。


「あっ、見ちゃダメです」隠すなよ、もう。


「はいはい。ちょっと早く起こしすぎたかな? ごめんね、昨日は」


「いいえ、とんでもないです。ゎ、わたしえっちのたびに大人になってる気が、あーっ、お母さん」


「おはよう詩音。そうねぇ、一夜明けるたびに大人の色気が増してる気がするわね」


「おはよう。そ、そうかなぁ。だといいけど」


「今日絵を売る交渉なんでしょう? お母さんがついていればよかったけど、一人で平気?」


「平気だよ、ありがとう。憲先生のお陰で、もう人と会うのが怖くないの」


「……そう。偉いわね、詩音」


 ふんわりと笑う、フリージア。ああ、確かに大人の色気が増したよう。


「じゃあ、き、着替えるから出てってください」


「詩音、今日は一日その格好だぞ」


「……ちぇっ。騙されるかと思ったのに」


「朝食、遅れないでね。行こ、憲邇」


「ああ」


 ドアを閉める。食べさせ合うは昨日詩音だっただけに惜しい。いや昨日あの格好でしたっけ、うぅん。まあいいや。


 次は隣のまゆたちの部屋へ。ノック二回、すぐに返事が。


「はーい。おはよう良子さん、今日は早いのね」


 開けて入ってやると、起き上がった
絵里(えり)がびっくりしていた。


「あら? あなたずいぶんと早起きなのね……まあ、柚香里さん」


「おはよう絵里さん」「おはよう絵里」


「おはよう。おっと」さっとブラを隠す。ちっ。絵里は気付くのが早い。


「どう? ちゃんとしたわよ」


「ああ、偉い偉い」


「ふん、まったくもう。脱衣麻雀なんて二度としないでよね」


「勝てないほうが悪いのさ。みゆ、まゆ、起きなさい」


「ふぁ……ん、あ、憲邇さん、おはよ」


「……ふわ……あ、け、憲邇さま。お、おはようございます」


「おはよう」


 柚香里も挨拶をする。まゆはうーんと伸びをしてあっさり胸を見せてくれるが、みゆは起きてすぐ隠すのでどうしているかわからない。まあ、肩がのぞいているのできちんと裸だろうとは思うけど。と、まゆがベッドから出てパンツ一枚で飛び込んできた。


「おはよっ、憲邇さん。今日も一日よろしくねっ」


「ああ、よろしく。今日も元気いっぱいだね」


「憲邇さんが起こしてくれるからだよー。へへ。ね、今日確かあーんはあたしでしょ?」


「そうだっけ」


「そうよ、憲邇も覚えなさいよね」


「へっへへ、いっぱい食べさせてあげる」


「ああ、楽しみにしてるよ。さて、みんなベッドから降りるんだ、きちんとしていたか確かめるぞ」


「もう、あなたったら」「……しょっ」


 みゆはすぐ降りて来、大事なとこを隠したパンツ一枚を見せてくれた。渋々出てくる絵里も、きちんと白い下着だけを着ていた。よしよし、よくできたね。


「うん、ちゃんとしてたね。よしよし」


「えへへ、あたしねー、暑いから毎日こいでもいいよ?」


「ダメだよ、私がやれといったときだけにするんだ」


「あーん憲邇さん、いけずー」


「はっはっは、いいから顔洗ってきなさい。朝ご飯にしよう」


「はーい」


 その格好のまま駆けていくまゆ。「こら待ちなさいまゆ」とそれを追いかけていく忙しい母親。いつもの光景だなぁ。と、絵里はブレーキをかけてぐうと唸りながら扉の前で止まってしまった。まあ、だよなぁ。


「しょうがないわね、まゆったら。あなた、着替えるから出てって」


「はいはい」


「みゆ、風邪引いてそうだったらすぐ言うのよ」


「うん。お母さん平気だった?」


「もちろんよ。じゃあね」


 ばたん。まゆはもう見えないな、早い。


「元気な子ねぇ。まったく。みゆもちょっと分けてもらうといいのに」


「はは、そうだね」


 誰に似たのやら。まあ、絵里だろうけど。


 次は
春花(はるか)たちの部屋へ。ノックをすると春花の声が。


「はい良子さん。お早いですのね」


「誰も憲邇が起こしに来たって思わないのね」


 面白そうに言うな、どうせ私は不精男だよ。


 扉を開けるとびっくりした春花、
花雪(かゆき)に出会う。娘が母の髪を櫛で梳いており、非常に麗しい光景だった。


「ま、まあ、
深町(ふかまち)様でしたの。花織(かおり)、ほら起きて、殿方の前ですの」


 やはり裸に靴下ガーターだけにすると一人では髪も梳けないか、不自由させてすまない。それなら着替えてからやればいいのにと邪推だが、まあ髪が先なんだろう。しかし、親子で髪の梳き合いはまあ、いいなぁ。いいものだなぁ。春花がシーツで肌を隠していなければもっとよかったなぁ。花雪は白の下着姿を見せてくれている。下だけ。いやぁやっぱり、ガーターリングっていいなぁ。綺麗なバストだなぁ。髪に隠れてとってもいいぞ。


「憲邇っ、でれでれしない」


「う、はい」耳を引っ張られた。


「ふわぁ……ふぅ。まあ深町のお兄さま、おはようございます」


「おはよう、みんな」「おはよう」


「今日は一体、どういう風の吹き回しですの? 深町さまが起こしにくるなど、雪でも降るのかしら」


「おいおい、そこまで言うなよ」


「あら、深町さまは良子さんに起こしてもらうのが日課でなくて?」


「そんなことは」ない、とは言えない。


「まあまあ、有難いことですの。それよりもお見苦しいところを見せてしまってすみません」


「いや、いいよ。それより二人とも、昨日の分はきちんとできていたか、教えなさい」


 花織ちゃんはきちんといつものネグリジェだった。花雪はすっと立ち、トップレスの白い下着を手で隠しながら見せてくれる。春花もいっとう恥ずかしそうに頬染め、ゆっくりと立ち上がってくれる。両手で隠された豊満な肢体、豊かな胸と柔らかい曲線の腰は、なにも身につけていないと教えてくれる。唯一ある靴下にガーターリングが、なにかフェティッシュな趣をかもし出していた。いやぁ、よかったなぁ。昨日は。


「憲邇、でれでれしない」


「あいたた」引っ張りすぎだよ。


「も、もうよろしくて? きちんとしておりましたの。言いつけどおり」


「ああいいよ。着替えてからおいで、朝食にしよう」


「はい深町さま。さ、お母さま、続きをしてあげますの。やはり女は髪からですわ」


「ええ。すみませんみっともないところを」


「いいって」


 寝ぐせなんてないように見えるけど。女のこだわりなんだろうなぁ。閉じる。


 次は
広子(ひろこ)たちの部屋だ。広子が寝ているはず。彼女は寝起きが弱いからちゃんと起こさないとな。こんこん。……やっぱりだ。開けよう。


 ベッドの上にはすやすやと深い寝息を吐いている広子の寝姿が。かわいいなぁ。これを見るなら、起こさなくてもいいような。


「憲邇、見すぎよ、でれでれしちゃって」


「う、はい。広子、起きなさい、朝だよ」


「……? はぁ……ん……あ、憲邇さん」


 胸を押さえたまま起き上がる(どうしてだ、くそっ)。「おはようございます」


「おはよう」「おはよう広子さん」


「……ふふ。憲邇さん、昨日は大変でした」


「ああ、悪かったな」


「いいえ、とんでもないです。はぁ」


「ふふふ。まあいい、起きて姿を見せろ、きちんとしたままかどうかな」


「はい」


 さっと立ち上がる。広子は一糸纏わぬ姿だった。一瞬だけ裸の大切なところがのぞき、すぐに隠される。照れと恥ずかしさに身を竦め、いいですかとお伺い。


「いいよ、よくできたね」


「はい。たまには裸で過ごすのもいいですね、夏だから過ごしやすい」


「そうだろう。私も夏は大抵裸かパンツ一丁だ」


「もう、だらしない」


「憲邇、部屋でだけにしときなさいよ、それでうろうろされちゃ困るわ」


「うぅんでも暑いしなぁ。考えとくよ。じゃあ、朝食で」


「はい憲邇さん」


 閉じる。広子はやはり二度やろうが疲れはないようだった。柚香里の言が正しいのかも。


 次は
千歳(ちとせ)たちの部屋だ。こうも頻繁に私の家へ泊まっていていいものか不安だが、その辺の按配はもう彼女たちもわかっていることだろう。口うるさくする必要もない。ノックする。


「はーい。千歳さん、起きて」


 
静香(しずか)のほうが寝起きがいいのも珍しい、中に入ると、やっぱり驚かれた。


「せんせ、それに柚香里さん」


「おはよう静香」「おはよう静香ちゃん」


「おはようございます。千歳さん、起きて」


「んー……あ、先生、おはようございます」


「おはよう」「おはよう」


「千歳さん珍しいですね、起きれないの」


「ん? ふぁ、先生がねぇ、昨日ねぇ、ひどいんだぁ」


 まだ寝ぼけてるのか、変な言葉遣いだった。確かに昨日はすごい時間に起こしてしまって、悪いとは思っていたけれど。


「昨日は私なしかなぁって早めに寝たんだけど、そうじゃなくって」


「ああ、そうでしたね。せんせは昨日ひどかったですから」


 なぜかにっこり見つめられる。静香も昨日夜更かしさせてしまったが、それには強いようだ。


「二人ともちょっと立ってくれるかな、昨日のやつをきちんとできたか見せてくれ」


「はいせんせ」「はーい」


 静香はしゃっきり、千歳はふらふら立ち、すらりとした肉体を見せてくれる。静香はやっぱりふりふりのレースがピンク色でかわいらしく、千歳はチェックの薄緑エプロンだけだ。念のため千歳には回るよう言い、昨日苛めまくったお尻がのぞき満足する。


「どうですか? きちんとできたでしょ?」


「ああ、偉い偉い」


「ふぁ……先生、夜更かしは平気ですけど、昨日はちょっと激しかったです」


「ごめん、やりすぎたかもね。次は優しくするよ」


「お願いしますね」


「じゃあせんせ、着替えるので」


「はいはい」


 この調子じゃ誰も見せてくれなさそうだ。精々
(いずみ)くらいか? 可能性がありそうなのは。


 続いて良子たちの部屋へ。もう起きているかな、とノックすると、返事が遅い。開けると三人ともまだ中でぐうぐうと寝ていた。……? なんだ、あのベッドの空き部分。そうだ、いつもあるんだよなぁ、誰の部屋へ行っても。なんなんだろう。


「三人とも、起きてくれ、朝だよ」


「……!」がばっと良子が。「ご主人様……ああすみません、メイドの癖に起こされるなど」


「いいのいいの、憲邇が早く起きただけなの」


「え、あ」時計を見てびっくりされる。「そ、そうでしたか」


(めぐみ)(ともえ)、起きてくれ。朝だよ」


「……はふぅ……あ、憲邇様」


「ん、憲邇先生。おはよう」


「おはよう、三人とも」「おはよう」


「おはようございます」


「ご主人様、今日はなにかあるんですか?」


「いや、偶然目が覚めてね、それだけだよ。そうだ愛は、昨日悪かったね、一緒に寝るなんて言って」


「いいえ、とんでもないです。私が眠るまで傍にいてくれました」


 とはいえ、残念そうだ。「今日こそは一緒にしよう。二日目が辛いというならなおさらだ」


「……はい」


 この笑顔は、曇らせたくない。


「よし、三人とも立ちなさい、昨日のままか調べるから」


「……」


 いそいそと三人が立ち上がる。良子は薄い水色のふりふりな、巴は薄い緑色のパンツ一枚だけで、恥ずかしそうに上下に腕を伸ばしていた。愛は真っ白なエプロン一枚、回らせるとお尻も見え、きちんとしていたようだ。いやぁ千歳も愛も、裸エプロンって横から胸がのぞくのが一番いいよなあいてて!


「憲邇っ、でれでれしないの」


「痛い、痛いよ」


「ふふ、憲邇様尻に敷かれてます」


「見てないで助けてくれっ」


「いいから次行くわよ、三人とも朝食には早めに来なさいね、わたしと憲邇で作るんだから」


「えっ」


 ばたん。耳を引っ張られながら
紗絵子(さえこ)たちの部屋へぐいぐいとされると、引きちぎれそうになる。


「柚香里、勘弁してくれ、それに朝食を私たちが作るって」


「あら、わたしが今決めました。文句ある?」


「……ないです」


 まあ、たまには。やってみたい気もしてきたし、いいか。


「ふんっ」


「痛いってっ」


 ますます引っ張られる。なにか怒られるようなことしたかなぁ、うぅん。


 紗絵子たちの部屋へ。そこでようやく痛みから解放され、何度もさすってしまった。


「パティ、起きてるかい」


「はいマスター」


 がちゃりと扉を開けると、髪を梳いているパティの姿が。うぅん、いいなぁ。いいなぁ。かわいいぞ、パティ。いいぞ、裸エプロン。


「ふわぁー、あら憲邇くん、おはよう」


「おはよう二人とも」「おはよう」


「おはようございます」


「なぁに憲邇くん、どういう風の吹き回し?」


 全員だな、ちくしょう。「ただの気まぐれ」


「そう。ほらどう? ちゃんとしたわよ?」


 紗絵子は自ら立ち上がり真っ白フリル満点のかわいい下着を披露してくれた。


「うん、よろしい。パティ」


「はははいますたぁ」


 パティも立って一回転。ちっちゃなお尻が裸エプロンだとわからせ、よしよしと唸ってしまう。花柄のエプロン、かわいいなぁ。


「はいはいよくできました。行くわよ憲邇、朝ご飯作らなきゃ」


「ええ、もう? もうちょっといたたた」


 また引きずられる。なんなんだ、もう。


 キッチンで二人、朝食の準備だ。さすが柚香里は阿吽の呼吸で、二人は綺麗なコンビネーションで朝食を作り上げていった。


「まったく憲邇は、やっぱりじゃない」


「なにが?」


「ほんっとーに全員とやったのね」


「ああ、うん」


「それでも足らないのね、変態」


「しょうがないじゃないか、男はそういう生き物なんだよ」


「限度ってものを知りなさい、ばか。まったくもう、一日一回で充分でしょ」


「いやぁ、とんでもない」


「まったくもう、まったくもう」


 それが原因だったか……すまない、本当にやらないとダメなんだ。許してくれ。


 出来上がった朝食を並べ、みんなと朝食へ。


「いただきます」


 今日はまゆとだ。詩音はきちんと裸エプロンで嬉しい。今夜もやらないとなぁ。


「ご主人様っ、また詩音ちゃんを苛めて、最低ですっ」


「ち、違うの。ゎ、わたしから、言ったの。これする代わりに、えっちのとき、がおーってするのをやめてくださいって」


「……ああ、なるほど」全員納得していた。


「憲邇くんったら、お母さん代わりにするからやめたげて?」


「ダメ。そうだ、誰がいいかな、うん、巴。広子のお尻触ってやってくれないかな」


「え、な、なんで今? え、えっちのときならやるわ」


「ちょっとした確認だよ、いいからやれ」


「は、はい……」赤面し俯いた広子の元へ巴が、そっとお尻を触ろうとする。が、椅子にしがみつきダメですと体を揺らしていた。


「広子、立て」


「……はい」


 椅子を引き立った広子のお尻を触る巴。巴はすぐに赤面し意味を知り、ぎろっと私を睨んだ。


「なにこれ、あんたが言ったの?」


「どうだった? 言いなさい」


「ぐっ……ちゃんと、履いてないわ。ノーパン、よ」


「……っ」


 赤く蹲るかわいい広子。目を泳がせる面々、俯く面々。耳を塞ぐ春花、目を丸くする花織。見ていて面白かった。


「広子は今日から三日罰ゲームでそうなんだ。よろしくね」


「もうっ、ご主人様ったらっ」


「ししし、憲邇さんひどいんだ、あーん?」


「うん、おいしい」


「お仕事頑張ってくださいね、広子さん」


 千歳、お前はよくこういうときに素の言葉が言えるね、すごいよ。


「そうそう、今日は帰りが何時になるかわからないんだ、ちょっと予定があってね。先に食べててくれ」


「はーい」


 今日の話し合いでまずはみんなの距離を縮めたい。それからだな。


「じゃあ私は
五十川(いそがわ)先生にでも会ってこようかしら。襲われたら憲邇くんのせいにしようっと」


 襲わないって。


「まゆ、明日登校日でしょ。明日までの宿題終わってるんでしょうね?」


「もう全部終わったよー。バカにすんなよなっ」


「あら、まあ。偉い偉い」


「みゆはどう、平気?」


「う、うん。明日までのは、ちゃんと終わってる」


「パティ、宿題なんて忘れてなんぼよ」


「ちゃんと終わってるよ。ママと違ってずぼらじゃないもん」


「ガーン……どうせママはずぼらよ、小中高と宿題なんて出した覚えはないわ」


 嘘つけ、真面目だったって祖父が言ってたぞ。


「こうなったらパティを不良の道へ誘うしかないわ。毎晩遊び呆けるずぼら道へと、いざパティ!」


「や、やだよ。私きちんと学校行って、看護師になるのが夢だから」


「まあ! 憲邇くんまた若い子たぶらかして! 看護師は生半な覚悟じゃ勤まらないのよ、憲邇くんがきっちり教えたげなさいね!」


「うん、わかってる。パティが大きくなったら、私の補佐で働いてもらおうかな」


「はいマスター。えへへ、頑張ります」


 ありがたい話だ。パティなら、いやここに集まった女の子たちなら、同じ病院で働ける気がする。


 あれだけの苦労を、困難を。乗り越えたのだから。


 さて、本日は柚香里と静香の下着を見せてもらう。静香はピンク、柚香里はふりふりの白い下着で眼福眼福。今日もできたらえっちしようっと。いやぁ、恥ずかしがらせるのは楽しいなぁ。


「ああお前、鞄頼む。そろそろ出るから」


「はーい! 待っててあなたっ、えへっ」


 まゆがとても嬉しそうにたたたと駆けていった。やっぱりたまにお前と呼ぶのもいいな、らしい雰囲気がいい。普段からもしよう。


「えいしょ、うんしょっ。おもーい。へへへ、奥さんは大変だっ、えい、しょっ」


 まゆがえっちらおっちら持ってきた鞄をひょいと受け取る。「ありがとうお前。行ってくる」


「はーい! あ、な、たっ。ちゅっ」


 投げキッスされた。のりのりだなぁ。


 玄関前で全員といってきますのキスをして。準備万端、気力充実。


「いってらっしゃい」


 いってきます。今日も一日、頑張るぞ。
















 はぁ、お母さんすごいなぁ。あれ、多分十回くらい憲先生とえっちしてる。それでぴんぴんしてるんだから、すごいなぁ。わ、わたしまだ全然だよ。いいなぁ、すごいなぁ。二回でひいひい言ってたしなぁ、すごいなぁ。


 よいしょ。よし、ふわふわ白のワンピース。くるり、ふんわり。よし。これで一回転しろって言われてもいいよね。いっつも考えちゃうなぁ、これでえっちしないってわかってても。


 また裸エプロン、戻さなくっちゃいけないの。うふふ、恥ずかしいなぁ。


 っと、もうすぐ来るんだった、先にお茶菓子用意しとかなくっちゃ。えっと、どこにしまってあるかな。


 ぱたぱたと応接間にお茶菓子を運んで、お茶の準備をしていると玄関から音がした。


「はーいただいま」


 ぱたぱた巴さんが。最近は巴さんが代わりにしてることが多くって、良子さんはメイド長らしく教えることばっかり。もう慣れたものの巴さん、メイド服も似合ってる。


「詩音ちゃん、お客さんだよ」


「はぁい」


 来た。髪、跳ねてない、よし。玄関まで。


「おっす、こんにちは」


「こ、こんにちは」


 
早川(はやかわ)さんご夫妻が到着した。丸メガネの夫さんが後ろから入ってくる。先に奥さんの百恵(ももえ)さんがジーンズを玄関に上げた。


「上がるぞ、おい早く来い」


「はいはい」


「こちらです、どうぞ」


 奥まで案内する。ふわふわソファのある応接間に案内して、先に座ってもらう。


「やぁ、久しぶりだね。といってもまだそんなにかな?」


「二週間ぶりくらいです」


「そうか、や、月日の経つのは早い。年食った」


「二十代がなに言ってるんだ、あ、どうも」


 お茶を出しておく。合うかな、ほうじ茶だけど。


「それで、こないだの件だけど」


「はい、お願いしようと思います」


「ほんとか! やった、ありがとう!」


 手を握られてぶんぶんされた。う、うわぁ、激しい人だぁ。


「おいおい、百恵さん、そのくらいで。ごめんね、こいつはこういうやつなんだ」


「こいつとはなんだ、ばか者。まあいい、ありがとう。きっと君の絵を売ってみせるよ。高くね」


「は、はぃ、お願いします。そ、それでわたしは、どうすればいいですか? な、なにをすれば」


「基本的には絵を描いてくれるだけでいいよ。あたしらがそれを運び、競売にかけたり、直接ほしい人と交渉して売るから。手数料はもらうが、基本的に利益は君に全部上げる。こう言っちゃなんだが、これはあたしにとっては道楽みたいなもんなんだ、儲けようって気はさらさらない」


「い、いいんですか?」


「いいさ。自分で選んだいいものを、自分が関わって売る。それがしたい。自分が関わる、ってとこがミソでね、会社じゃ最早それを望むのは不可能になってしまった」


「はぁ……」


「要は自分で動きたいんだ。百恵さんは会社で自分が動くわけにはいかない立場になってしまったからね。それに、特に詩音さんの絵なら、受け取り人はさぞ喜ぶだろうしね」


「ああ、それがわかってる。だからこれは特にやりたいんだ、やらせてほしかった。あたしが売る商品で人が笑顔になるのが見れる! なんだ最高じゃないか、あっはは」


「痛い痛い」背中叩いてる。


「だから、詩音さん。最高の絵を描いてくれ。君ならできる」


「……はぃ」


 なんだろ、強気のこの人に言われると自信が持てそう。ふふ、がんばれそう。


「あ、じゃあ、十枚くらいいいなっていうのができたんです。見てくれますか」


「おお! 早速か! おい
(いさお)、来た甲斐があったな」


「はしゃぎすぎだよ、落ち着けみっともない」


「も、持ってきますね、ちょっと待っててください」


 走ってく。こ、転ばないようにしないと。いつもならこういう、興奮したときって転びやすいから。気をつけ、ないと……


 なんとか自分の部屋へ。入って完成した絵を入れてあるとこを探す。えっと、これとこれと、これ、これこれ……結構描いたなぁ。これは練習用のやつ、これは失敗作。うぅんいいのだけにして残りは捨てようかなぁ。場所とるし、あとで考えよう。よし。全部まとめて持っていく。いい紙に書いたから大丈夫なはず、紙もちゃんと選ばなくっちゃ。


「お待たせしっ」がくっ。べたっ。ううう、また転んじゃったぁ。どうして、もう! バカ!


「おいおい大丈夫か? 頭からがつんといったぞ?」


「平気かい?」


「ううう……だ、大丈夫です」


 慌てて飛び散った紙を拾ってく。手伝ってもらうのがなんだか情けない。


「……」


 えっと、八枚、十枚持ってきたからあと二枚、えっと、あれ? あ、二人が見てる。な、なんだろ、じっと見てる。


「こりゃあ……天才だな」


「ああ、間違いない」


「あ、あのー……?」


「やあすまないすまない。テーブルに広げようか」


 なんだろ、わかんない。とにかくテーブルまで持ってって、その上に全部を広げた。


「うお……」


「おお……」


 しばらく待ってみる。見るのに時間、いるよね。わたしは何回も見たけど。


 海岸線を描いたもの。公園で遊ぶ桜園の子たちを描いたもの。綺麗な砂浜と、ごみの捨てられた、流れ着いた砂浜(この二つはセットにしたいな)。おいしいハンバーグを食べて笑う子供。親子三人が手をつないで歩く後ろ姿。お花屋さん。病院でやさしく看護をする女性。髪を束ねてる柚香里お母さん。それから……勇気を出して描いた、口づけをする二人。ゎ、わたしじゃないの、憲先生と、絵里さんをイメージして、ちょっとだけ絵里さんが背伸びする、キスシーンなの。ちょっとえっちかなぁ。


「……」


 ど、どうかな。わざと憲先生のは外したんだけど、どうかなぁ。憲先生のをこの前ほめてもらったから、別ので挑戦したくって。どう、ですか?


「いや、いや……こんなに温かなものに触れたことはない。見てくれ、鳥肌が」


 わ、ほんとだ。ぶつぶつが出てる。


「百恵さん、大丈夫か? いやこれは、すごい。俺も感動してるよ」


「そ、そうですか? ぁ、ありがとうございます」


「いやぁ、あたしって心汚れてるなぁ。いや、うん、すごい。なぁ、勲」


「ああすごい。こんなにぶわぁっと伝わってくるものはすごいよ。パリにもいなかった」


「ぃ、言い過ぎですぅ」


「詩音さん、すごいぞ、どれもこれも。素晴らしい。伝わってくるんだ、詩音さんの感情と感動が。こんなにも、温かい。これが癒しだと、断言できるほど」


「ううう」


「これは素晴らしいよ、俺もそう思う。売るのがもったいない、家に飾ってあればなんて華やかになる」


「ううう」


「詩音さんはこれで人を幸せにできるよ、絶対に。前を向いて、ね?」


「……」


 強気な人の温かな声は、すぐに届く。前を向いて、笑っている二人を見て、わたしも。わたしも、にっこりするの。


「一つだけ、というか一組か、この砂浜の絵は二枚で一組だろう? これはね、海の現状をよく表していて、人の心に訴えるものがあるね。これは温かい優しさとは別だが、それでも優しさがないと描けないものだ」


「これを見て少しでもごみを捨てるような心ない人が減ればいいなと思う。いや、そう信じて描いたんだろうけど」


 二人ともすごく描いた人の考えを見抜けてた。すごい。この二人なら安心だなぁ、すごいなぁ千歳さんのお知り合い。


「よしきた、任せろ。これをとびっきり高く売ってやる。全部売りつくす頃には、数年は楽して暮らせるくらいにね」


「できたらな。新人の売り値なんてたかが知れてるけど、これならって思うな」


「当たり前だばか者。詩音さん、任せなさい。きちんと全部売ってみせる。しかし十枚も一気に競売に出したらいけないんじゃあないか? 突然十枚もあったら、あれもこれもほしい人がいたら一気にだと買えないんじゃあ」


「そこを考えるのが百恵さんの腕の見せ所じゃあないのか? 俺はよくわからんよ」


「ああそうか、よし任せろ。なんとか売ってやる。詩音さん、ありがとう。これを見てまずあたしらが元気になったよ。ありがとう」


「い、いえ」


「次また新しいのができたり、売りたいのができたらいつでも言ってくれ。詩音さんのことなら時間を空ける。勲、すぐあたしに取り次げよ、最優先事項だ」


「ああ、わかった。俺もありがとう、元気になるよ、これは。また描いてくれ」


「は、はぃ。つ、次は時間かけて、大きいのを描こうと思ってるんです。それが終わったら、油絵にも挑戦しようかなぁと」


「うむ、いいぞいいぞ。絵だけじゃない、芸術家の創作活動はいろいろある。好きなのをやるといい」


「あ、でも、やっぱり絵を描く一本に絞りたいなぁと思ってるんです。わたし最近、気がついたらなにか描いてて。だからそういう人間だと思うんです」


「なるほど、確かに。そういう人はいるね。だが無理はするなよ、くれぐれもな」


「はぃ」


「よし、さっそく
土田(つちだ)さんに話をつけよう。行くぞ勲」


「はいはい。じゃあまたね、詩音さん。頑張って」


「はぃ。さようなら」


 玄関まで送ってく。手を振る二人が見えないくらいで腕を組み出したのを見て、笑顔になった。


 これで生活していけたら、いいな。今は無理でも、将来的には。がんばろうっと。


 もう少し勇気が持てたら。また学校にも、行こう。行きたい。


 お友達は温かいのだから。
















 お花屋さんのお昼休み。ちょっと車で病院まで。この時間五十川先生いるかしら、と思いながら、時間がないなら仕事終わりにことづけだけでもしようと車を走らせていた。彼、イケメンなのよね。ふふ、会うときっと元気をもらえるわぁ。楽しみ。


 久しぶりの病院へ足を運ぶ。わぁ、変わってない。ふふ。懐かしい空気だわぁ。


「あ! 
彩子(あやこ)さんじゃない」


「あら紗絵子さん! きゃあーっ、久しぶり」


 二人で手を合わせぴょんぴょんと飛び上がらんばかりに喜んでしまった。まあまあ、相変わらず元気ねぇ。


「帰ってきたとは聞いてたけど、どうしたの? 体調悪い?」


「いえいえ、五十川先生にちょっと取り次いでもらえるかしら」


「五十川先生ね、わかった。あ、ダメよ紗絵子さん、五十川先生はみんなのアイドルなんだから」


「あーら、じゃあますますほしくなったわねぇ、もらっちゃおうかしら」


「ひっどーい。ふん、ちょっと待ってなさい」


「あはは」


 ぷんすか彩子さんがつかつか奥へと引っ込んでいった。いいわねぇ、もう彩子さんしかいないんだから。大事にしたい。


 すぐに戻ってきた。走ってきた五十川先生は憲邇くんに勝るとも劣らぬイケメンで、白衣がまた似合っていた。ちょっとインテリ系ね、ふふ。


「紗絵子さん! お久しぶりです」


「あらお久しぶり。私に用って、なにかしら。相変わらずイケメンねぇ、これで何人たらしこんでるのよ、うり、うり」


「……」


 ぐいぐい押してやる。肘は痛いか、ほれほれ。


 がしっと腕をつかまれた。「結婚してくれ!」


「……」ざわざわ。病院の会計前、一番人の通るところ。通り過ぎる人、看護師、みんな私たちを見ていた。


「再婚はまだだって聞いてます。俺もようやく、あなたと添い遂げられるくらい成長しました。安定した収入も貯金もあります。看護婦をしろとは言わない、俺が食わせてやるし好きなことさせてやる、幸せにしてみせるから!」


「……あらあら、まあまあ」


 四十のおばさんつかまえて、二十七の好青年が言うことじゃあないわ。嬉しい冗談だけれど、受けるわけにはいかないのよ。


 私には憲邇くんがいるの。大好きな人に昨日もえっちされちゃったわ。ごめんね。


 すっと、首を振る。


「こんなおばさんにありがとう。でも、私はもう結婚はいいの。今お付き合いしている人もいるけれど、結婚は考えられないわ。もう、年だしね」


「そんなことはない! 今見てもなにも変わってない、美しくなってすらある! 瞼の下のあなたと、今のあなたになにも違いはないんだ!」


「あらあら、まあまあ」


 嬉しいこと言うわねぇ。この顔でこんなこと言われたら、大抵は落ちちゃうわ。おばさんキラーね、ホストだったら大成功でしょうに。


 あ。なにごとかと、偶然かはてさて憲邇くんが見えた。泉さんもいるわ、広子さんはいないけど。


「……五十川先生、絶対そっち系の人だと思ってたなー。深町先生狙いの」


「そうそう。看護師ことごとく断り続けてさー」


 看護師(女性)のひそひそ話が聞こえる。まあ、そんなお耽美雰囲気もあるわねぇ。


「ごめんなさい。私はあなたが、かわいい男の子にしか見えないわ。ごめんなさい」


「……そう、ですか……そうか……」


 ぷしゅう、と気の抜けた先生はふらふら、すぐ傍まで来ていた憲邇くんにぶつかる。


「おい五十川、平気か」


「長かった片思いも終わりか……おい深町、変なやつがついたらお前なんとかしろよ、わかってんだろうな?」


「あ、ああ」


「なぁに、あんなにちっちゃかったときから私が好きだったの?」


「はい。あなたに会いたくて、必死で医者になりました。医者になれば会えると」


「あらまぁ、うふふ。それは光栄ねぇ。もっかいちゅうしてあげよっか?」


「うっ」


「あ、それともブラ見たい? あーんなに見たがってたじゃない、今日は透け透けなの、下のほうが好きかしら?」


 ブラウスのボタン外して胸元強調、スカートもするするとめくりかける。


「おい母さん、やめろ」


「……あのときからそうやって、スキンシップしてくるからいけないんですよっ。冗談交じりにあちこち触らせてくるからいけないんですっ」


「あらぁ? ふふふ、そんなにおっぱい触らせてあげたの根に持ってるの? あんなに鼻の下伸ばしてたくせに」


「い、いつの頃だと思ってっ、ああもうそれじゃあ、またっ」


 びゅんと走り去ってしまった。あーあ、あれじゃあ今見た口の軽い女性看護師連中から評判がた落ちね。しーらないっと。


「いいないいなぁ、紗絵子さん言い寄られちゃって。どうして断るのよ」


「彩子さん、私はもういいのよ。結婚はいいわ。したくない」


「そう? 五十川先生なら本当に安泰よ? 好きなことさせてもらえるわ」


「でも、彼のこと好きじゃあないもの。それがすべてよ」


「なるほど。紗絵子さんらしいわ」


「憲邇くん、お仕事どう? あら泉さんも、こんにちは」


「こんにちは」


「母さん、衆目の前であんな真似は二度としないでくれ、恥ずかしい」


 お前は私の女だろう、と。それが滲んでる。うふふ、わかってるわ。ありがとう。


「はーい。しょうがないわねぇ」


「紗絵子さん、大体三週間後ですので、出席してくださいね」


「ええ、わかってるわ」


 泉さんのウエディングドレス姿、楽しみにしてる。


沢田(さわだ)さんも親孝行、いやおばあちゃん孝行ものねぇ。私の娘なんてねぇ、たまに顔見せにでも帰ってきやしない」


「あらそうなの? それは寂しいわねぇ」


「でしょう? 深町先生はいいわよね、一緒に住んでるんだから」


「その代わり母さんはうるさいんですよ」


「あははは! それもそうでしょうねぇ」


「なんですって? 憲邇くん、これは決闘ね」


「わかったわかった、そろそろ昼休みも終わるからあとでね」


「むうー。バーカ! 彩子さん、今度食事でもしましょう、飲みましょうっか」


「ええ、喜んで。それじゃあね、また」


「またねー」


 三人を見送る。忙しそうね。ほんと、ここに戻るのも悪くないわ。


 くるりと踵を返して。私もまだまだ捨てたもんじゃないわねと、にやっとしながら帰っていった。うふふ、純粋に嬉しいわ、自慢しちゃおうっと。


 彼にはもっと似合いの、若い子がいいわ。忙しい彼を支えてあげられる、人がね。


 私には憲邇くんなの。憲邇くんなのよ。
















 自分の分の洗濯物をたたむ。はぁ。これ、着ちゃダメかなぁ。ううう、裸エプロンは恥ずかしいよ。ずっとこれなんて、はぁ。


 今のわたしは、かわいいお馬さんのエプロン一枚、だけ。横からだとふくらんできたおっぱいが見えちゃう。後ろからお尻は丸見え。はぁ。憲先生のえっち。これでお出迎えしたら、喜んでくれるかなぁ。げ、玄関でえっちになっちゃうかなぁ。はぁ。恥ずかしい。


 でもやらなくちゃ。大好きな憲先生の言うことだし、じ、自分から言っちゃったし。こ、これなら恥ずかしいこと言ったほうがよかったかなぁ。ううう。


 こんこん、誰だろう。「詩音ちゃん、お買い物手伝ってくれない?」巴さんの声だ。


「……ぃ、今は、その、こんな格好だし……」


「……あ、ああ! そ、そうだった。ごめん。あはは、それじゃああたしたちお買い物に出るから、お弁当の練習とか、してていいよ」


「ぅ、うん。わかりました。いってらっしゃい」


「うん、いってきます。が、頑張ってね」


 なににがんばるのか、なんとなくだけど。わかる。だ、誰もいなくなるのかな、だったら楽だけど。ああでもそうするとお客さん来たとき出てけないよ。


「ぁ、あの、誰か残ってますか?」


「え、あ、そっか。ごめん、みんな出てることになるね。うぅん、しょうがないから、誰か来たら居留守使っていいよ」


「そ、そうですね、すみません」


「いいのいいの。悪いのはあいつよ。それじゃあね」


 ぱたぱた。ちょっと悪いなと思うけど、しょうがないよね。はぁ。誰も来ませんように。


 そっと扉を開ける。誰かがまだいてそうで、じっとわたしをのぞいてそうで、ちょっと怖い。で、でも平気。平気なの。こんな男か女かわかんない子供、見たいって人は憲先生ぐらいだから。


 誰もいませんように、誰にも見られませんように、と祈りながら。そっと廊下を歩いていった。


 お尻に目が、できたみたい。はぁ。


 お台所でお弁当練習。今日包んであげたやつ、おいしいって言ってくれるかなぁ。う、うまくできたような、できてないような。が、がんばろうっと。もっともっと練習して、柚香里お母さんみたいなおいしいのを作れるように。おいしいよね、柚香里お母さんの当番の日とか、良子さんもだけど、母の料理ってすごくおいしい気がする。


 不幸中の幸い、っていうか、エプロンだからお料理には適してた。不思議、変なの。まあいっか。よし、できた。お弁当は冷めてから食べるし、帰ってきたらいつもみたいに、お夕飯に足して食べてもらおう。それで批評してもらうの。


 夢中になると見られてるかも、というのが消える。あわわ、さっとお尻押さえて、誰かいるかなって振り返っても誰もいなく、ほっとする。ダメだなぁ、もっときちんとしてないと。のぞかれてたら最悪だよ、恥ずかしい。柚香里お母さんやみゆちゃんなら、こんなことないんだろうなぁ。わたしは女としてまだまだだ。


 インターホンが鳴った。あ、う、うわ、ど、どうしよう。で、出なくてもいいよね、誰もいませんから、早くどっか行ってください。また鳴った。ううう、どうしようかなぁ。鍵なんてこの辺はかけないから、お家に住んでる人だったらすぐ入ってくるし、静香さんたち訪ねてくる人でもそうだし。ど、どうしようかな、様子だけ、様子だけ見よう。


 玄関からまっすぐ伸びる廊下の、角から顔だけ出してのぞいてみる。玄関は開いてる、誰も出ないから入ってきてるみたい。あ、近所のおばあさんだ。すっごく早起きの人。ううう、挨拶したいけど、こんな格好じゃあなぁ。しょうがないから放っておく。


 しばらくすると諦めたのか帰っていった。ふう。なんだったんだろう。あとで話しておかなくっちゃ。


 それからみんなが帰ってくるまでずっと絵を描いていた。練習用に今はくだものを描いてる。みずみずしさが足らない、もうちょっと。かりかり。


「詩音ちゃん、ご飯ですよー」


 良子さんだ。え、あれ、もう夜ご飯? 早いなぁ。いつもだけど、絵を描いてたら時間がいくらあっても足りない。まだ途中の絵を残して、部屋を出た。


 食堂には憲先生と泉さん、広子さん、静香さん、千歳さん以外そろってた。憲先生今日は遅いって言ってたし、静香さんたちもいっつもいるわけじゃないしね。


「いただきます」


 みんなで夜ご飯はおいしい。こ、こんな格好じゃなければもっとだ。で、でも憲先生いないからあんまりじろじろ見る人いなくってよかった。奈々穂さんやまゆちゃんくらいだけど、ご飯がおいしいから見てないや。ふう。


「ぁ、あの、
牧西(まきにし)のおばあちゃんが来てました。こ、こんな格好だから出られなくって」


「ああ、そうですか。わかりました、明日ご挨拶しておきますね。巴さん、一緒にですよ」


「ええ? りょ、良子さんだけでいいんじゃ」


「顔を覚えてもらいませんとね、ふふふ」


 怖いメイド長だ。


「さ、紗絵子さん、五十川先生とはどうでした?」なにか話してると気が紛れる。恥ずかしい思いがちょっと減るんだ。


「それがねぇ、告白されちゃった。結婚してくださいだって」


「まあ、紗絵子様おめでとうございます」


「ちょっと春花さん、私には憲邇くんがいるのよ、
OKするはずないでしょう」


「ああ、そうでしたわ。すみません」


「五十川先生イケメンですのに、もったいないですよ」


「うるさいバカメイド。私はずっと憲邇くん一筋なのよ。浮気なんてするはずもないわ」


「憲邇先生のが明日女子高生と浮気ですもんね」


「そーだよー。憲邇さんうわきしたらビンタしなくっちゃ」


「そうね、まゆ、蹴っていいわよ」


 憲先生いないからって好き放題言い過ぎですよ。するはずないじゃないですか。


「け、憲邇さまはうわきなんてしませんっ。ねっ、奈々穂ちゃんっ」


「うん。せんせぇうわきなんてしないよぉ。みんなおかしいの、ふふ」


「……」


 やっぱりみゆちゃんたちには負けちゃうの。奈々穂ちゃんにも、勝てっこないの。


「ごちそうさま。さあさあ、みゆ、早めにお風呂入っちゃおうか。憲邇のバカはかなり遅くなるって」


「う、うん。まゆちゃんも一緒に」


「うん。お母さんも」


「はいはい」


 最近はあの四人が仲良しさんだ。うふふ、いいな。ゎ、わたしも、最近は巴さんと紗絵子さんと一緒なの。仲良しなんだから。


 みんなお風呂に入って、明日の準備もして。わたしはまだ裸エプロンで。夜の時間が進む頃、次々と寝てく人。


 わたしは一人、帰りを待つの。憲先生がえっちしてくれるし、こんな格好だし。みんな寝ちゃっても、一人明かりをつけてリビングで絵を描いていた。やっぱりりんごって丸いのに硬いんだぁ、かりかり。


「帰ったぞ、お前」


 ふわぁと後ろから抱きしめられる……「きゃあ!」がばっ。け、憲先生だ。


「あ、お帰りなさい」


「ただいま。ごめんね驚かせて」


「ぃ、いえ。でも急でびっくりしました」


「急じゃないぞ、玄関でただいまは言ったし、この部屋に入っても言ったし」


「ええ? ぜ、全然気づきませんでした」


「まったく、残念だな。裸エプロンの若奥さんにお出迎えしてもらえると思ったのに」


「ぁ、ご、ごめんなさい。じゃ、じゃあ、やり直しましょうっか」


「お、いいねぇ。じゃあ玄関から入ってくるし鳴らすから、走ってこい」


「はい」


 憲先生が戻ってった。や、やりたいもんね、やらなくっちゃ。


 玄関が鳴る。わたしは走ってそこまでたどりつき、いかにも今帰ったって顔の憲先生に笑顔で言うの。


「お、お帰りなさい、あなた」


「ただいま、お前」


 ちゅっ。えへへ、えへへ。雰囲気、出てましたぁ? わたし、若奥さん?


「ああ、いい格好した若奥さんだよ。新妻だね」


「わぁ、ありがとうございます。えっと、ご、ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ、た、し?」ううう、恥ずかしい。でも楽しいなぁ。うふ。


「お前にしたいのはやまやまだけど、小腹が空いてね。なにかない?」


「あ、お弁当練習したの、憲先生に毒見してもらうやつならあります」


「おう、食う食う。それからお前も食べようかな」


「やぁだ、もう。えっち」


「そんな格好しといてよく言うよ」


 さっと視線のくる横胸とお尻を隠す。


「ぁ、あなたが喜んでくれると思って、こんな格好した、したんじゃない」


 ううう、変かなぁ。でもこういうの、楽しいなぁ。に、新妻気分、いいかも。


「ああ、ありがとう。嬉しいよ」


「……じゃ、じゃあ、ご飯にしましょうね。準備してくるから、荷物片してきてください」


 お尻を隠したまま前を歩く。先に行って準備しなきゃ。け、憲先生見すぎですよぅ、恥ずかしい。


 お弁当を並べて、大食漢の憲先生だから夕食の余りも温めてあげる。ちょっぴり豪勢。


「そうだ、今日のはどうでした?」


「ああ、前のより着実にうまくなっていたよ。よく練習してるね、ありがとう。もうちょっとで自慢できるようなおいしいのになるだろうね」


「わぁ、うれしいです。ありがとうございます。空っぽにしてくれて」


「当たり前だろう。じゃあ、いただきます」


 隣に座って、じっと憲先生が食べるのを見る。しあわせなとき。ずっと続けばいいと思えるの。ふふ。憲先生が食べてるのって、なんだかかわいいなぁ。うふふ。


「お、これはうまい。うまいぞ、詩音。ミニハンバーグがよくできてる。この弁当は大成功だ」


「やった、ありがとう憲先生」


「裸エプロンのお陰かな。緊張感が保てるからかもしれない」


「もう、そんなわけないでしょ」


「いやいや、これはまた裸エプロンしてもらうのもありだな、おいしい弁当が食える」


「……もう」


 あなたがやれと言うのなら。いつでも、覚悟はできてます。


 憲先生はあっという間に全部平らげて、ごちそうさま。「はい、おそまつさまでした。片付けるから、ちょっと待ってて」


「ああ」


 ご飯食べたあとってぼうっとしちゃうよねぇ。ふふ、待っててください、すぐ終わりますから。


「……いいなぁ……」


 一人で食器洗いも慣れたなぁ。掃除、洗濯、ご飯。全部自分でできるまで、あと少し。


「……詩音のかわいいお尻がくりくり動いてるぞ」


「なんですか? なにか?」


「いや、なんでもない」


 変なの。


 食器を洗い終える。エプロンしまって、と。あっ! ち、違う違う、エプロンしかしてないんだった。危ない危ない、脱ぐとこだった。


「じゃあ憲先生、寝ましょうっか。お疲れでしょう」


「うん、おいで詩音。私の部屋で寝よう」


「はぃ」


 手を引かれる。何センチ違うんだろう。春花さんで二十センチだから、三十センチは違うのかなぁ。高い背……太い首。ふふ。わたし憲先生の首、好きかも。喉仏。


 憲先生の部屋。夜はいつ入っても、緊張する。憲先生に喜んでもらわなくっちゃ。


「今日は一日、その格好でどうだった?」


「は、恥ずかしかったです。に、二度とやりたくありませんっ」


「じゃあ、何度でもやらせるぞ」


「ううう……ひどいんだ。いじめるんだ」


「苛めるさ、お前がかわいいからな」ちゅっ。


「ん、憲先生……ん、ん……」


 憲先生の唇は、調理しなくても最高の味が出る。わたしには毎食ほしくなるほど、おいしいものだった。


 キス後に離れて見上げる、憲先生の愛しいこと。


「よし、一回回って見せろ」


「はぃ憲先生」


 少しの距離をとり、そっとくるり、ふんわり回ってみる。いつもワンピースに身を包むと練習してるだけに、もう簡単だった。エプロンの裾がちょっとだけふわっと浮く。それだけ。やっぱりスカートがいいなぁ。


「……いいなぁ……興奮してきた」


「やだもう、えっち。お尻見たでしょ、憲先生のろりこん」


「見るなというほうが無理さ。いいじゃないか別に。セックスのときくらい見せろよ」


「これずーっとしてたんですよ。大変だったんですよ」


 だから、その。今日はやさしくしてくださいね?


「関係ないな。いつものとおりするだけだ」


「ふふ、ありがとうございます憲先生。大好き」


「……詩音、エプロンめくれ。いいからほら」


「あぅ……はぁい」


 そっとエプロンをめくる。わたしの大事なところを、見せてあげた。


 憲先生がほしいって、わかりますか?


「よし、いいぞ詩音。綺麗だ。しばらくそのままでいろ」


「ええ、ううう、ひどいんだぁ」


 じっと見られちゃう。あああ、恥ずかしいよぅ。ううう、大変だなぁ……


 ぱしゃっ。気がつけば一枚。ううう、変態。変態さんっ。ぱしゃっ。ううう、恥ずかしいなぁ。赤くなっちゃうよ。


 次、お尻ですかぁ? ううう……はい、どうぞ。ぱしゃっ。ぱしゃ、ぱしゃっ。ううう。


 ようやく下ろしていいと言われる。その姿でもぱしゃっ。横、ですか、はい。ぱしゃっ。ううう、横から胸がのぞくの、撮ったでしょ、バカ。ひどいです。か、かがむんですか? はぁい。どうぞ。ぱしゃっ。な、なんだかえっち。変態ちっく。


「よし。もういいぞ、詩音。よく頑張ったね。ご褒美あげる」


「はい、お願いします。えっちして、ください。きゃあっ」


 押し倒される。ふわぞくって、くるのがある。憲先生に押し倒されると、ふわぞくぅって、なるの。なんだろ、よくわかんない。上にいてほしい、下にいたい。それだけ。


 あちこちに広がった髪をすくってもらい、さわさわとなでられる。髪好きですね。ふふ。


「詩音……」


「憲先生……」


 見つめ合うだけで、えっちになれる。


「ふむ、今日はせっかくの格好だからイメージプレイみたいなものをしよう」


「いめーじぷれい?」


「詩音は新妻役だよ。さっきみたく、あなたと呼んで新妻らしく振舞ってくれ。私はその相手をしてやる」


「えっ、で、でも、わたし妻だなんて、奴隷です」


「やれ、と言ったのが聞こえなかったのか?」


「……はぃ」


 うれしい。うれしいな。ぇへへ。憲先生、ほんとやさしいんだから。


「ぁ、ぁ、あなたっ。今日もお仕事、お疲れさまっ」


「ああ、ありがとう。お前のそんな格好見たら疲れも吹き飛んだよ」


「やだもう、えっち」


「朝もこうだったからな、向こうで話もずいぶん進んだんだ。お前のお陰だよ」


「あら、ありがとう、あなた」


 絵里さんいっつもこんなのか。ずるだな。


「すぐに帰ってこれなくてすまない、寂しい思いをさせたろう」


「そんなことない、わ。あなたは必ず帰ってくるもの」


 そっと頬に手を寄せる。働きすぎですね、ちょっぴりやせてます。


「帰りを待つのもたの、楽しいのよ。うふふ」


「お前……ありがとう。元気になるよ。頑張ろうって気になれる。実は仕事の関連で忙しくてね、でもこれが終わればじっくり時間をとってやれるんだ。待っててくれ」


「はい、あなた。いつまででも待ってます。は、裸エプロンで、うふ、待ってます」


「バーカ、無理するな」


「してません。あなたがこんなに喜んでくれるなら、いつでもします。……ぁ、愛してるわ、あなた」


「……俺も、愛してるぞ、お前」


 ちゅう……はぁ、らぶらぶぅ。ぇへへ。上からのっしのっし、のしかかってください、ねっ。


 頬ずりしにきた。体中をすり寄せにくる。わたしも憲先生に全身で絡みつき、自分をこすりつけていった。


「ん……ん、ぁ、ぁ……はぁ、あなた……」


「お前……綺麗だぞ」


「やだもう、ほめてもな、なにもでませんよ」


「出るさ、お前のおいしい愛液がな」


 するっ……指が、滑り、わたしの、あそこに、入る。はぁ……えっち。な、舐めてもらうほうがいいけど、こっちも、はぁ、いいなぁ。あ、そうだ。が、がんばって言おう。


「ぁ、あなた。きょ、今日も子作り、しましょっ。ゎ、わたし、あのあの、二人、ほしいの。女の子と、男の子」


「ああ、頑張ろうか。できるまでね」


「うん……」


 嘘でもいい。うれしい。できないけど、まだ無理だけど、こう言ってもらえるのは。憲先生ならできるようになっても変わらないって、わかってるから。うれしい。


 いめーじぷれいって、いいな。新妻って、いいな。ほ、ほかになにがあるのかな、やってみたい。へへ。


 ちゅ、ちゅう。ちゅく、ちゅく。はぁ。わたしのあそこ、準備長いよね、ごめんなさい。早くほしい気持ち裏腹、体は子供だ。胸もぺったんこ、憲先生触ってくれるけど。ちっちゃいの好きじゃなかったら自分の胸、きらいになってたなぁ。


 ぺろん、エプロンめくって。じろじろと見てる。ま、まだかどうか見てる、んだよね? でないと、ううう、恥ずかしいです。


「お前の、綺麗な形してるぞ」


「やぁ、もう、恥ずかしい。言わないのっ」


「俺のも見ろよ、どうだ? どんな形してる?」


「やぁ……やらしい……」


 目をぎゅっと閉じる。憲先生のグロテスクなのなんか見たくないの。えっちすぎるから。今からアレが入ってくるかと思うとどきどきが止まらないから、見たくないの。


「ふふ、恥ずかしがるなよ。夫婦じゃないか」


 ふわ、ぞくぅ……ど、どうしよ、今の言葉で、もぞもぞしちゃう。


「まあ、見れないならいい。そんなお前もかわいいからな」


「ぁっ、ん……ん、あなた……っ」


 またいじられてく。胸と、あそこと、なぜか髪。髪好きですね、ふぇちって言うんだっけ。束ねてるより、そのままのほうが好きなんですよね、それくらいはわかってきました。


 胸をつぶす、男の指先が。あそこを走る、男の指先が。髪を遊ぶ、男の指先が。妻への愛に満ちている、なんて。錯覚できる。


 すると、濡れてくるの。夫の愛に、泣くように。


「挿れるぞ。苦しかったら言えよ、お前はちっちゃいんだから」


「平気……ぁっ、ぁ……ぁ、ん、あなた……」


 あなたという言葉の響きは、それだけでおまじないみたい。苦しさや痛みが全部飛ぶ、魔法の呪文。いめーじぷれい、最高かも。


 根元まで入らず、きっと半分くらいでわたしが埋まる。それがちょっと悲しいけど、埋まるのは幸福だった。支配されている、というのが如実にわかる。この人のものだと、思えば思うほど気持ちよくなる。気がする。


「相変わらずお前はぎっちぎちで気持ちいいな、ふふ。犯し甲斐がある」


「やぁん、もうえっちぃ。やらしいんだから。えっちでいいの、お、犯すなんて恥ずかしいこと言わないで」


「ああ悪い。動くぞ」


「うん……っ、はっ、はっ……んっ」


 憲先生のえっちは、やさしさに満ち溢れてる。わたしが苦しくないようしてくれて、それで硬くしてくれる。うれしかった。もっと楽させてあげたい、好きに動かさせてあげたい。いいですよと、手を握ってもいやいいんだと、やさしくしてくれる。温かかった。心はきっと、感じて、ぬれてる。憲先生は心からちょうきょうしてくるから。ふふ。


「お前裸エプロン興奮しただろ、いつもよりずっと締めつけてくるぞ」


「やぁだ、そんなわけないじゃない。ぁ、あな、ん、あなたがやさしいからよ、っ」


「そうかな、一日裸エプロンで興奮したんだろう?」


「やだ、いじめないでぇ。はっ、はっ、して、ない、してないの。あなたに興奮、してるの」


「うまいこと言って、喜ばせるのがうまいやつだ、まったく」


「ぁっ、はげし、んっ……はっ、はっ」


 こつん、されると、ぞわぞわしい感覚にまたなっちゃう。こつん、こつん、なんだかうれしいの。あったかいの。もっとしてほしいの。ああわたし、えっちなの。


「ん……あなた……もっとキスして……」


 つ、つらい体勢かもしれませんけど、お願いします。キスがやっぱり、簡単に気持ちいい。えっちのこすれるより、今はまだ。


「はいはい。甘えん坊だな、詩音は」


「あなたの唇がいけないの。んふ……はっ、はぁ、はっ、はっ」


「お前の唇もいいぞ、ミツバチの気持ちがわかる気がする」


 わたしは蜜、ですかぁ? うふふ、うれしいなぁ。憲先生うまいこと言いますね。


「じゃあ、わたしはミツバチに刺されてるのね。こんなに気持ちいいなら、どんどん蜜を出さなくっちゃ」


「ああ、ありがたいなぁ。俺はいくら刺しても針がなくならないから、一生この花に止まっていようかな」


「わぁ……ありがとう、ミツバチさん。じゃあ、いつまでも咲いていますね、あなたのために」


「……ありがとう! 大好きだ、詩音!」


「あっ、んっ、はぁっ! わたしも、大好き、あなたぁっ!」


 ゆっさゆっさ、ぎっしぎっし、はぁ、はぁ。ふふ、わたしに苦しくない程度の、激しい動き。こ、これなら、慣れたの。き、気持ちいいの。きっと。


 あっ、ん。お腹さすっちゃダメですぅ。もうっ、ここ弱いってぁん、憲先生……はぁ、はぁ。


「お前はお腹が弱いな、ふふ、知ってるぞ」


「やだ、忘れてぇ。ぁっ、触っちゃや、びくって、抜けちゃうよぅ」


「抜けないさ、こんなにしっかりはまってる。お前と俺は相性抜群だよ」


「そう? うふ、うれしいわ。ぁ、あなたと一生えっちしたいものね。わたしがおばさんにな、なっても、えっちしてくれる?」


「綺麗でいたらな。ずっと綺麗でいろと言ったろう? 守れるならな」


「はい、守ります。あなたの言うことはいつまででも守りますわ。うふふ」


「ああ、かわいいぞ詩音っ」


「ぁんっ、あなたっ」


 はぁ、はぁ。ずんずん、ぐちゅぐちゅ。はぁはぁ。じんじんする。心地いいじんじんとした、痛み。お腹の下から上がってくる感覚……やっぱりこれ、気持ちいい、かなぁ? 甘い気がするの。憲先生からこそ、蜜が出てる気がする。


 いつの間にかエプロンの胸のところがくしゃくしゃになってて、縦に潰されて胸がはみ出しちゃってる。な、ないも同然だけど。ああ、これ、憲先生興奮してますかぁ? ここ、見られてるけど、見て興奮しますかぁ? ぇへへ、するなら、このままでもいいですよぅ、はっ、はっ、はっ……はぁ。憲先生、キス魔、キス上手さん、ん……髪さわさわ、ふふふ、ぁっ、お腹はダメ、ダメなの……ん……


「はーっ、はーっ、んっ、はーっ、はーっ」


「詩音、もうちょっと耐えろ、もうちょっとやらせろっ」


「はい、はい、どうぞっ。あなたの思うさま、えっちしてくださ、さいなっ。んっ、はっ、はっ、はっ……ふーっ」


 かたぁい……かたぁい……かたぁい……ずんずん……かたぁいのが、ずんずん……ごいんっ。あっ、ごいんっ。あっ。……はぁ、はぁ。憲先生……ぁ、あなた……っ。


「よし、ほらお前、赤ちゃん産んでくれるんだろう、言えっ、わかるなっ、言えっ」


 え、えと、自分で考えるんだ、はい、がんばりますっ。


「ええっ、ぁ、あなたの赤ちゃん産みますっ。だ、えっと、だからぁ、はーっ、ひゅーっ。はっ、はっ、はぁっ……だから、だからぁ、えっく、好きぃ、好きなの、大好き、えっと、産みますから、えっと、赤ちゃんほしいの、ほしい、えと、そうだっ、ナカダシしてっ、ナカダシ、はーっ、はっ、ナカダシ、して、して、して……ぁんっ」


「足りないぞっ、どうしたお前っ」


「ぁっ、許してぇ。言いますから、産ませてください、えっと、はっ、あなたのおち○ちんから、ゎ、わたしのおま○こへ、ナカダシ、してくださいませっ、どうかぁ、んっ」


「よしっ、いいぞっ、いいぞお前っ。興奮したっ、詩音っ」


「あな、あなたぁ……んっ、はっ、はっ、はーっ、ひゅーっ、はぁっ」


 憲先生……頭が熱い、焼ける……じりじり、じんじん……こすれてる……引っかいてる……わたしのあそこ、ぬれてる……ああ、気持ちいいの……


「詩音っ」


「ぁっ
 ……あぁ


 大好きな人の精液が流れてくる……あったかい、うふふ……赤ちゃん作ってるの……たっくさん、ああ多すぎるよぅ……ああ、ああ、いい気持ち、あったかくって……すぐに溢れちゃうの……いっぱぁい……まだ出てる……まだ……まだ……まだ……な、長いよぅ……


 いつまでも続く、憲先生の射精。わたしはぼうっとしてそれを受けていた。心地いいじんじんにすべてを委ねて。はぁ。はぁ。


「ぁん、あなたぁ。抜いちゃダメだったらぁ」


「……わかったよ」


 うふふ。ごろごろ。甘えちゃうの。らぶらぶ。ちゅっ。


 しばらく二人は一緒だった。一つなの。


 抜くとごぽぉって、すごい音がする。こ、こんなに、はぁ……えっちっ。


 エプロン、汚しちゃいましたね。ふふ、また汚しても、いいですよ。


「いやぁ、今日はよかったよ、すごく楽しかった。イメージプレイはいいね」


「は、はぃ。すごくいいと思います。ゎ、わたしにはぴったりかも」


「だね。じゃあ次は禁断の生徒と教師や、会社の上司と秘書や、メイドとご主人様、ウェイトレスとお客みたいなのもいいね」


「そ、そういういめーじぷれいですね、わかりました。じゃ、じゃあ、お父さんと娘の禁断の関係とか、どうですか?」


「……イメージプレイじゃないけど、ありだね。次やってみようか」


「はぃ」


 うれしい。


「け、憲先生。絵の、ことなんですけど、売ってもらえるみたいです」


「そっか、よかったね。それで生計を立てられるようになれたらいいね」


「はい、なります。わたし絵を描くのが得意ですから」


 憲先生のお陰ですよ。ありがとうございますね。


 それからよしよし、してもらって。ゆっくりと眠りについた。新妻気分で。


 心地よい眠りだった。
















 憲邇さまぱくぱくもぐもぐ、いっぱい食べてくれるから食べさせがいがあるなぁ。ふふふ。今日はみゆが当番でよかった。今日もおそいかもしれないけど、待ってようっと。食べさせてあげたい。ああ、思い出しても憲邇さまの顔、かわいかったなぁ。ふふふ。


 今日は登校日。なにをするのかなぁ。せっかくの夏休みなのに学校はいやだけど、お友達と会えるのはうれしいな。みんな元気でよかった。だれも休んでないし。


 宿題、きちんとできてるよね。うん、できてる。髪、へんじゃないよね。うん、大丈夫。今日はぴんくのリボン。足のすねくらいまである長いぴんくの、ふわふわワンピース。ぴんくづくしなの。ぴ、ぴんくっていいよね、女の子の色だもんね。女の子っぽくなれる気がするなぁ。


 まゆちゃんは先生来るまで元気に教室飛び回ってる。明るくみんなと笑ってる。ふふふ。まゆちゃん元気でよかったなぁ。あ、愛さんも今日元気だったなぁ。憲邇さまと昨日お布団一緒にして元気もらったんだろうなぁ。ふふふ。


 この前のだついまーじゃんは大変だったなぁ。ううう、ああいうゲームとか、八月はいっぱいするのかなぁ。紗絵子さんの言ってたこと、一つもわかんなかったけど、なんとなくやらしいのはわかったし。日記のぶろぐに書くのも大変だった、恥ずかしくって。


 ぶろぐは、日記だけど、日記にお返事が、交換日記みたいにつくこともあるんだって。憲邇さま言ってた。で、でもまだみゆのはついてないからほっとしてる。なにか言われたらどうしようかなって。ど、どんなお返事がいいのかなって。か、書いてるのもえっちの内容だし、恥ずかしいし。面白いですよ、とかだったらえっちな人だしね。全部ひらがなだから読みにくいのかなぁ。ちょっとずつ漢字も習ってるから、使ってこうっと。ケータイは知らない漢字にすぐ変わってくれるから便利だけど、これでいいのかわかんないもんねぇ。写真もつけれるって言ってたけど、みゆのケータイ、憲邇さまばっかりだしなぁ。のせちゃダメだよねぇ、うぅん。みゆのえっちな写真、のせちゃうのも恥ずかしいし、いやだし。け、憲邇さまやりなさいって、愛さんたちみたいに言ってくれたら、やるけど。あ、でもこの前詩音さんのお誕生日で食べたケーキ、おいしかったし写真にとってあるからのせちゃおうっかなぁ。どうしよう。


「はーいみなさんお久しぶりー。元気してたかなー?」


 先生きた。みんな席に座る。今日の予定を聞いていった。今日は大事な日で、みんなで祈るんだって。戦争とか、よくわからないけど、とにかく大事な日なんだって。


 体育館で聞く校長先生のお話は、よくわからなかった。


 教室に戻って宿題を見てもらって、それでおしまい。もう帰っていいんだって。大事な日だから来て、お祈りするだけなんだ。


「ねーみゆちゃん、今日あたしん家に集まって遊ぶんだってさ。みゆちゃんも来てよ」


「う、うん。行く」


 いっつも行ってるけど。


 
(ただし)くんと久美(くみ)ちゃん、(ゆい)ちゃんに紀伊(きい)くん、それと臼田(うすだ)くんと妹の夏海(なつみ)ちゃんが来るんだって。憲邇さまのおうち広いから、それだけ人が来ても平気だね。


「まゆすけのおうち変わったしね、あそこ広くっていいよねぇ」


「ねー」


 久美ちゃんも唯ちゃんも楽しそう。う、うれしいな、なんだか。


「なぁ正、自由研究見せてくれよ。おれ全然思いつかなくってさ」


「武はバカだからなぁ。しょうがない、持ってってやるよ」


「バカって言うな、くそっ。お前は自由研究どうしたんだ?」


 みんなで話しながら帰るのも楽しいなぁ。紀伊くんがとなりにいるとなんだか安心だし。


「あたし? あたしねぇ、大人のお仕事研究にしたの。お父さんのお仕事研究」


「へぇー。あらが、じゃないや、
尾方(おがた)の父ちゃんなにやってんだっけ」


「お医者さんだよ。お医者さんとね、看護師さんはねー、すっごく大変なんだー」


「そうなのー? お医者さんはなんとなく大変そうだけど、看護師さんって大変なんだ?」


「大変だよー。久美ちゃんは知らないかもだけど、看護師さんってさんけーって言って、えっと、きつくって、えっと……きついの」


「そっかぁ。大変なんだね。っと。んじゃここでお別れだね、みんなお昼ご飯食べてから、準備して公園集合、そいからまゆちゃん家ね」


「うん。またねー」


 みんな別れる。みゆも一回お義母さんのおうちに帰ってから準備して憲邇さまのおうち行くの。やっぱりちゃんとあっちでも暮らさなきゃ。たまにはそっちで寝たりとか、しないとね。


 おうちに帰って、ただいまを言う。お義母さんが出迎えてくれる。


「おかえりー。夏休みなのに学校嫌だったでしょ?」


「そ、そんなことないよ。お友達に会えるし」


「そっか。みゆは偉いねぇ」


 ぐしぐし、こっちのお義母さんもよくなでるなぁ。ふふ。憲邇さまとはまた違って、こっちもうれしいの。


 お義母さんのお昼ご飯を食べる。お義母さんのお料理もおいしかった。


「あっちで迷惑、かけてない? どう?」


「大丈夫だよ」


「みゆはドジだからねぇ。お皿割ったりとかしてるんじゃないかと」


「そ、そんなことしないよぉ」


 しそうには、なってるけど。


「深町先生には? どう、ちゃんとできてる?」


「う、うん。平気だよ」


「辛くは、ないの?」


 ふるふる、首振る。「平気。憲邇さまやさしいの」


「そう。ならいいわ。ちゃんと男の人を満足させてる? どう、どう?」


「満足って、ううう、そっち?」


「あら、どっち?」


 お義母さんいじわるだ。ううう。


「……お義母さんね、みゆがいいなら、年齢は関係ないかなって、思うように、思い込むようにしたの。だからね、好きになさい。なにしてもいいわ。ただし、悪いこと以外ね」


「……ありがとう。あんまりおうちに帰れなくってごめんなさい」


「いいのよ、元気にしてれば。お義母さんもうみゆはお嫁にやったつもりでいるから」


「は、早いよぅ」


「あらあら、そのつもりでしょ? お嫁にもらってくれるんでしょ?」


「そ、そう言ってくれたけど……みゆなんか」


「ダメよ、押して押して押しなさい。恋は勝負なの。押し方にもいろいろあるわ。例えばね、そう、男の人ってエプロンに弱いのよ」


「エプロン? なんで?」


「さぁ、どうしてかしら。みゆの学校は私服だけど、制服だったらね、ここだけの話だけど、制服の上からエプロン着けるとね、男の人って喜ぶのよ」


「へぇ……そうなんだ」よく知ってるなぁ。


「だからね、中学上がったらやっちゃいなさい。誘うのよ。というより、単にエプロンも好きだから、頻繁に着けちゃいなさい。絶対喜ぶわ」


「う、うん、わかった。やってみる。そういう、あの、言うんじゃなくって男の人をさそうのも、押すっていうか、そういう、あの」


「うん、言いたいことはわかるわ。そうなのよ。アタックよアタック、攻撃だわ。誘惑するの。ときどきでいいから、この前みたいにミニスカートも効果抜群よ、絶対だわ。たまに、っていうのがミソよ」


「う、うん」あれは憲邇さまの命令だけど。


「あとはね、浮気させないためにはね、ミニスカでもなんでも、スカートでね、なんでもないけど階段上り下りして、ちらちら脚とかぱんつとか見せたげなさい。そうしたら浮気しないわ」


「ええ……そ、そんなことしなくても、憲邇さま浮気なんてしないもん」でも覚えとこう。


「あら、しょっちゅう浮気してるようなものじゃない。あんなに大勢とえっちなことして。ふふ、みゆはいいの?」


「あ、もう知ってるんだ」


「そうとしか思えないわ、最近になって泊まる女の増えたこと。お義母さんみゆのこと見てるから、自然とあの家はよく見るのよ。だからわかるわ。まあ、前から女の人いっぱい来てたから、普通は気づかないかもねぇ。ね、何人? 教えてよ」


「ダメだよ、お義母さん口軽いもん」


「うっ……そこをなんとか、ね? プリン買ったげる」


「ダーメ。ヒミツだよ。憲邇さまいっぱい彼女さんいるの、言っちゃダメなの」


「まあ、そうだけど。ふふ、それでもいいんだ? そんなに好き?」


「うん。大好きなの。ご、ごめんね、世界で一番、憲邇さまが好き」


「ええ、女の子ですもの、それは仕方ないわ。……そう、好きなのね。しょうがないっか。ねぇ、みゆ」


 そっと手が伸びる。頭に乗る。やさしい手。


「苦しかったらいつでも言いにきなさい。私だってお義母さんよ。ね?」


「うん。ありがとう」


「……はぁ、大きくなったわねぇ。身長も、今何センチ?」


「この前はかったら百五センチだった。あ、そろそろ行かなきゃ。まゆちゃん家行ってくる」


「行ってらっしゃい。気をつけてね。そっか、三センチもか。ふふ」


 鏡の前で身支度を整えてから、憲邇さまのおうちへ。もうみんな来てるかなぁ。


 短い道のりも、毎日楽しいの。


 大きなおうちに着く。玄関にはもうみんなのくつがあった。一番おそかったかも。すぐにあがる。


 リビングにみんながいた。


「あ、みゆちゃんおそーい」


「ご、ごめんなさい」


 寝転がってる臼田くんの上に夏海ちゃんが乗っかってる。仲いいなぁ。臼田くんぼーっとしてるけど、どうしたんだろ。


「ししし、武ね、新しいめいどさんにね、でれでれしたの。でね、妹さんがぶうぶう怒って、乗っかられてるの」


「ふぅん、そうなんだ」


 巴さん美人だもんね。あ、お茶菓子がある。いちごのタルトだ。巴さんかな、良子さんみ

たいなかんぺきな形じゃないし。


「おう武、おれの自由研究見ろよ、見るんじゃなかったのか」


「あれ、そうだったっけ。見てやるか、夏海どけよ」


「ぶー。にいちゃん、好きな人はいっこだけにしなよ」


「わかったから」


 よいしょっと臼田くんが起き上がる。正くんが持ってきた自由研究は、ろうそくだった。


「ろうそく? 買ってきたのか?」


「バカ、作ったんだよ。うちの母ちゃんがな、なんかろうそくいっぱい買ってんだ。だったら作ったら喜ぶかなぁって」


「へー。なるほど、なんか作るのいいなぁ。おれもなんか作るかー」


「へー、ほー。いろんな色があるね。ぴんくとか男らしくなーい」


「だから母ちゃんにって作ったんだ。そういうほうが好きそうだし、喜んでたんだぞ」


「えー正くんまざこんなのー? やーだー」


「ま、まゆちゃん、まざこんってなに?」


「お母さん大好きっ子のことだよ。お母さんばっかり好き好きでさ、恋人のこと大事にしないの」


 ふぅん。憲邇さまとは違うかなぁ。お母さんも恋人だし。


「まざこんじゃねーよ。なんだそりゃ。母ちゃんより彼女のが大事だろ」


「あり、そう? ならいいんだ。ねー久美ちゃん、まざこんだけはやだよねー?」


「あーやかもー。ゆいゆいは?」


「あたしもやかなー。まざこんより彼女のことばーっか考えてほしいなー。ね、みゆちゃんの彼氏はどう?」


「ええっ。えと、えっと……だ、大事にしてくれてるよ」


「ほんと? デートしてくれる? やさしい?」久美ちゃんこういう話大好きだよねぇ。ううう。


「や、やさしいよ。とっても。忙しいのにデート結構、してくれるし」


「ふぅん。いいなぁ。あたしも彼氏とか、恋してみたいなぁ」


「久美ちゃん好きな人いたっけ?」


「ゆいゆいは?」


 二人ともふるふる。はぁって。ど、どうしたんだろ。


「正がどうしてもって言うならつきあってあげてもいいんだけどなー」


「へ?」


 久美ちゃんの言葉に、いちごのタルトをつまんでた正くんはびっくり。


「なに? なんか言った?」


 あー、久美ちゃんぶくれてる。「なんでもー。ねーまゆちゃん、この家木登りできる木、あるー?」


「んーどうだろ。あたしここに住むの最近だからさ。めいどさん呼んでくるね」


 たたた……走ってった。さ、さっきの聞こえなかったんだ。正くん、そういうとことんちんかんだもんねぇ。


「あったら木登りきょうそうしようぜ、正?」


「おう、いいぞ。びびって降りられなくなってもしらねーからな」


「へへん、こっちの台詞よ」


 でも、二人は仲良しなの。久美ちゃんと正くんは、仲良しさん。


「お庭に一本あるってー。じゃあ登ってみよっか」


「落ちたら危ないですよ」良子さんがついてきた。あ、武くん前見たことあるのに、またでれでれ。あ、夏海ちゃん耳びーってやった。


「木の下になにか敷いてからにしましょう。落ちても平気なように。ちょっと待っててくださいな」


 ぱたぱた、走ってった。やっぱりめいど服ってかわいいなぁ。憲邇さまあれでめろめろじゃないんだよねぇ。やっぱり正しくんめろめろっぽいのに。大変だなぁ。


「にいちゃんっ、バカッ」


「うるさいな、なに怒ってんだよ」


「ししし、武は女心がわかんないんだねー?」


「ねー?」


 久美ちゃんも唯ちゃんもにっこり頷いてる。な、なんだろ。みゆにもよくわかんない。


「なんだよもう。おい、お前今のうちに着替えてきたらどうだ?」


「なんで?」


「お前それで木登り、その、大変だろ」


「あり? そう? へーきへーき、あたしを信じなさい」


「そうじゃなくって」


「にいちゃんぱんつ見えるからスカートやめなさいってさ」


「こらっ」


 あ、そっか。まゆちゃんもわかったって顔してる。


「あはは、武すけべだなぁ。んーじゃあ見せぱんしてくるよー。もうしょうがないなぁ」


 まゆちゃんも駆けてった。ぽりぽり、武くんが頭をかいてる。


「まゆすけほんっとスカートしかはかなくなったね」


「ほんとほんと」


「みゆっちはワンピースばっかりだし」


「だ、だって好きだから」


「いいのいいの。どうせみゆっちは木登りしないでしょ?」


「う、す、するよっ。するもん」


「いいのいいの。みゆちゃんは見てたほうがいいよ。ここの木がどんくらいかしんないけどさ、みゆちゃんみたいなどんくさい子だとほんとにけがしちゃうよ」


「ど、どんくさいは余計だよ。ううう。そ、そうだね、やめとこうっか」


 それに、ここのお庭ってことは……ううう。おしっこかけたやつだもんね。なんとなく、いやだ。


 良子さんが木の下にお布団をしいてくれた。これなら落っこちても大丈夫そう。「気をつけてくださいね」って言ってからにこにこお仕事に戻ってった。やっぱり夏海ちゃんはぶくれてる。


 それにしても、お庭にある木って、登れそうなのは一本だけだけど、大きいなぁ。一番上まで登るとおうちのてっぺんにとどきそう。高いなぁ。だ、大丈夫かなぁ。枝とかいっぱいあるし、登りやすそうだけど。憲邇さま子供の頃登ったりしたのかなぁ。青々とした葉っぱ、いっぱい。


「二人いっぺんは危なそう。じゃあ一人ずつ順番ね。あたし一番」


飯田(いいだ)ずるいぞ、じゃんけんな」


「ほいじゃーんけーん」


 一番はやっぱり飯田久美ちゃんになった。えいしょえいしょ、登っていく。久美ちゃんスポーツ万能だからなぁ。平気でしょ。ショートパンツだから足とかすり傷できないといいな。


「うわー、たかーい。たかーいたかーい」


「ねーどんな感じー?」


「んとねー、へいの向こう見えるしー、まゆすけとかー、正とかちっちぇー」


「あはは、すごーい」


「くそー、いいなー」正くんこういうの好きそうだもんねぇ。


「この木なんの木かなー。なんも生えてないやー」


 そういえばなんの木なんだろ。桜とかかな? 柿の木だったら、秋になると食べれるよねえ。


「んーいい風ー」


「おーい早く降りろよー、ずりーぞー」


「はいはーい」


 あっ。久美ちゃんえいって飛んで、ぼんってお布団にぶつかった。だ、大丈夫? あ、足ぐらぐら、倒れちゃった。


「おわっち。うぅん、ちょっと失敗だな」


「平気か? 足くじいてないか?」


「大丈夫だよ。紀伊くん心配性だなぁ」


 ぽんぽん久美ちゃんが紀伊くんを叩いてる。紀伊くんははぁってため息ついてた。


「お前危なっかしいんだよ。いつか大けがするぞ」


「しないよー。紀伊くん考えすぎじゃないの?」


「……まあ、そうだけど」


 次は正くんが登ってった。その次にまゆちゃん、紀伊くん。夏海ちゃんも挑戦しようとして、途中で無理だってあきらめてた。みんな楽しそうだった。最後に唯ちゃんが登って、枝に移ろうとしたとき──


 ずるって足が、すべった。「あ」ひゅう、っと、頭から落ちてく。あ、あ、お布団ないとこ、落ちる、落ちちゃう……唯ちゃんっ。


 へんだった。落ちてく途中、なんだかふわっとスピードが落ちて、そいで方向がするする、変わって、お布団のほうへ行ってた。短い間のことだからよくわかんないうちに、ぽふっと、ゆっくりお布団の上に唯ちゃんはお尻から落ちてた。あ、あれ? あのままだと、固い地面に頭からぶつかるように見えたけど。あれ?


「……あ、危なかったぁ。ゆいゆい、平気?」


「う、うん。……? へんなの」


「危なかったねー。にいちゃんもみんなももうやめようよ、ねっ」


「そ、そうだな。じゃあみんなで布団持ってこうっか」


「あー、にいちゃんまた大人の女の人にでれでれするでしょっ」


「し、しねーよっ。ほらそっち持てよ正」


 男の子三人がお布団を持ってくれた。みゆも手伝おうとしたけど、いいって言われちゃった。男の子って、なんだか女の子のほうからお手伝いするって言っても、いやだってよく言うよね。なんでだろ。


「あらまあ、ありがとうございます。怪我しませんでしたか?」


 良子さんに渡すとにっこりしてくれた。臼田くんめろめろかなぁ? あ、めろめろだ。でも正くんもかなりめろめろだね。


「平気だよ、落っこっちゃったけど、お布団あったから」


「そうですか。それはよかったです」


「お布団あんがとねー。ねーお菓子まだあるー?」


「さっき食べたでしょう。あんまり食べると豚さんになりますよー。お母さんもお冠ですよー」


「おかんむりってー?」


 頭に角生やした。「怒るってことです。まゆちゃんのお母さん怖いですからねー。じゃあ、お布団片してきますね」


 軽々お布団一人で持ってっちゃった。良子さん家事ずーっとやってるから意外と力持ちなんだよね。


「そっかー。あたしおなかすいたからなー。ねー、お菓子でも作る?」


「えー? まゆすけ作れんの?」


「クッキーならなんとか。ね、みんなで作ろうよ、楽しいよ」


「男が、なあ正? じゃまするだけじゃね?」


「おれもそう思う」


「んだよー。お父さんお料理するよー? けんじさ、お父さんのロールケーキめちゃくちゃうまいんだから。じゃーいーよ、女子だけでやるし。男子は帰ったら?」


「ねー?」


 え、え、でもみんなでやるのも楽しいよ?


「おれはやるよ、手伝いたい。いいだろ?」


 紀伊くんは素直だな。「いいよ、もちろん。あとはー? 武、手伝ってくんない?」


「……しょうがねぇなぁ。失敗しても怒るなよ」


「怒るなよ」


「だいじょぶ、失敗してもいいの。やり直せばいいんだから」


 うん。泉さんの言うとおり。


 それからみんなでお菓子作り(お台所にピザの空き箱があった。また頼んだんだ。どかすの大変だった)。みんなでなにかするのってやっぱり楽しいなぁ。ふふふ。正くんは乱暴で大変だった。夏海ちゃんがすごく上手で助かっちゃう。久美ちゃんは大ざっぱで、はからずに適当にしちゃって大変だった。まゆちゃんは相変わらず上手。手早くて、ていねいなの。みゆはかなわないなぁ。


「できた! へへ、うまそーじゃん」


 まゆちゃんが一つぱくり。いっぱい作っちゃったね。食べきれるかなぁ。「んー! おいしい! どーだ武、あたしすごいだろ? 食べな、ほら」


「ああ、すごい。……ん、うまいな。ほれ夏海、食えよ」


「ありがとうにいちゃん。ん、おいし。自分で作ると格別だねー」


「ねー」


 みんなでうふふだ。ね、おいしいね。


「……うわぁ、これみんなで作ったの?」


 めいど服の巴さんだ。「うわぁ、すごいねぇ。あたしまだクッキー焼けないんだ、一個もらっていい?」


「どーぞ。へへへ、巴さんまだまだだねっ」


「ん、おいしいね。ふふ、そう、まだまだなの。今度ババロア作るから、味見してね?」


「はーい」


「……」武くん、食べたそうな顔してる。わかりやすいなぁ。み、みゆもそうだって憲邇さま言ってたけど、違うもん。


「と、巴さん、またみんなで遊んだときにお願いしますね。お菓子、食べたいな」


「ん、任せて。じゃあ今度来たときにババロアごちそうしたげる。練習しとかなきゃ」


「わーい! ししし、よかったね武」


「な、なんだよ。別にばばろあなんて食いたくねーよ」


「どんなのか知らないでしょ、ぷるんってしてんだよ、プリンみたいなの、とろけるの」


「へ、へぇ」


「にいちゃん、あたし食べたーい。食べたことないもん、また連れてきてー」


「しょ、しょうがねぇなぁ」


「あはははは」


 なんでか笑っちゃった。おかしいの。ふふ。


 まだ明るいけど、時間はおそいからみんな帰ってく。またね、みんな。また遊ぼ。


 夕食の準備だ。憲邇さま今日は早く帰ってこないかなぁ。……ぶろぐ書いてよ。えっと、今日は木登りとクッキーを作りました、っと……
















「あたし進学か就職か迷ってるのだ!」


「……いきなり、そう言われても」


 上岡
可奈(かな)ちゃん、華の高校三年生。呼び出してなにを話されるかと思えば(失礼かもしれないが十中八九恋愛の四方山話だと思っていた)、進路の相談だった。


 というか、三年の今頃になって進路にまだ悩める余裕があるというのがすごい。まあ実際、進路なんて決めるのが遅いなんてことはないからなぁ。


「私で相談に乗れる範囲ではないよ。家族や先生と」


「もうしましたっ。ろくに参考にならないからもう片っ端から聞いて回ってるのっ」


 そういうの、やけくそというんではなかろうか。一口コーヒーを飲み、怒りながら甘いパフェを頬張る元気な彼女に、なんだかおかしな思いがある。


「深町先生は大学から医者へですよね」


「ああ、国立へ行ってね。医大は高いから」


「へぇ、そうなんだ」


「高校の担任がいい先生でね、あまりお金をかけずに医者になれるよう便宜を図ってくれたんだ。そう、
大口(おおぐち)先生」


「えーっ? そうだったんだ、信じられなーい。あたしも相談したんですよ、でも当たり前のことしか言わなくって」


「なんて?」


「今は大学を出てないと絶対に苦労するとか、高卒での就職は難しいとか、まずあたしがなにをやりたいかとか」


「ああ、君はなにかやりたいことは?」


「楽がしたいです、苦労はしたくないです」


「あっはは、高校のときくらいは、そうだね、そういう友人もいたなぁ」


「懐かしがってないで真面目に答えてください」


「悪いが、君が真面目に考えていないようにしか見えないよ。楽をしたいって、具体的に展望があるかい?」


「……楽ですよ、なにもしなくても」


「なにもしなくてもお金が入ってくるようになるためには、余人には考えられないような苦労を乗り越える、乗り越えられるだけの才能と努力が必要だ。それはわかるよね?」


「わかりません。あたしは適当に生きて、適当に暮らしていければいいんです」


「……冗談でないのなら、もう話すことはないよ。好きにするといい。言っておくけれど、世の中は甘くできていない。弱い人には厳しい社会だ、腹立たしいことにね。まあそれは置いておいて。なにもしないで生きていければ誰も働きはしない、このロジックぐらいはわかるよね? だから、まあ、そうだな、譲歩して、適当に生きたいのなら適当に働く必要がある。それくらいか、言えることは。あとは君次第だよ」


「……やりたいことが……見つからないんです。なにをやっても、なにもその、やる気がでなくって」


 ここまで言ってようやく、本心に近いことを言ってくれた。やはりというか、やけになっていたり、どうでもいいと思うようになっていたのだろう。進学か就職かを悩む、ストレスのようなものか。あまり多くの選択肢ばかりを提示されても迷うばかりだし、これがいいこれにしなさいとだけ言われるのもまた困りものだろう。前者は家族、後者は学校かな。ありそうな話だ。


「そういうのを待っていたよ。君の家庭は大学を出るだけの蓄えはあるのかな?」


「ありますよ、母も父も、大学を出たいならそれだけのお金はあるって」


「なら大学に行きなさい。やりたいことを見つけられないのはね、まだ十七、八の年頃なら無理ないことなんだ。大学へ行ってから探すので充分に間に合う、それくらいは、学生には開けた社会だよ。ただし、自分が探そうと思うのが前提だ。ただ漫然と生きていてもぽんと見つかるものでもないし、それはもったいないよ。若いうちでしかできないこと、経験がいっぱいある。そうだね、留学はお勧めかな、海外留学。見識が広がるよ、特に海外の人の暮らし、文化、考えは驚くことばかりだ。と、友人が経験していいことずくめだったと、私ではないんだがね。まあ、私は日本人が世界で一番素晴らしい民族だと思っているけどね」


「……へぇ……あたし、日本人でよかったとか、思ったことないですよ」


「誇りに思うべきだと、私は確信している。人に表立って言うことでもないがね。まあそんなところだ。目的がないのなら作ればいい。やりたいことが見つからないなら、まずはそれを探すことをやりたいことにしてしまえばいい。動き出してから理由を考えても充分間に合う、まだ若いのだから。まずは行動だ、あれやこれや考えて足を止めるのはもったいないよ。なにより、君には似合わない」


「えー? 似合うとかなんですか、それ」


「変かな、偏見かもしれないが、君は人に相談を持ちかけるより、よく考えもせずに突っ走るタイプと見たんだが」


「あっは、残念。あたしは冷静沈着の慎重派なんです。失敗したくないの」


「失敗はするべきだ、なににおいてもね」


「えー? 先生と言うこと違いますね」


「そうかな、失敗をしないと間違いだと気付けないし、成功より失敗から学ぶことが多いものだよ。そう、失敗をしなければ、成功には辿り着けない。私の短い人生で得た教訓だよ。大口先生はさ、授業中に指したときに、わかりませんと答えるよりはわからないなりに考えて答えたほうがいいと、言うだろう?」


「あー……どうだったかな、あたしまともに授業聞いてないし」


「おいおい、それはないだろう。せっかくの学びのチャンスを活かさないのはもったいないぞ。自分が成長できる、進歩できるチャンスなんだ。授業はまじめに受ければいい。なぁに、気に食わない先生や教科書に書いてあることしか教えない先生はばっくれればいいのさ。大口先生はいいと思うよ、話は面白いし、まあ適当に脱線するしね」


「……意外ですね、サボるのを推奨するなんて」


「うん、まあ、言っちゃ悪いが教師もピンきりだと、学生時代からずっと思っていたからね。大人になって教師になる試験を知る機会があってね、ちょっとおかしいと思う部分があるんだ。これだといい先生を合格させられるシステムじゃあないなと思ったんだ」


「ふぅん。なに、賄賂とか?」


「いや、何度でも受験できるんだ。就職の、例えば面接なんて一回勝負、落ちたら再度挑戦しても絶対に受かるはずないだろう? ところが教員試験ってやつは何度でも受けられるんだ。そんなことしたら先生としての素質を測っているのでなく、教員試験に受かる練習をしたかどうかを測っていることになる。つまり、教師としてろくな人材じゃないのを採用していることに等しいんだ。だから、まあ、教師はピンきりだと思う。実際小中高、大学含め、そりゃあいい教師と悪い教師はいるよ。いい先生ばかりじゃあない。生徒から見てすぐろくなもんじゃねぇと思うなら、授業なんて単位取るだけで充分さ」


「はぁ、なるほどー。確かに、うちの学校にもやな先生いますよ、セクハラ教師」


「よくやるねぇ、今は教師に風当たりが悪いのに。ただね、頑張っている先生もいるんだよ。そこは忘れないでほしい」


「はい、それは。えっと、なんでしたっけ」


「授業は真面目に受けるといいよ。受けたいと思う先生だけでいいから。先生の話をよく聞いて、そこから、あ、これは面白そう、それはもっと知りたい、と思うことが見つかるかもしれない、そんなとこから、アンテナを張っておくといい、見つかりやすいはずさ、やりたいことなんて」


「そうですね、確かに。深町先生はどうして医者になろうと思ったんですか?」


「人を殺してしまったからだよ」


 さすがにぎょっとされてしまった。まずい、言い方が悪かったか。


「いや、直接殺したってわけじゃあないんだ。私のせいである人を事件に巻き込んでしまい、結果死なせてしまった。私はその責任があると思っている。だから、せめて医者になって贖罪がしたい。人を助けられる職について、あの人に顔向けできるような立派な人間になりたいと思ったんだ」


「……すごいな、そういうの。お医者さんって、あたしみんな立派な人だと思ってます」


「ありがとう。そう言ってくれるのは嬉しいよ。励みになる。ただ」


「わかってます。でも、あなたのような人を見ているとなんだか、世の中ってすごくきらきら輝いているような気が、してくるんです」


「どうして私を見るとかはわからないが、それは合ってるよ。世界は美しく、輝かしい。目を開ければその光が見えてくるはずなんだ。みんな目を閉じたり、そっぽ向いてるだけで」


「ふふ、そういう恥ずかしいこと言うの深町先生くらいですよ」


「そうかな。恥ずかしいかな、そうかな」


 うぅん、そうか? 恥ずかしいことなんてなんにもないだろうに。


「……あたし、幸いなことに女なんですよね……第三の選択肢ってやつも、あるかもな……」


「? 第三? なにかな、なにかある?」


「ねぇ、深町先生。キャンセル待ちって、してもいいですか?」


「キャンセル待ち? なんの?」


「鈍いなぁ、もう。あたし、玉の輿狙って楽したいんです」


「あはは、稼ぎがいい人と結婚するってやつ? そう思うなら、自分で稼ぎなさい」


「じゃあ看護師ですね、それならいいでしょ?」


「なにが?」


「……ほんっと、鈍いのね。まあ、冗談です。なんでもないです。あたしも……あなたは無理だって、わかってるから」


「え」


「それでも、あの……一回くらい、気の迷いとか、ありません? 浮気とか、興味あったりとか」


 ようやく悟る。あ、ああ、そうか。


「ないよ。私には大事な彼女がいるし、結婚だって考えてるんだ。悲しませたくない」


「……です、よね。はぁ。先生はそう言うと思ってました。だから……いいなって、思うのに」


「君の彼氏も悲しむよ」


「ふふ、そういうこと言うのも、言えるのも、先生くらいですよ」


「そうかな、みんな言うよ」


「いーえ、先生は天然記念物級のお人よしです、間違いありません! 彼女さんにびしっと躾けてもらうんですね」


「あ、ああ、そうしようかな。彼女はしっかりしてるしね」


 実際、私の情けないこと。ほんにしっかりしないととは、思う。


「そうしてください。じゃあ、今日はありがとうございました。ためになりました。大学、行こうと思います」


「単なるアドバイスだよ、最後に決めるのは君自身だ。それを忘れないで」


「はい。ありがとうございました。また会ってくださいね、浮気してくれるまでしつこく迫りますから」


「あはは、覚悟しておくよ。それじゃあ」


 何度おごると言っても聞かず、彼女は自分の分を払ってしまった。うぅん、悲しい。女性をおごるのはお金の余った私の楽しみ(そう決めた)なのになぁ。


 実際、男はプライドだけの存在だ。見栄を張り、自尊心を満たしたい。それだけの単純な生物なのだ。


 まあいいや。帰ろう。帰ってみんなと夕食を食べようか。まだ遅くはないはずだ、もう帰ると、連絡を入れよう。


 楽しみだ、みんなと食事は。とても。
















































































 第六十話あとがき的戯言




 こんばんは、
三日月(みかづき)です。


 いやぁ、話進まないなぁ。うぅん、うぅん。一話分のページ数もうちょっと増やし、うぅん。考えます。


 でも楽しいですね、普通のパート(性描写のない)を書くのは。仮にもカテゴリが官能小説の作者の言うことかとは思いますが。でも楽しいなぁ。


 本日の弱音・女子高生の気持ちを誰か教えてください。あと男子高校生。高校生ぐらいが一番わからない。中学もだけど……小学校は楽だよなぁ。はぁ。


 それでは今回はこの辺で。また次回もよろしくお願いします。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。




 
20110320 三日月まるる



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テーマ : 官能小説 - ジャンル : アダルト

2011/08/13 19:35 | 小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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