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「ごめんなさい」その七_第七話_やっぱりわからない

 こんばんは、三日月です。
 うっかりしてしまって、もう取り返しのつかないことの多いこと多いこと。
 すみませんでした遅れてしまって。次回からはきちんと隔週にしたいです。本当に。
 第七話です。どうぞ。












 



 七 やっぱりわからない



 



 



 しかし、会合の場に私のいきつけの料亭を指定するのは、あまり嬉しくないな。ちらし寿司は、またみゆと来たときにしよう。これで雨だったら憂鬱だったが、晴れてよかった。



「なぜ、あなたはわしらになにもしないのですか」



 箸を止める。あなた方も、手をつけたほうがいいと思いますよ。



「わしらがやろうとするのを止められるほど、訓練された人間がいるのなら、わしらを始末したほうが、彼女たちを……」



「あなた方はこのままでいいと思います。あなた方は古い人間であるだけで、改心は容易でしょう」



「……」



「こういう場を設けること自体、その兆候ではないでしょうか」



「……しかし、慣例というものは守らなければなりません。みゆも懐いておるようですし、彼女に子を授けてやってはくれんでしょうか」



「それは個人の自由ですし、今すぐできるものでもありません。大体、町に一番の貢献をしているというのも私ではないでしょう」



「金ではありません。町民の総意です」



「それでも、そうとは思えません」



 町から近いところにあるとは言え、小さく頻繁に通えるところにたくさん院はあるのだが。



「……まあ、それはよいでしょう。しかし、その……できたなら、わしたちの癒しのほうも」



「ふざけないでください」



 私は思わず笑顔になってしまった。



「他の方法を選んでください。今は相当な数自慰に適したものがあります。そちらにしてください」



「……」



「どうしても生身の人間がよろしいのでしたら、風俗店まで足を伸ばしてください」



「しかし、やはり巫女が……」



「あなた方の都合より、相手をする彼女のことを考えてください。嫌がっているのを無理矢理やるのは私は許せません」



「慣れればそんなもの」



「これ以上」



 私は食器を置いて、彼らを睨み付けた。



「このことについて話すことはないと思いますが」



「……」



「癒し、というよりは、それにより生命を吸い取って欲しい、巫女にはその役割がある、と聞きましたが」



 その割には、彼らは驚くほど若々しいが。



「そこまでわかっておられるのでしたら、言いますが、そうして生命を削って、若い者に与えた後天国に召されたいのです」



「その先に天国など、ありはしないと思いますよ。少なくとも、やってしまったのなら」



「今まではそうしてやってきたものですから」



 思わず、あの虚ろな瞳に血が昇ってしまいそうになるが、どうにか抑え……温かいお茶を飲んだ。



「子供が泣いているのに、自分だけ幸福になどなれませんよ」



「……」



 泣けない涙ほど、重いものはないのだから。



「そういえば、町長は胃のほうは大丈夫ですか?」



「え、ええ。おかげ様で。先生の同期のおかげで、ほぼ完治しました」



「再発の可能性もあります。体調にはお気をつけて。お年ですしね」



「……薬の提供も、年金暮らしですので助かっていますよ。カウンセリングのほうでも随分楽になりましたそうで」



「そうですか。それはよかったです」



「……医者として、それは当然なのですか?」



「でなければ医者ではありません」



「……」



「よろしいでしょうか?」



 腰を上げる。「できるなら、失敗は少なめでお願いしたいものです」



「あなたは……おかしい人間です」



「ええ、そうだと思いますよ」



 なにに於いたとしても。



 



 



 



 



 ……けほっ。ううう、なんだか、さむいなぁ。春なのに、全然あったかくない。運動場で遊んでるまゆちゃんとかがうらやましい。憲邇(けんじ)さまのひざの上とか、後ろからぎゅっとしてもらえれば、すぐなのに。



 えっと、この前してもらったのが二日前だから、そろそろ、してもらえるかな……だいたい、三日に一回ぐらいだし。今日とか、明日とか。行ってもいいかな。おじゃまじゃないかな。まゆちゃんが行くんだったら、ついでについていくだけでも、行きたいな。会いたいな。触ってほしいな……あ、あ、ダメダメ。指なめちゃ、ダメ。さみしいからって、家の部屋にいるときみたいに、指なめちゃ、ダメ。



 ……なんだか、憲邇さまのをなめてるみたいで落ちつくんだけど……お母さんとか、お友達に知られたらバレちゃうし……



「みゆちゃん、明日……なにこれ、手帳?」



「えっ、あ」



「めずらしいね、そんなのつけてるなんて……ハートいっぱいあるけど、なにこれ、なんの日?」



「えっ、えっと……」



 ど、どうしよ。言えないよね、憲邇さまにしてもらった日なんて。えっと、えっと……



「あ、わかった。彼氏とデートした日でしょー?」



「あっ! う、うん! そうなの」



「えっ」



 その子の表情が変わる。「み、みゆちゃん、もう彼氏いるの?」



「あ……」



 言うと、いけないかな。憲邇さまは、好きだって言うくらいならいいって言ってたけど、彼氏とか、そんなの……



 ……彼氏なわけ、ないし。



「か、彼氏っていうか、好きなだけで、会えただけで、それで、その……」



「あ、この前の人? ふーん、けっこう会えてんじゃん。進展してる?」



「……うん」



「してるの? すげー、ほんとに結婚するんだ?」



「……」



 できるわけ、ないよ。



「……ぅ、けほっ」



「あれ? みゆちゃんかぜ?」



「かぜじゃ、ないと思うけど……」



「じゃ、明日は無理かなー。ごめんね、忘れて。だれにしよっかなー」



 その子が次の子に向かって走ってった。



 ……どうして、憲邇さまはまだみゆにえっちしてくれるのかな。もうあんなにたくさん、みゆよりずっとかわいくて、きれいで、胸のおっきな人がいるのに……みゆは、なにをしたら、これからもどれいでいさせてくれるのかな……お口でも、お尻でもいいから、ずっと……



 どうして、憲邇さまとやったことは、痛くも気持ち悪くないんだろ。あの人たちにやられたことは、痛くて、気持ち悪くて、はきそうになったのに。



 ……



「お、おい、眞鍋(まなべ)、どうした?」



「え」



 あ、この前告白してくれた人だ。



「どうしたの?」



「い、いや……具合悪いんなら、保健室行けよ」



「大丈夫だよ」



 今日会えるかもって思えば、なんでもできるから。



「すごい、落ち込んでるみたいな顔してた」



「そう?」



「大丈夫ならいいんだ。じゃ」



「……」



 落ち込んでる……そうかな。憲邇さまのこと考えてたら顔にやけちゃうと思うけど。



 ぱらぱらって手帳をめくってって、その日その日にしたことを思い出してまたなんだか、わくわくしちゃった。



「そういやさ、みゆちゃんははじめてしたときおしっこでた? 指入れたとき気持ち悪くなかった?」



「……」



 先生はなにかやることがあるみたいで、プリントが終わった人は体育館とか図書室で遊んでていいって言われたから、まゆちゃんたちと一緒に図書室で読書をしてると、まゆちゃんがこそこそって話しかけてきた。



「こ、こんなことでそんなこと話しちゃダメだよ」



「いいじゃん、みんな漫画に夢中だよ。ね、どうだった?」



「……」



 あのとき、触られて、触られて、触られて、気持ち悪くてたまらなくて、でもぬれなくて、また乱暴にされ……



「みゆちゃん? ど、どうしたの?」



「えっ」



「すごい顔してたよ」



「そう?」



 ほっぺを触ってみる。そう、かな。



「すごく痛かったの?」



「……うん。痛かった」



「そっか。ごめんね」



「ううん。おしっこは、出たのは最初だけ」



 そのあとにシツケられて、出ないようになったから。



「……あの、あの人は、出たほうが喜んだ?」



「え、ああ、うん、喜んでた」



「そ、そう」



 じゃあ、出るようになったほうがいいのかな。そっちのほうに、憲邇さまにシツケられたいな……



 やさしく、だんだん慣らしてくのもうれしいけど、たまには、強引にされるのも……そっちのほうが、憲邇さま楽しくないかな……ああ、そんなこと、考えちゃ……ううう……



 いろいろ考えちゃって、結局読んでた漫画の内容は頭に入ってこなかった。



 今日は早く終わったから、憲邇さまのお家で待ってるのもいいかな。メールは……あ。



『今日は六時くらいに帰れるから、私の家で待ってて。お出かけしよう』



「……」



 やった。やった。お出かけ、だったら、この服はダメかな。なに、ああ、どうしようかな。



「けほっ、けほっ」



 ううう、ほんとにかぜかな? かぜだったら、憲邇さまにうつすわけにはいかないし……でも、お出かけは、したいし……



 とりあえず、お母さんにみてもらおう。



「んー、熱はないけど、今日はもう寝てたほうがいいかもね」



「えっ、あの、遊びに行っちゃ……」



「ダメよ。もし風邪だったら、うつすと大変でしょ?」



「……」



 うんって、言えない。



「……わかった。先生の病院に行きましょう。それでなんともなかったら、それから遊びに行きなさい」



「うんっ」



 やった。一石二鳥だ。せっかくだし、ちらっと、憲邇さま見てこよ。



「みゆは昔から体が弱いから、気をつけないとねー……ここ最近は、調子よかったのになー」



「そうだっけ」



 もう、覚えてない。思い出は、もう全部憲邇さまだけだ。



 ……もっかい、ちらし寿司とか、たまご焼きとか、食べたいな。ラーメンもおいしいし、この時間なら、きっと一緒にご飯食べれると思うし。



「あんなにたくさん会ってるのに、毎回楽しそうにしてるわね」



「だって、好きだから」



「そう。お母さんたちはそんなに燃えるような恋じゃなかったなー。どんなことしてる?」



 車の中でも、お母さんは今までと違ってたくさん話しかけてくる。最初から、こうだったらよかったのにな。なんで、冷たかったんだろ。



 病院につくまでの間に、また一回、せきが出た。



「軽い風邪ですね。お家でおとなしくしてなさい」



「……あの」



「お薬もいりませんね。安静にお願いします」



「はい」



「あのっ、お出かけしちゃいけませんか」



「ダーメ。おとなしくしてないと、ひどいことになるわよ?」



「……」



 そっか。憲邇さまにうつしたら、でも、ダメ、でも、会いたい、でも、床、白いな、でも……



「先生に挨拶してく?」



「え」



「会わないほうがいっか」



「……うん」



 会うと、はなれたくなくなるし。



 からだを、強くするにはどうしたらいいんだろ。今度、憲邇さまにきいてみよう……



 もうこんなの、やだから。



 車と一緒に流れてく景色を、ぼーっと眺めてた。大きい看板がたくさんある。カラフルな色がいっぱい……背の高い建物もたくさん。でも、憲邇さまと一緒に入ったところはほとんどない。



 次は……いつ会えるのかな。メール、電話……今したら、迷惑だよね……会いたい……会いたいな……



「こらみゆ、指舐めちゃダメよ」



「あっ、う、うん……」



 またやっちゃった。だ、大丈夫かな? バレたり、しないかな?



「みゆはやっぱり、見た目どおりお子ちゃまねー。指舐めちゃうなんて、幼稚園児よ?」



「そ、そうかな。普通だよ」



 よかった。バレてない。けっこう、大丈夫なのかな? そういうこと、考えないのかな? みゆなんか、憲邇さまとえっちしてるなんてやっぱり、つりあわないから、考えないの……



 このまま、憲邇さまのやさしさに甘えてくのは、すごくもうしわけないな。なにか、みゆを好きになってくれるようなこと、しなきゃ……もう、みゆなんか、好きじゃないと思うし。結婚の、約束も……してくれたけど、今はもう、ほかにいい人がいっぱいいるから、無理だよね……九年も、待ってくれるわけ、ないし。看護師さんたちなんかもう、結婚できるんだから、その人たちとしても、おかしく、ないし……



 早く、胸がおっきくなって、赤ちゃんを作れるように、なりたかった。作って、気持ちだけでも、夫婦みたいに……



 なれないんだから。



 



 



 耳もとで電話が鳴ってる。憲邇さまにもらった専用のほうが。なんだろ、ごめんなさいって、メールはしたのに……



「はい、もしもし」



「ちょっと外に出てきて」



「?」



 なんだろ。お布団から出て、そのまま玄関まで歩いてく。あ、車がある。憲邇さまが来てくれたんだ……でも……



「乗って乗って」



 外に出るとすぐ憲邇さまは助手席を開けた。



「え、でも、みゆは今……」



「いいから」



 強引に背中を押される。あの、お洋服も、今は……



「気にしないで。これ羽織っとけばそんなに違和感ないよ」



 あったかい、青のカーディガンをかけてくれる。



「でも、かぜが」



「風邪はね、人にうつすと治るんだ」



「うつせません」



「大丈夫、私は頑丈だから。風邪なんてひいたことないし、寝込んだことも数えるくらい」



「でも、疲れて倒れそうになったって」



「う……そうだね、自己管理は甘いな。でも風邪はひかないんだ。本当だよ。気にしないで」



「でも、いやです」



「ありがとう。それでも、今やりたいことがあるんだ」



 やりたいこと?



「仕事はね、少々体調が悪くてもしなきゃならない。同じことで、どうしてもやらなければならないことは、例え体を悪くするとしてもやらなくてはならないんだ」



「……」



 それで、どうしてみゆが……



「シートベルト、してね。少し遠くまで行くから」



「あ、はい」



 あわててそれをつける。



 憲邇さまは……変わらない。これだけたくさんできたのに、みゆにまで、前と同じ、やさしいまま……



 変わったのはみゆのほう。あの頃に、一ヶ月前に戻りたい。だれがいたって、何人いたっていいなんて、嘘。一人だけがよかった。みゆだけを見ててほしかった。憲邇さまを好きな人がたくさんいることくらい、わかってるけど……わがままだ。一人だけだって、勘違いしてたみゆが、バカで……



 もうみゆは、この人にまで捨てられたら生きてけない。生きてたく、ない。だけど、このままだときっと捨てられる。みゆの気持ちなんて、憲邇さまはすぐ知っちゃうから。



「わからないよ、人の気持ちなんて」



「えっ」



「わからない。人の心を考える職業なのに、いつまで経っても……とはいっても、私はまだまだ経験が浅いけれど」



「……」



 今、みゆの考えてること当てました。



「みゆはね、考えてることがすぐ顔に出るからわかりやすいんだ。なんとなく想像はつくよ。でも、ちょっとだけ。当てずっぽうで、外れたら誤魔化してるさ。きっとね」



「でも、憲邇さまはみゆのしてほしいことがいつもわかります」



 わかってて、たくさん、してくれています。



「そう、かな。そうだと嬉しいよ。……他の子と別れたほうが、いい?」



「え」



「君からしたら全部浮気だ。構わないとは言っても、苦しんでるように見える。私は、全員が幸せでないと嫌なんだ。君が嫌なのなら、みんなと……君とも、別れてしまって、新しい恋を探したほうがいいと思う。でも、別れることも辛いと思う。だから、どちらがいい?」



「……」



 あぁ、あぁ、なんて、『君』って言われることが、こんなに……つらいなんて!



「け、んじさまが、わかれたいなら、わかれます。憲邇さまの、言うことを聞きます……」



 でも、



「みゆは、わかれても、なにがあっても、ずっとずっと憲邇さまのことが好きです。ほかの人が好きだって、ほかの人と結婚したって、ずっと好きでいます。だから──」



 だから? なんだろ。なに言いたいの?



 『いやです』の一言が、みゆはもう、言えない。絶対言えない。憲邇さまに、だけは……



「ごめん。わかったよ。このままでいよう」



「はいぃ……」



 あ、泣いてる。泣き虫だなぁ、みゆ……



 でも、泣くのもいいかも。こうやって、憲邇さまにふいてもらえるし。



 前は泣いても、だれも気にしなかったから、泣けなかったし。



「……」



「?」



 なんだか、いつもよりなでてくれるのが長い気がする。



「髪、少し伸びてきたね」



「はい。もっともっと伸ばします」



「うん、きっと似合うと思うよ」



「はいっ」



 こうしていられれば、やっぱりほかになにあったっていいかも。触ってもらえれば、それでいいのかも。いつか、憲邇さまに髪をといてもらえたら、すごくしあわせになれる気がする。ううん、きっとなれる。



 それからしばらく、無言で車は走ってった。ときどき、信号で止まったときに、すって手を握ってくれた。ずっと、景色なんて見ずに、憲邇さまを見てた。世界に憲邇さましかいない、そんな錯覚に、もうずっと前から落ちてってる。



「着いたよ」



 車が止まったのは、どこかの和食屋さんだった。混んでて、外に人がはみ出てる。



「なにか食べたいものあった? ごめん、この辺で知っているお店は少なくて」



「いいえっ。きっとおいしいです」



「うん。でも、みゆはお粥かな。あんまり重たいものは食べられないだろうし」



「あ……そ、そうですね」



 憲邇さまと一緒なのが食べたかった……



 みゆは昔から、食欲があんまりない。めったに外でご飯も行かなかったから、お家で食べるのがほとんど。おいしかったと思うけど、でもほかが大変で……あんまり食べらんなかった。今は、憲邇さまが食べてるのがすごくおいしそうに見える。食べたくなる。同じのを、味わいたい。憲邇さまはあんまりたくさんおいしいって言わないけど、食べてくたびに顔をゆるくする。良子(りょうこ)さんなんかは、それを見るのがすごく楽しそうだ。……みゆだって、自分が作った料理で顔をゆるめてくれるんだったら、うれしくてたまんないはず。いいなぁ、良子さん……



 お店の中は思ってたより混んでて、しばらく待たないといけないみたいだった。あったかい……人の熱さだ。ほっとする。



 手をつないで、立って待ってく。こんなパジャマの上にカーデ羽織っただけの格好、みゆだけだ。恥ずかしい……



 ……家族できてる人ばっかりだ。みゆくらいの子もいっぱいいる。子供の声がたくさん聞こえる。待ってる人たちも、家族じゃなかったらカップルばっかり。……やっぱり、良子さんとか、千歳(ちとせ)さんはずるいくらい、美人だ。どうして、あんな人たちがいるのに憲邇さまは、まだみゆを……怖くて、きけないけど、でも手を、ぎゅっとして、しまう。



 憲邇さまも、ぎゅって、してくれた。



 椅子が一つだけあいた。憲邇さまに座ってもらお、そう思ったら、



「ひゃっ」



 持ち上げられて、憲邇さまが座った上に、乗せてもらっちゃった。「あ、あのっ、重いですっ」



「みゆは体重、何キロだったかな」



「だ、だってっ、十四キロもあるんですよ? 重いですっ」



「軽い軽い。私の半分の半分より軽いよ。いいから乗ってなさい」



「でも……」



「じゃ、一人で座る?」



「……こ、このままで……」



「うん」



「……」



 い、いいのかな。みんな見てるとこで、こんなに、くっついて。こ、恋人だって、思ってくれるかな? 思われたら、大変だけど、でも、そう見えるの、いいな……



 そっと、憲邇さまはいつもやるように、後ろから抱きしめてくれる。みゆも、その手に手を、重ねる。



 おっきな手……早く、かぜを治して、なめたいなぁ……



「!」



 い、今すごいこと考えたような……ううう……ダメだよぅ、これ以上いんらんになったら、捨てられちゃう。考えないように、考えないようにしないと……えっちのことは忘れて、今は、そう、かぜをうつさないようにしなくちゃ。



「父子家庭ですか? 大変ですねぇ」



 隣のおばさんが、話しかけてきた。「うちの娘も最近別れてしまって、私が孫の世話ですよ。ね、ショウちゃん」



「うん」



「ちょっとお母さん、そういうのやめてったら。ごめんなさい、うちの母が」



「いえ。そちらこそ、大変でしょう。君はいくつ?」



「六歳。来年ようやく小学校」



「そっちの子もそれくらいでしょう? 学校にあがると、園よりよっぽど大変ですよ。この子のときもねぇ」



「お母さん! やめてったら! 大昔のことを、何度も何度も!」



 その人たちはガミガミ怒鳴りあって、でも、仲よさそうだった。ふと、憲邇さまを見上げる……おだやかな、顔。いつもしてる、やさしい顔。でも、なんだかいつもと違う……



「ほんとはさ、焼肉がよかったんだけど、うちのかあちゃんケチでさ。君んちはいつもなに食ってんの?」



「……」



 それがみゆに向けてのことだって、なかなか気づけなかった。



「いっつも外食? 男は料理作れねーってかあちゃん言ってっけど、ほんと?」



「……」



「そんなことはないよ。私だって一通りの料理はできるさ」



「え、でも、見たことないですよ?」



 あれ、変な顔。



「おいおい、とうちゃんにそんなこと言うやつ、はじめて見たぞ」



「……お父さんじゃ、ありません」



「え、違う?」



「そうだよ。ちょっと事情があってね」



「へー、おもしれーな。で、結局料理は作れんのか?」



「作れるよ。今度ごちそうしてあげる」



「おう、約束だぜ? オレ、川崎(かわさき)ってんだ。川崎章吾(しょうご)。君は?」



眞鍋(まなべ)、みゆ。この人は、深町(ふかまち)憲邇さん」



 そこで、この人たちの名前が呼ばれた。



「じゃな。もしかしたら、来年学校で会うかもな」



「……」



 章吾くんが話してるのに、全然気づかないままお母さんとおばあさんは言い争い続けてた。不思議。



「……憲邇さ、さんは、お料理作れたんですね」



「作れるだけだよ。おいしくないさ」



「でも、みゆは一度食べてみたいです」



「そう? じゃあ、今度作ってみようかな」



「楽しみです」



 席があいても、みゆはどかなかった。どきたく、なかった。っていうか、憲邇さまが、はなさなかった。……うれしかった。



 人の前で堂々とくっついていれる。うれしかった。



「そういえば、ふしかていってなんですか」



「家族のうち、父親と子供だけで母親がいないことだよ」



「……」



 それは、つまり。



「それが普通だよ。私とみゆは、誰が見たって親子だ」



「……はい」



 仕方ない、ね。最近、錯覚してたみゆがいけないんだから。



 一ヶ月……ヒミツの関係はずっと続いてて、気がついたらみゆの中ではもう、完璧に恋人同士で……そう。どれいだったんだ。だれもそんな風に見てくれてない。良子さんたちだけ。一緒な人たちだけ。



 憲邇さまがやさしすぎて、勘違いしちゃうくらいだっただけ。



「気にしないで」



 そっと、手が頭にくる。「私たちだけがわかってればいいよ。そういう関係だってね」



「……はい」



 周りの人に教えたい。そう思いだしてる、みゆがいけないんだ。



 夕ご飯は、憲邇さまが頼んで、メニューにないおかゆを作ってもらった。憲邇さまは、おさしみのついたご飯とおみそ汁を頼んでた。……憲邇さまはそっと、少しだけおさしみを食べさせてくれた。おみそ汁も。……ちょっとだけ、時間をかけて同じとこに口をつけた。せめて、キスができないなら、せめて……おいしかった。



「あの、ご飯を食べるのが、したかったことなんですか」



「違うよ。次に行くところで、したいことがあるんだ」



 今度は少しだけ走って、すぐに止まった。宝石屋、さん? なんだか、光ってる……中にはたくさんの、光ってるものがあった。小さいものばっかりで、あれもこれも、きらきら……きれい……



「どう? いいなって思うの、ある?」



「えっ。あ、はい。あ、あれとか、あの、青いのとか」



「ふむ。こっちのは?」



「それもいいです」



 憲邇さまはしきりに、みゆがどれをいいかっていうのを、聞きたがる。いっつも。みゆはでも、憲邇さまがいいと思うのを、好きになりたい。だから、できたら先に憲邇さまの好みを教えてほしかった。



「あの、これが、したかったことですか」



「違うよ。うん、わかった。この指輪、ください。プレゼント用に包装して」



「えっ」



 お店の人が、ガラスの中のきらきらを取り出す。それは、みゆが一度も、いいって言わなかったの。一番ほしかったの(・・・・・・・・)。でも、プレゼントなら。



「あ、あの、もらえません。みゆは、もらってばっかりで、もう、もらえません」



「ダメだよ。子供は、素直にあげるっていうのはもらわないとね」



「だって、だってっ」



 してもらうばっかりじゃ、いやなんですっ。



「この前だって、髪どめをもらったばっかでっ、ハンカチのかわいいくろねこさんや、ケータイもデコしてもらって……」



「ううん、困ったね。みゆがこんなに頑固さんだとは……じゃあこうしよう。今度はみゆから、プレゼントをして。物でもいいし、なんでもいいよ。私のお願いを聞いてくれるっていうのでもいい。ただ、みゆは子供だから、無理してお金は、使わないでね」



「は、はいっ。そ、それなら……」



 目の前にあったのは、白いきらきらの、ゆび……あああ、指輪。指輪だ。気づかなかった。「や、やっぱりもらえませんっ」



「どうして? なんでもいいんだよ。深く考える必要は」



「だって、だって指輪です。指輪は、男の人が、おん、女の子にあげるのは、その、け、結婚する人だから、みゆは、ダメ、ダメですっ」



「……ぷっ」



「あはははは!」



 ……え? あれ、な、なんで、お店の人たちが笑ってるの? あ、け、憲邇さままで。



「あのね、これはそういう指輪じゃないんだよ。私がみゆに結婚を申し込むときは、もっとみゆに見合ったものを贈るさ。これは単なるプレゼント」



「え、でも……」



「男性が女性に指輪をプレゼントするときは、全部婚約を申し込むときではないんだよ。普通に、髪留めをプレゼントするときと変わらない」



「……」



「勘違いさせてごめん。これは私のわがままだ。受け取って欲しい」



「……はい……」



 ちょっと、がっくり。もし、みゆの思ってたとおりだったら、よかったのに。ほんとに、結婚しようって、言ってくれたら、



「結婚する、って約束」



「えっ」



 こっそり、耳もとで。



「私は忘れていないよ。破るつもりもない」



「……ぁ」



 甘い、吐息。



「最低でも九年、その頃には私は三十六歳だけど、みゆがそれでもいいのなら」



「……」



「そのときには、ちゃんとゆっくり考えて、みゆに内緒で選んだのを、贈るよ。今日のは、その前身みたいに思ってて」



「……」



「みんなとに、なるけど、でもする。絶対に。全員が結婚できる年になったら、全員で。形だけだけど、でも」



「……はいぃ……」



 ううう……ううう……泣いてばっかだぁ……憲邇さまに、うれしくて泣かされてばっかり……はじめて会ったときも、えっちしてもらったときも、今も……



「これを、言いたかったんだ。みゆはもう、なかったことにしてるみたいだったから」



「そっ、そんなことはぁ」



「わかってる。私のせいだ。ごめん。こんなことになって、あの言葉を信じられなくなるのも無理はない」



「しん、じてましたぁ。憲邇さまは嘘ついたりなんかしませんぅ。大好きですぅ……ああぁ……」



 みっともなく、泣いて。ずっと頭を、なでてもらった。



 信じてたなんて、嘘。怖くて、信じれなかった。信じたくて、でも、できなくて、結局好きじゃないみたいに、信じてなかった。



 みゆは嘘つきだ。嘘ついて、きらわれたくないから嘘ついて、ごまかしてばっかり。



 憲邇さまはこんなにもみゆのことをわかって、みゆのほんとにほしいものをくれて、嘘じゃないって教えてくれる。なのに、みゆは、みゆは……



 たくさん、プレゼントをしよう。憲邇さまがもういらないって言うくらい、プレゼントする。たくさん、お料理を作って、お弁当を作って、それからお掃除して、お洗濯、それからそれから、よ、夜に、ごほうしし……そ、そう、マッサージとか、お茶をいれたりとか、そういうの……憲邇さまが求めてきたら、絶対こたえるけど……が、学校でなにか教えてもらって、なにか、あげれるもの、ないかな……



 して、あげたい。してもらった。数え切れないくらい。だから、してあげたい。



「んっ」



 こういう、キスを、たくさん……憲邇さまは、キスが好きだし。あとは指も、なめたげたい……



「みーゆ、こんなとこでそういうことしちゃ、ダメだよ。みんな見てる」



 あ、あああああ、あーっ!



「ち、違うんです、これは、その、したいからしただけで……あああ、違う違う違う、だって、いつもしてるし……だ、だから、キスは、好きならしていいんだもん!」



「……」



「……」



 少し、息が切れて。



「あーっはっはっは!」



 みんな、笑い出した。憲邇さまだけ、頭をぽんぽんする。



「子供はいいわねー。あれぐらいが一番かわいいわ。あ、これくださる?」



「よかったねお嬢さん。泣き出したから、怒られてるのかと思った」



「かーわいーい彼女さんですねー? いーなーお嬢さん、こーんな年上が彼氏さんで」



 うわ、恋人だって思われてる。やった。うれしいな……



「はい、包装終わりました。娘さんのプレゼントにだなんて、男親は娘を溺愛しすぎです」



「そうかもしれませんね」



「……」



 この人には、娘だって思われてる。やっぱり、みんなには無理なんだ。だ、だったらっ。



「み、みゆは将来、この人のおよめさんになります」



「おお? そうかそうか。うむ、頑張りたまえ」



 あっ、バカにしてる。みゆにだってわかるんだから。



「絶対、なりますっ。結婚式には、あなたも呼びますから。名前、教えてください」



「いーわよー? 前場(まえば)撫子(なでしこ)っていうの。前後ろの前に、場所の場、大和撫子の撫子よ。名前の通り淑女だから、よろしくね? ああそう、もし結婚できなかったら、ちゃんと報告するのよ? 『結婚できませんでした』って」



「わかりました。報告します。でも、するのは式の日にちだけです」



「ふふふ。かわいいわねぇ、ほーんと。どーしよっかなー、先に言ったげよーっかなー」



「そのくらいにしといてあげてください。はい、みゆ。受け取って」



「はいっ」



 きらきらのきらきらを、受け取った。みゆの胸にもおさまるくらい、小さいけど、でも、思いっきり抱きしめた。



 ……えへへ……楽しみ……



 憲邇さまが腰を上げる。



「ありがとうございました。この子にプレゼントしたくなったら、また来ます」



「はい。ありがとうございました」



 みゆは撫子さんにすごくあっかんべーをしたくなったけど、やめといた。子供だって思われたくない。みゆだって、えっちできるんだから。



 結婚だって絶対、できるんだから。



 



 



 あの日、なにもなくいきなりされた。なにを言ってもダメ、なにをしてもダメ。子供だから。なにもできない。つらくて、苦しくて、息がつまる。



 みゆだけがこうじゃない。それは静香(しずか)さんを見てるとわかる。だから、もしもだれかが、苦しんでたら。助けてあげたい。できることをして。



 指輪屋さんから車までの、ほんのちょっとの間だった。気がついたときにはすごく大きな音が響いてて、そして、みゆは憲邇さまとはなれてて、憲邇さまが、



 おっきな看板の、下敷きになってた。



「…………」



 うごかない。ただ、憲邇さまのあたまと、左手だけがみえて、それいがい、なにも、



「……やあああああああああああ! けんじさまっ! 憲邇さまけんじさまけんじさまけんじさまぁぅ……や、やぁ……あ、ぁ、あ……」



 さわっても、うごかない、こんなの、はじ、や、やあ!



 もし、



 けんじ、さ、



「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 



 



 静かな病室は、さむざむしい。



 ……結局、みゆにはなにもできなかった。今憲邇さまが生きてるのは、近くにいた人たちのおかげ。じゃまして、わめいてただけ。してあげたいと思ってた。憲邇さまみたいに、だれかを、助けてあげたい……なんて、夢物語。



 みゆはただ、ここでこうやって、手を握ってることしか、できない。



 事故で看板が落ちてきた。憲邇さまとは、手をつないでたはずなのにはなれてた。だから、突き飛ばされたんだと思う。



 でも、それで憲邇さまは……



 この日お仕事だった(いずみ)さんは、事故のショックでちょっとだけ眠ってるけど、すぐに起きるって言ってくれた。でも、どれくらいケガがひどいのか、教えてくれなかった。傷はたくさんついてて、包帯もいっぱい……これで、すぐ目を開けてくれるなんて、信じられない。でも、でも憲邇さまなら、すぐに起きてくれる気もする。



 おっきな手は、あったかい。でも、いつもより、ずっとずっと、冷たかった。



 何回キスしても起きてくれない。お話の中なら、あんなに簡単に、目を開けてくれるのに。



 たくさん、したから、憲邇さまの顔も、ベッドも、椅子の下も、涙でぬれてる。止まらなかった。止まるわけなかった。どれだけふいたって、あふれ落ちていく。一生分泣いたって、足りないけど……泣いて、憲邇さまがいつもみたいにやさしく、ほほえんでっ、起きて、くれた、ら……



「憲邇さまぁ……起きてくださいぃ……みゆは、まだしてないことがいっぱいありますぅ……憲邇さまの、作ってくれたお料理が食べたいです、好きって、言い足りません、憲邇さまに、お返し、がっ……起きてください、起きてくださいぃ、憲邇さまぁ……みゆ、なんでもしますぅ……お願いします、指輪、憲邇さまに、はめてもらうんです、すぐそこに置いてありますから、起きて、はめてくださいぃ……どんなことも言います、どんなことでもします、きっと、憲邇さまの好みの女の子になりますからぁ……ううう……好きです、大好きですぅ、憲邇、さま……」



 何回言っても、憲邇さまは起きなかった。



「みゆちゃん、もう帰らないと」



「やですぅ。憲邇さまが起きたときにそばにいないと、あやまれませんからぁ」



「みゆちゃんのせいじゃ」



「みゆのせいですぅ! みゆがいなかったら、憲邇さまは一人で助かってましたぁ! みゆが、子供で、守ってっ、もらってばっかりぃ……」



「……そうねー……じゃあ、あたしも一緒に泊まったげる。交代で見てましょ? 代わりばんこに寝るの。そんで、せんせーが起きたら起こしたげる。ね?」



「はい……でも、みゆはきっと、寝れません。寝たら、憲邇さまがいなくなってそうで……怖いですぅ……ううう……」



「大丈夫よ。うちの病院は大げさなんだから。明日になったら、きっといつもどおりぴんぴんしてるって」



「……はい」



「他の子には、あたしから連絡しておくね。じゃ、いったん出てくけど、無理しちゃダメよ」



「……」



 無理なんか、してないもん。



「けほっ、けほ」



 またせきが出る。憲邇さまといたときは、一回も出なかったのに。ああ、なんだか、さむい……さむい……さむい……!



 さむいよぅ、憲邇さま。一緒に寝たいよぅ、憲邇さま。泉さんが、ダメって言ってなかったら、絶対、一緒にくるまってぎゅってしてるのにっ。おっきな胸に、顔こすりつけて、ぐりぐりしたいのにっ。



「……もう一回だけで、いいから、みゆの名前、呼んでください……少しでいいから、また、お話、したい、です……」



 大きかった希望は、すぐに小さくなってって。泣いてるのも、すすり泣きだけに縮んでった。でも、キスの間隔は、だんだん短くなって。憲邇さまを求めて、たくさん、してしまう。して、して、して、息が切れてくる。それでも、足りなかった。



 えっちがしたい。熱い憲邇さまのものが、みゆのお腹の中にくるのを感じたい。指をなめあって、べとべとになりたい。ビデオだって写真だって、たくさんとって残してもいい。恥ずかしい格好だってできる。あそこ広げて、どろどろのへんたいでも、いい。おじいさんたちみたいに、



「まだ、目が覚めない、か」



 だれかの声が聞こえる。でも、だれでも関係ない。今は、この手だけ……



「……君にはすまないことをした。悪かったと思っている。巫女とはいえ、やはり、老いのさばるのは百害あって一利は……?」



「憲邇さま、起きたら、今度はお尻でしましょう? もうちゃんと治りましたから。血は出ません。出ても、憲邇さまならいいです。傷つけてください。ひどいことだって、憲邇さまならっ」



 そうだ。希望は、おっきく、ないとっ。



「……これはこれは。ふん、変わらんではないか。人間としてできているという評判と実情、しかし、善い行いをするものは鬱憤が溜まるものだ」



「うるさいですっ!」



「……」



「あなたの声は、ほんとは聞きたくないんです。出てってください。憲邇さまに、いやな思いはさせたくないんですっ」



「……わかった。出て行こう。その前に一つだけ、質問をさせて欲しい。なにをされた、深町憲邇に」



「愛してもらいましたっ」



「セックスをしたんだな?」



「そうですっ。いいから出てってください!」



「……巫女よ、その男と別れろとは言わない。しかし、お前の持つ力を一人のためだけに使うのは、歪んでしまうんだよ、周りが」



「うるさいって言って」



 急に口をふさがれ、手をつかまれ、床に倒された。



「お願いだよ、巫女様。その男だけを保護(・・)し続けていると、我らの分がなくなってしまう」



「?」



 前と、同じ。力でおさえつけられて、なにもできないまま、犯されるんだ。でも、なにを言ってるんだろ、この人。



「我らは長生きをせねばならん(・・・・・・・・・・)。この男にも生きてはもらうが、それは共存という形をとるべきだ」



「……」



「飼いならし、懐柔させてもらう。やった以上、そのリスクはわかっているはずだからな」



 苦しさは、変わらない。なにも変わってない。ひどい人だ。みゆは知ってる。同じようにして、たくさん苦しめてきたんだって!



「さあ、力をわしに使え、今すぐだ。以前のようにな」



「……い、や……」



 なにされたって、もう、みゆだけは、みゆと、憲邇さまだけのものっ。



 あなたたちのには、ならないっ!



「なら死んでもらおうか。お前の大切な憲邇様に」



「えっ」



「今の彼は無防備だ。わしのような老人でも、簡単に殺せるよ。それは、お前ならわかるはずだ」



「……ぁ、ぁ……」



 がたがたが、出てくる。この人はできる。ひどい顔で、だれでもぶてるからっ。



「言うとおりにしなさい。深町とセックスをするなとは言わん。同じくらい、我らにも力を使って欲しいだけだ。前のようにはせんよ」



「う、ううう……」



「信じたまえ。力を使って欲しいだけだ。今使えば、いや、使わなければ彼が死ぬだけだ」



「! は、はいっ」



 いつものように、手に力をこめた。すぐにこの人は満足そうに頷き、おさえてた手をはなした。



「わかっていると思うが……今日のことも、これからのことも深町には話すなよ。我らに力を使い続けることをな。会っていること、話したこととにかくすべてだ。今日はわし一人でいいが、明日我が家に来い。すぐ終わるだろう?」



「……はい」



「その男が目を覚ませばどうにかなると思うだろうが、こちらもその間に手は打っておく。隠し続けておればよかったものを。まあ、子供に無理を言うても仕方はないか」



「……いけなかったんですか」



 出て行こうとする、しわだらけの人に、ぼそっと言う。



「好きな人とえっちをすることが、しあわせになることがいけないんですか」



「いけないよ……お前は、幸せになったとて辛いだけだ」



「えっ」



 そのとき見たおじいさんの顔は、ひどく、歪んでるように見えた。



「けして、結ばれることはないんだよ。少なくとも、深町憲邇と、だけは」



「なんでっ? どうし」



「あら、こんな時間にどんなご用ですか、町長さん?」



 ころっと、前と同じ、人前の顔になる。



「いえ、深町先生にはお世話になっとるので、様子を見とこうかと思いましてな。ちょうど近くに寄ったもんですから」



「そうですか。ありがとうございます。せんせーったら、町長さんにまで……」



「聞きましたぞ。この子を助けるためだそうで。よい先生ですな。本当に」



「ええ、それはもう」



「……」



 どうして、泉さんは気づかないんだろ。憲邇さまは、すぐ見破ったのに。



「それではこれで失礼します。先生のこと、よろしく頼みます」



「はい、お任せください。お気をつけて」



「……」



 ちらっとみゆに目がくる。小さく、頷いてしまう。おじいさんは満足そうに笑って、去っていった。



「泣くの、止まったね。よかったよかった」



「……」



「さあ、二人で看病しましょう? 寝汗とか出てきたら、拭いてあげるの。ね?」



「……はい」



 かいならし、かいじゅうさせてもらう……今度、辞書で調べなきゃ。怖い言葉なのはわかってるんだから、なんとかしないと。



 今度こそ、憲邇さまを助けるんだから。



 



 



 



 



 目が覚めたときに、すぐ傍で安らかに眠っている女の子がいたら、誰だって満ち足りた気持ちになるだろう。……だが、泣き腫らした目で、切れ切れになにかを呟いたまま眠っている少女が傍にいたら……いや、それでも今は、喜ぶべきだ。守りたい(ひと)を、守ることができたのだから。



「……ごめんなさい……憲邇さま……好き……ずっと好き……大好き……」



「私も好きだよ、みゆ」



 すぐにみゆは目を覚ました。目を大きく見開いて、今まで流していた涙以上に、大粒の雫をこぼしていった。握り締めていた手に、これ以上ないくらい、強い力を込めて。



「けん、じさまぁ……!」



 体を起こした私に、思い切り抱きついてきた。小さな体で、本当に、強く……



「憲邇さまっ、憲邇さまっ、憲邇さまっ、憲邇さまぁぅ……ううう……ううう……よかったですぅ、ほんとに、よかったですぅ……好きぃ、大好きぃ、好き、う、ううう……」



「……好きだよ、私も」



 幼い体躯を、私も強く抱きすくめる。痛みは、寧ろ心地いいほどだった。



 やがて、お互いに見つめ合った。潤んだ瞳から、涙を掬っていると、みゆはゆっくり目を閉じて……



 私も唇を、合わせた。



「んっ、んー、んっ、ん、ん、んんっ、あ、んっ」



「……っ」



「んぅ、ふぁ、ん、ん、ん……あぅ、はっ、ん、んっ」



 みゆは私を、求めてきてたまらなかった。強く激しく、唇を押し付ける。でも、今までと同様、決して自分から舌を入れようとはしなかった。入れたのは、あの日だけ。それ以降、入れてもらうほうが気持ちいいのか、決して自分からはしなかった。少しの躊躇、だがすぐに舌を交わらせ、お互いの口内をまさぐりあう。唾液が交差する音が響いて、目覚めの脳を完全に覚醒させた。



 そしてみゆは、私に内緒で私に力を使ってきた。唇を介して。ここで、して欲しいという合図。それを受けたのに、みゆはまだ口付けをやめようとしない。貪るように舌を這わせ、熱い吐息で体中を満たしていくようだった。



 ……誰も来る気配がないのがせめてもの救いだった。こんなところ、人に見られたらたまったものじゃない。しかし、それを……心底心地いいと感じてしまう。この小さな舌と、必死に押し合っていくのはとても官能的だった。



 どれくらい──時計があるのでわかるが、気付かなかった振りをして──したのかわからないほどキスをして。完全に息が持たなくなったみゆがようやく離れると、満足そうに微笑んだ。



 泣き腫らした上での笑みは、信じられないほど、可憐だった。



「憲邇さまだっ、憲邇さまの、くちびる……んーっ!」



「まだ足りないのっ?」



 どうやら息が続かなかったから離れただけで、整えるとまたキスに入る。……ああ、わかっている。これは力を使われたせいだ。だがだからなんだ? 私だってしたいのなら、心行くまでするべきだ。例え、誰に見られたとしても。



「はぅ、あ……ん、あん、んっ、む……んん、んぅ……や、あぅ、あ……ん、ん……んぁ、ああ、ぁ……ふっ、う……ん、ん、んっ、やぁ、あ……あ、あ、ん……ふ、ふぅ……ん……ふぁ、ん、ぁ……ん、うう、んっ……あっ、あ、ん……んっ、んっ、んっ!」



 ぷはっ、と、ようやくそれを終えた。最高潮に紅潮した頬に、荒い息。まるで、一度ことを終えたかのような、二人。その雰囲気を感じたのかみゆも、体をそわそわと、もじもじとさせた。



「あ、の……い、今は、お風呂も、入ってないし、汚いですけど……し、下着は、いつしてもいいように、いいのに、してますから……」



 めくりなさいと言われるのを待っているのか、スカートの裾を握ってじっと俯く。……自分からは、決して言わない。どうしてだろう。こんなに、私好みになったのは。みゆが力を使っていなかったら、はしたないくらい勃起したものが見えてしまうと思う。



「ごめんね、したいのは山々だけど、今は体が」



「あっ、そ、そうですよね、ご、ごめんなさい」



「ううん。その分、治ったらたくさんしようね」



「……は、はいっ」



 また、キスをする。……どう、しようかな。正直、耐えられないくらいで……ううん、それはやだし……見る、くらいなら。



「ね、みゆ。やらないけど、今みゆが履いてるパンツ、見たいな」



「えっ」



「みゆが濡らしてないか見てみたいなぁ」



「……」



 また赤く戻った。本当、かわいすぎる……! ああ、今すぐめちゃくちゃにしたいっ! 体さえこんな調子でなければっ!



「もし濡らしてたら、罰ゲームだね。そうだなぁ、あれをしよう。ずーっとやりたかったやつ。ふふふ」



「ぬ、ぬれてませんっ。みゆはそんな、いんらんじゃないですからっ」



「じゃあ見せて」



「……は、はい……」



 私の上にまたがったままのみゆが、そっとスカートをめくっていく。パジャマなのにスカートをずっと選んでるのはきっと私のせいで、申し訳なさ半分、嬉しさ半分なのだが……



 当然、まだ濡れるのに時間がかかるみゆは下着を湿らせてもいなかった。しか、し……普通の、よくある、白い、あああ……



「自分でスカートめくるなんて、みゆはやっぱり淫乱だよ」



「だ、ってっ、憲邇さまがっ」



「じゃあ隠せばいいのに」



「み、見たくないんですかっ?」



「そっちは戻していいからさ、上、上げてこうよ」



「……」



「みゆの胸が見たいなぁ」



「は、い……」



「……」



「……」



「やっ、きゅ、急に触らないで……んっ」



「自分で裸見せるのは、淫乱じゃないかな? 淫乱な子は、触って欲しいだろう?」



「……ち、がい、あ、ますぅ……みゆが、触ってほしい、の、ん、はぁ……憲邇さま、だ、け……やぁ、ぎゅって、しないでぇ……」



「いくら個室だからって扉ぐらい閉めないと通報されますよ」



「!」



 さぁっと酔いが一気に冷めた気分が襲ってきた。慌ててみゆに服を着せて、離れると、扉のところには沢田(さわだ)さん……泉がいた。



「無用心にもほどがありますよ。あたしじゃなかったら、今頃せんせーは檻の中」



「おり?」



「逮捕でーす。犯罪ですからねー」



「そ、そんなの間違ってますっ! みゆはただ、好きな人と」



「そーそー! あたしもそう思う。おかしいよねー、法律って」



 ほっと胸を撫で下ろす。助かった、本当に。



「そう邪険にするものでもないよ。でも、ありがとう。よかった、見つかったのが泉で」



「いえいえ。つーか、せんせー医者でしょうがっ!」



 ぺちっと、頭を叩かれた。



「自分の体の具合を考えろっつーのっ! んなことしてたらいつまでたっても治んねー、ぞっ!」



 もう一発。



「や、やめてください! 叩くなら、みゆにしてっ」



「いやいや、悪いのは今回ばっかりはせんせーなの。いーい? 無理して、病院にいるのが長引いたら大変なんだから」



「ぅ……」



「そうだね。ごめん。私が悪かった」



「まっ、そんなにひどくないからいーけどさっ。……心配、したぞ? バカ野郎」



「ごめん。ありがとう」



 こつん、とおでこを合わせた。



「今度からは、二人とも助かるように体を鍛えなさい」



「違います、みゆと一緒にいたから、みゆのせいです」



「みゆ、泉の言うとおりだよ。みゆといられるように、体を鍛えないと」



「う……」



「どうします? このままもう少し、みゆちゃんといちゃいちゃします?」



「……早めに先生を呼んで欲しいな。このままだと、また暴走しそうだ」



「はーい。あ、あたしなら、そのままでもできますから、いつでも、ね? 広子(ひろこ)ちゃんもそうですよー」



 うふふと笑いながら彼女は去っていった。……いや、いや。自重しよう。



 それよりも、みゆに言うべきことがある。私はぽんと、彼女の頭に手を置いた。



「ありがとう。みゆの声のおかげだよ。みゆの声が聞こえたから、私はこんなにも早く目覚めることができたんだ。看病は一流だね。手も、すごく温かい。ありがとう」



「えっ、そ、そんな……」



「またみゆを見られて嬉しいよ。私が疲れているときは、同じようにして、私を癒して欲しいな」



「は、はいっ!」



 今度は私のほうから、キスをした。



 



 



 包帯を巻いているといっても、落下時にできた擦り傷程度のものにしているので、それほど深刻ではない。骨にも異常はないし、精密検査しても問題はでてこないだろう。それでも、衝撃であちこち打撲ができてしまい、動くと痛む。が、この程度ならすぐ治るだろう。ショックで何時間も気を失っていたのが少し信じられないくらいだ。



 あのとき、近くに私たち以外に誰もいなかったのも幸いだ。人通りはけして少なくなかった。子供なら……ああ、この柔らかな頬が愛おしい。



 もしあのとき、みゆの他に近くに誰かがいたとしたら、どちらとも救えただろうか。……私には、みゆ一人を突き飛ばすことしかできなかった。泉の言うとおり、私はもっと運動をするべきなのかもしれない。



「おはよう、深町クン」



 どうやら私を診てくれたのは同期の彼のようだ。同期は他にももう一人いるが。



「おはよう、相良(さがら)



「お、おはようございます」



「ん? お前子供いたっけ」



「違うよ。知り合いの女の子」



「ふーん……相変わらず女をたぶらかすのは上手なことで」



「た、たぶらかされて、ないです」



「ハイハイ。気をつけろよー? こいつ今まで千人ぐらい女をとっかえひっかえしてっからな」



「そ、そうなんですか?」



「してないよ」



「沢田看護師にでも聞けばすぐわかるさ。で、どうだ? どこか特別痛むか?」



「いや。少しだけ」



「検査だけはしとくか。問題ないとは思うけど」



 それから少し体を診てもらって、大丈夫だと思いっきり背中を叩かれた。



「痛いよ。この上に看板あったんだから」



「隣の看板だったら楽だったのにな。ずっと重いから」



「そんなこと言わないでください!」



「ハイハイ。じゃあこれで。すぐ復帰してもらうからな。ただでさえ人手が足りないんだ」



「わかってるよ」



「それと、わかってると思うがうるさくすんなよ? 沢田看護師がやたらめったら電話しててな。嫌な予感がすんだ」



「……わかった」



「あいつもうちっと静かにできねーのかよ……ったく」



 ぶつぶつ言いながら彼は扉を閉めていった。根はいいやつなのだが、気を散らされると恐ろしく怒り狂う。静かな場所や時間が好きだ。よく早朝に近くの山に登って、景色を見ながらぼーっとするのが楽しみだそうだ。ちょっと、私もやってみたい。



「……?」



 みゆの表情がおかしい。彼を見送った後、こちらを振り向いたときに……少し、少しだけ、曇った表情をしていた。これは……



 喫茶店などでトイレに立つと、戻ってきたときにみゆは、ほんの一瞬だが以前の、一度だけ見たあの表情をとっている。ほぼ、例外なく。私に気付くとほっと顔を綻ばせるのだが、どうしても一瞬だけ、残ってしまう残り香に気付いてしまう。私も、それに気付いているということを悟らせないようにしてはいるが、みゆは感付いているのかもしれない。それでも尚、硬質化してしまうのは止められないのだろう。仕方のないこととはいえ、少し落ち込んでしまう。時間、が足りないのだろう。一年、そうやって(・・・・・)扱われ、一度変化してしまったものを元に戻すのは、何倍もの時間がかかるものだ。根気よく向き合っていくしかない。それに、元に戻って明るく、元気になっていく様は、見ていて非常に心地よいものだ。今日のように。子供は……女性は、笑顔であるべきだ。自然な、なによりの。



 だが、今こうなるということは、つまり……みゆにこの顔を思い出させるもの。相良がそうであることはない。あいつは意外と、子供に好かれるのだ。ならば……そうか。老人たちが来たか。あの事故も、偶機と呼ぶにはあまりにも……仕方ない、院内の電話を使おう。



「あ、あの、憲邇さま、あの、こ、この指輪、もらいましたから、つ、つけたいです」



「うん」



「それで、その……」



 すぐ隣の棚に包装したままのものがある。取ろうとしない。……ああ。



「わかった。着けてあげる」



 自分の手で解いて欲しかったが……仕方ないか。



「……はい」



「……わぁ……」



 フリーサイズなので、小さなみゆでも薬指に嵌めることができる。キッズ用のものもあそこは取り扱っていたけれど、成長期ならフリーのほうがいいと思ったのだが、どうだろう?



 みゆは、嬉しそうに微笑んでくれる。そっと何度も指輪をなぞり、口元を綻ばせる。



「よかった。喜んでもらえて」



「はいっ……これ、憲邇さまといるときだけにします」



「そう? 学校につけていってもいいと思うよ」



 ん? まずいか? いくら私服とはいえ、そこまで寛容なところでもないのかな?



「いいえっ。二人だけの、に、したいんです」



「……そう」



「……えへへ……」



 じっと指輪を、普通の、薄いピンクとブルーのハートが二つ付いただけの、普通のものを、宝物を見るように見つめる。



 『モノより心』とは、誰が言った台詞だったか、もう忘れてしまったけれど、『心を込めたモノ』ならいいのだろうか。市販のものだけど、大切に思う心があれば……心が、あるのだろうか。これに……



「心が、いっぱいです」



「えっ」



 彼女はにっこりと、笑う。



「憲邇さまので、心がいっぱいです」



「……」



「よかった。ほんとに、こうしてまた、憲邇さまにしてもらえて……」



「……うん」



 痛みにも構わずに、強引に、みゆを自分の胸に抱き寄せた。「憲邇さま?」



「君が……みゆが……」



 (くる)しいよ。



 小さな手が、柔らかな体が、甘やかな声が。



 どうしようもなく、私を絞めつける。



 みゆはそっと、背中に手を回す。



「憲邇さまは……どうして、みゆのほしいのが、わかるんですか?」



「言ったろう? みゆはすぐ顔に出るから」



 嘘のつけない、まっすぐな少女だ。私の前では。



「すごいです。ときどき、にぶちんですけど」



「そう? そうか……」



 多分、そのとおりなんだろう。人の心はやはり、わからないものだ。



「憲邇さまのにおい……」



 落ち着くまで彼女を堪能して、ゆっくりと傍に座らせる。それでも、しばらく彼女の髪を梳くのは止められなかった。



 目を閉じてそれを受ける、みゆの安らかな顔は、見ていてとても気持ちがいい。やはり、子供はこんな顔をしなければ。



 二十分ほど経つと、ノックの音とほぼ同時に扉が開けられ、葛西(かさい)さんが入ってきた。



「こんにちは……あら、みゆちゃん」



「こ、こんにちは」



「どうも、葛西さん」



 先にじゃれあっていてよかった。あんなところを見られたら、うん、終わっていたかもしれない。



「具合は、どうですか? 看護師さんは、なんともないって言ってましたけど……」



「ええ、無事ですよ。すみません、心配をかけて」



「いえ、大丈夫ならいいんです。よかった……」



 私服姿の彼女は、そういえばあまり見ていない。精々、面接のときぐらいか? 意外に、新鮮だな……



 あ。繋いでいた手を、思いっきり握られた。



「みゆちゃん、ずっと看病してくれてたの? ありがとね」



「い、いいえ、とんでもないです。みゆが、助けてもらったんですから」



「そんなことないわよ。苦しいときに傍にいるのは、とても大切なことだわ。私だって……」



「?」



「……はぁ。元気そうでなによりです。おじゃま様みたいだから、退散しますね。これ、どうぞっ」



 大きな音を立てて果物の盛り合わせを棚に置き、ふんっとでも言うように踵を返して、扉を閉めた。



 かと思うとまたすぐ開けて、「帰ってきたときに文句を言われても困りますから、ぴっかぴかにしておきますねっ」ぴしゃん。



「……どうして、良子さんは好きって言えないのかな」



「? 誰か好きな人がいるの?」



「……ほら、憲邇さまはにぶちんです」



「え? でも、私じゃないだろう。前にまゆが言ってたけど、彼女とはただの仕事かんけいたた」



 つねられた。「そんなこと言うと、良子さん怒りますよ」



「そうかなぁ……」



「みーんな言ってましたっ。憲邇さまは告白するまでぜんぜん気づかなかったって」



「だって、私にはみゆがいるからって言ってたのに」



「……」



 あれ、赤くなった。



「け、憲邇さまは、みゆが、恋人だって言ってたんですか?」



「恋人がいる、とはね。みゆがそうだとはさすがに言えなかったけど。……ああ、みゆとは、私はずっと恋人同士だと思ってるよ」



「……」



 あ、つねったとこさすってる。



「……みゆは、どれいでいいのに……」



「恋人だよ。奴隷かもしれないけど、でも、恋人だ」



「……」



 みゆはただ、なにかをかみしめるかのように、俯いて脚をぷらぷらさせていた。



 今日は土曜日だから、みんな来てくれるかもしれない。その予想は、ずばりだった。



「憲邇さん、元気ー?」



「……こんにちは、せんせ」



「こんにちは、先生」



「お元気そうでなによりです、憲邇様」



 まゆに静香に千歳に、お休みの広子の、四人が一緒に来てくれた。



「元気だよ。ありがとう、みんな」



「こら、こんなとこでそう呼んじゃダメでしょ!」



「あ、ごめんなさい」



「せんせ、みゆちゃんを助けたって聞きましたけど、なにがあったんですか?」



 一通りの説明をしようかと思ったけど、みゆがさきんだって話してくれたのでそれに任せる。多聞に、私のことを美化しすぎだと思ったけれど。



「ふぅん。大人はやっぱすげーなー。ね、あたしも守ってくれる?」



 みんなの視線が一気に集中する。「もちろん、みんな守ってみせるよ」



「……へへへ」



 みんなにこやかに頷いて、でも、「憲邇さんもちゃんと助からなきゃ、ダメだからね」



「うん。わかった」



「よーし。ね、良子さんは?」



「さ、さっききて、『おじゃまさまですね』って、帰ったの」



「みゆちゃんがいたからね。悪いことしちゃったかな」



「いーじゃん、どーせ家でしろくじじゅーいちゃいちゃしてんだよっ。ゆるせねー」



 してないよ。



「そうね、二年も同じお家で同棲なんて、許せないわね」



 あの、広子さん?



「新婚気分で白衣とかスーツとか畳んでるんですよ。許せない」



 静香さん?



「近所の人、勘違いしてました。許せません」



 千歳まで……



「みゆも、同じお家に住みたいです……」



「いや、住んでる訳じゃ」



「同じですっ!」



 大きいよっ、声が。



「憲邇さんがへたれだからいけないんだよっ。おそっちゃえばいいのに」



「そうですよ。あ、あたしは、同じ屋根の下で寝るのは、そういうの、期待して……」



 いや、仕事の関係上……だし……



「もしかして、巨乳は好みじゃないんですか?」



 広子の瞳がさっと鋭くなる。聞いたのは千歳だけど。



「胸に好みはないよ。なーんでも好き」



「嘘ですっ。みゆちゃんだけ特別回数多いですよっ」



 ええ? 静香はその、回数とか数えてるのか?



「そんなこと」



「貧乳が好きなんですせんせはっ。だってそうじゃないですか、あたしと広子さん以外、みんな控えめでしょ? ほんとは、みゆちゃんたちみたいなぺたんこじゃないといやなんでしょ? そう言ってくださいっ! それなら、あたしだって、小さくしますから……」



「そういうのじゃないってば」



「そういえば、私はじめてのときは胸触ってもらえませんでした」



 そういうことを今言うなー! 千歳はちょっと天然だぞ!



「ほらぁ! はっきり言ってください、がんばりますからぁ」



「違うって! ていうか、ここでそういうこと言わないでくれ! 声がさっきから大きいよ!」



「……」



 なんとか、静かにはなったものの、ジト目の静香と広子は、視線を外さなかった。……仕方ない。ぽちっと、ナースコールを鳴らした。



「はいはーい、白衣の天使、泉ちゃんですよー? おりょ、みなさんおそろいで。なになに、7pすんの?」



 恐ろしいほど早くやってきた彼女に、助けを求める。私から言っても、恐らく信じないだろう。



「ほうほう、せんせーが貧乳好きかそうでないか、ですな。ふむふむ、難しい問題ではありますが……結論から言うと、せんせーは胸ならなんでも好きです」



「なんで、泉さんはそんなことわかるんですか」



「んーとねー、せんせーが前付き合ってた人がね、胸のバリエーションいっぱいあったから。大きいのから小さいのまで、たっくさん」



「……ほんとですか?」



「ほんとだよー? それこそまな板の子とかもいたけど、逆にFとかGとかの子もいたから。今ここにケータイないから見せらんないけど、写真あるよ? 見てみる?」



 全員が頷く。



「でもねー、覚悟して見たほうがいいよ? ほっとんどの人、すっげー美人だから」



「それは……仕方ないです。せんせだもん」



「でもねでもね、最初さえない子もたくさんいてさ、それなのに、せんせーと付き合って輝きだした子ってね、たっくさんいんのよ。二十代後半まで男の人と付き合ったことない人が、せんせーと付き合って、まあ別れたんだけど、そのあとモッテモテなんだってさ」



「おー」



「それからそれから、ここだけの話ね、せんせーったら、未亡人、あ、こう言うとダメなんだっけ、寡婦をね、虜にしたのよ。娘ごとね」



「おー!」



「いや、あの、泉さん、やめて」



「別に夫に先立たれて途方に暮れてるわけでもない人をよ? 普通に、健全に付き合ってたの。その人、当時三十八歳。娘さんは十三歳と六歳」



「すみません看護師さん、ちょっと頭痛がするんですけど」



「その子供二人ともに好かれてねー、最初そっちのほうで知り合って、だんだん、お母さんもその気になっていったみたい。でね、けっこう、いいお家だったから、うちに婿にきませんかって、お誘いしたらしいの。本家のほうが他県にあって、そっちに移って、もっと大きい病院に勤めてはどうかって。でもね、せんせーったら、『すみません、今の患者さんは、私の手で治療したいと思っていますから』ってさ。ちなみに、心の治療ってのは大抵長くかかりますし、今いる患者さんを治療している間に、次の患者さんが次々やってきます。終わりがくることはありません。つ、ま、り。遠まわしにごめんなさいって言ってるの」



「……どうして、結婚しなかったんですか」



 本当に頭が痛くなってきた……どうしてそこまで知ってるんだ……



「みゆちゃん、先生はこうやってたくさん、恋人がいるでしょう? 結婚は無理よ」



「ぶっぶー。それは去年の話でーす」



「え? じゃあ、どうして?」



「……娘さんに手を出したからだよ」



 とでも言えば納得してくれるかな?



「? それでどうして結婚しないんですか?」



「……」



「一緒にえっちすればいいのに」



「み、みゆちゃん、普通はね、お母さんは娘が小さいときにえっちしたら怒るものなの」



「そうなの? あ、だからお母さんにもヒミツなんだ?」



「そうだよ。十三で手を出しちゃったから、激怒されちゃってね」



「ふぅん……変なの」



 まゆまで……幼いっていうのは危なっかしいな。



「へー? せんせーはそんな嘘つくんだー? あたし知ってっけどなー?」



「看護師さん、そろそろお仕事に戻ったほうがいいと思うよ」



「先輩、先生のこと知りすぎですよっ。どうして教えてくれなかったんですか?」



「うふふ。好きな人のことは、知りたがるものでしょー?」



 色々と調べているのは知っていたけど、まさかそこまで知っているとは……これは、敵わないな。



「ね、憲邇さん、どして結婚しなかったの? さっきの言葉どおりじゃないの?」



「違うんだなー、これが。まあ、似てはいるんだけどね。あのね、娘さんがね、反対したの。大きいほうがね。お母さんが、結ばれるのがいやだったみたい。……自分が、結婚したいってさ」



「……ああ……」



 まずい。これから頭が上がらなくなりそうだ。



「なまじ十三だから知識はいっちょまえでしょー? もうすぐあたしだってそういう関係になれる、だから、せめてそれまで待って、あたしかお母さんか選んでって、さ」



「なるほど。それは確かにありえそうです」



「それ、なんかわかるな。お父さんかだんなさんだったら、だんなさんがいいよねぇ」



「うん、うんっ」



「母親もね、そこまで反対されるんだったら、もう数年くらい、待ちましょうってさ。子供の気持ちは移ろうものだから。それからもいい関係が続くはず、でした。でも、その親子がけんかしちゃってね。母親は、娘の幼さからせんせーが選ぶはずないって、余裕だったこともあって、娘さんが意地になって、いろいろ手段を講じてせんせーを誘ってさ、せんせーは超鈍感のとうへんぼくだから、なにをやっても紳士的に応対するだけで。そのうち、女としてみられてないと思った娘さんが、暴れてさ。『お母さまが結婚なさるのでしたら、私は家を出させていただきます』って、涙ぐみながら言い放って、しばらく家出して。お母さんが、このままだといい関係は築けない、せんせーにも迷惑かしらと思って、実家に帰ったの。それでおしまい。でも、いまだに連絡はしてるんですよねー? せんせー?」



「……」



 あまりにも具体的に知りすぎていて少し怖かった。ど、どうやって調べたのだろう……それを聞くのも、また怖い。



「……憲邇さ、さんみたいに、好きになられすぎるのも大変なんだ」



「ていうか、せんせーは当時その娘の気持ち気づいてなかったでしょー? 言われるまでちんぷんかんぷん、言われても決して一線を超えようとしなかった。いけませんねー、女の子があそこまでしてるのに、恥をかかせるなんて」



「なにしたの、なにしたの?」



「ふふふ。それはね……」



「沢田さん? ちょっと来てくれる? 手が足りないの」



 助かった。別の看護師に呼ばれ、渋々、泉も部屋を出て行った。



「……」



 なんとなく、苦しい沈黙。……寝よう。そう思って横になろうとすると、誰かが引き上げた。



「ねっ、ねっ、なにされたの? 教えてっ」



「その人とどんな連絡とりあってるんですか?」



「その家族とは、やり直さないんですか?」



「……」



 ああ、泉は諸刃の剣だったようだ。仕方ない、無理矢理にでも寝込んでやる。



「あー? 教えないと、いたずらするぞっ」



「だ、ダメッ! まゆちゃん、先生は怪我人よ?」



「だいじょぶ、えっちなことするだけだから……」



「……」



 いや、止めてくれ! 納得するな!



「わかった、言う、言うから、潜り込まないでくれ、見つかると大変だ」



「あ。ごめんなさい」



 もぞもぞと足のほうから忍び寄ってきたまゆを押しやって、仕方なく起き上がる。



「そんなに面白いものでもないよ。普通に、一緒にお風呂に入ったりとか、ドレスを着せてあげたりとかね」



「ちょっと待ってください、どこが、どう、普通なんですかっ?」



 ……あれ。なんだか怒ってるみたいだぞ。



「いや、ほら、十三ならお風呂ぐらい、それに、ドレスを着るのは初めてみたい、で……」



 近い、顔が近いってみんな。



「どうしてっ、そこまでする女の子の気持ちがわかんないんですかっ。背伸びしたいからドレスを着るんでしょっ。あなたに大人だって思われたくて、がんばったのにっ。お、お風呂に入るだなんて、普通ありえませんっ!」



 家柄上、そういうのに頓着がないのかと思っていたのだけれど……そう、なのか?



「ひどいなー、憲邇さん。その子はずーっと告白されるの待ってたんだよ、きっと」



「そうかな……憧れだと思うよっ?」



 あれ、頬を引っぱられてるぞ?



「その子のことは好きだったんですか? それともなんとも思ってなかったんですか? 答えなさい」



 答えるから、と手を放してもらう。「……かわいいとは、思ってたよ。もう数年経っていたら、わからなかったかもね」



「今こうしてあたし抱いてるのに?」



「……好き、だったよ。けど、もう少し大きくなるまでは、彼女のほうから求めてこないかぎり、そういうのはやるべきではないからっ?」



 痛い痛い痛い! 今度は強く引っぱり過ぎだって!



「それはもう求めてたんですっ! どうしてわかんないんですかっ! この朴念仁!」



 なんだろう、さっきから広子の怒りが凄まじいんだけど……もしかして、自分を重ねてる?



「私だってっ、あの日、あなたから千歳ちゃんと付き合ってるって聞かなかったら、無理だってわかってなかったら、絶対、言えないのに……ひどい、です……」



 広子は、仕事に関する憧れだとばかり、思っていた。広子も、泉も。まゆは幼さゆえの憧れ、千歳と静香は治療からの誤解、みゆは──



 だから、本当に好きだとは、思わなかった。こうなるなんて、夢にも……



 掴んでいた手が、緩やかに落ちていく。その手をそっと、包んだ。



「ごめん」



「いーえっ、許しません。私ともお風呂に入ること、それと、ドレス買ってきますから、着せてくださいねっ、それでデートですっ」



「あ、あたしもー」



「私もしてほしいな」



「……あたしも」



「……わかった。みんなとやるよ」



 ちらちらとこちらを窺い、言い出せなかったみゆの手を取る。「みゆともね」



「は、はいっ」



「あれ? みゆちゃん、なにこ……うわぁ! 指輪じゃん! いーなーいーなー」



 今までみゆがひた隠しにしていたものを持ち出され、彼女は真っ赤になって右手の中にそれを埋めた。



「あ、あの、これは……」



「先生がプレゼントしたんで」



「違いますっ! じ、自分で、買ったんです」



「左手の」



「薬指に」



「自分で」



 四人は顔を見合わせ、面白そうに頷いた。



「……じゃあそういうことにしましょうか。でも、いいなぁ、指輪」



「あたしも買おっと。せっかくだから、憲邇さんに選んでもらお」



「そうですね。私も先生に選んでもらいます」



「あたしも」



「あの、みんなそういうのはひどいと思うよ」



「……」



 みゆの顔がくしゃくしゃだ。「いいじゃないか、なんだって。ね?」



「ぷ、プレゼントしてもらいました、しょ、将来、みんなと、け、結婚するから、その、ぜんしんだって」



「……」



 微笑んでいたみんなの顔が、固まる。



「これが治ったら、一人ずつデートしたいな。渡したいものがあるから」



「はいっ!」



 駆け寄りたいのか、彼女たちは慌ただしく動こうとして私を慮り、お互いに抱きしめ合っていた。



「結婚といっても、形だけだよ。実際は誰とも」



「そんなことはどうでもいいんですっ。もう、ほんっとに女心がわからないんですから」



「……そうだね」



 そんなに私がいいとは、思えないのだけれど。



「ぜんしんってなに?」



「ああ、そのときにきちんとした指輪を贈るから、それまではこれで我慢してっていうのだよ」



「ふぅん。あたしさっきので充分だよ。きれーだったなー」



「うんうん」



「あ、あたし果物切りますね」



「み、みゆもやりたいです」



 どうやら彼女たちはしばらく帰る気はなさそうだ。こんなに賑やかなのも、悪くない。



 彼女たちといるみたいだった。



 



 



「私だよ。調べはついているかな? うん、今回の……そう、やっぱり。わかった、ありがとう。いつものとおり、こちらから手を出しちゃいけないよ。うん……私は大丈夫。心配しないで。……? ああ、そうだね、お見舞いは夜になってから。うん、明かりが殆ど消えてからね。え? パティは来ないの? ああ、わかったよ。無理はしないで。絶対に増やしちゃダメだからね? うん、そう。そっちには多分、治ってから二、三日で行けると思うから。うん、みんなに言っておいて。そう、知ってる。みんなで祝わないと。うん、それじゃあね」



 電話を置く。彼女たち……老人たちを止めてもらっている、力のある彼女たち。その内の一人が、もうすぐ誕生日だ。誕生日と言えば、確か広子も今月の末ぐらいに誕生日だ。プレゼントを考えておかないと。



 ……最近、お年寄りの患者さんは増える一方だ。多くは、あの老人たちのような人ではない、普通の、穏やかな人たち。しかし中には、激しい人もいる。病院の応対に納得がいかない人も多い。今お会計のところと売店の近くを通ったが、傍目にもイライラしている方が多いように思える。お年寄りなのに、だ。無論、それは偏見だろうが。



 静かな老後……は、私は送る必要はない。できるなら、みゆたちに送ってもらいたい。みゆたちと、パティたちに。そのために私たちは働くべきだ。下の世代のために。少なくとも、私の両親はそう教えてくれた。私もそのとおりだと思う。



 両親……父はもう他界し、母は去年から仕事の関係で外国に行っている。もうそろそろ帰ってくるかもしれないと連絡があったが、どうだろうか。帰ってくるのなら、今の状況をどう教えたものか。思案しなければならない。



「だから、胸を触ってもらうにはそっとことあるごとに押しつければいいんです。触りたくなってきます、先生も。私はずっとそうしてきました」



「それ、そんなおっきぃから言えるんだよ! 押しつけたって意味ない人はどうすりゃいいのさ!」



「それは……」



 だから、声が大きいって。



 



 



 ようやく帰ってきた我が家は、確かに葛西さんの言うとおりぴっかぴかだった。みゆの風邪も治ったし、今日は一日ゆっくりしよう。



「あの、せっかく退院できたのに、どうしてみゆだけ……ほかの人のほうが……」



「今日はみゆとやりたかったんだけど、そっか、みゆは嫌なんだ。じゃあ」



「いやじゃないです! みゆもすっごくやりたいです! い、いじわる、言わないでください」



「よろしい」



 みゆの卑下癖は、中々治らないだろう。寧ろ、あっさりと治ったらそれはそれでおかしい。楽しむつもりで気長にやっていこう。そう、彼女たちの治療だって楽しかった。



 変わっていく、ということは。



「じゃあどうしよっかなぁ、あのときの罰ゲーム、はなかったことにして、うぅん……」



「んっ、あ、あの……んっ」



 考えながら、口付けをしていく。どうしよう。今日はなにを言わせようか……



「んっ、ん、ん、んう、ふぁ、ん、んっ、んっ」



 元々、淫語とかに詳しくもないし……今度勉強しようか? AVとかで。



 こうして、ただみゆの頬に両手を添えてキスだけをするのもひどく興奮する。頬も、唇もふわふわと柔らかなみゆのそれを味わうのは、なんだか背中がちりちりしてくるんだ。体温はすぐ上昇して、お互いにすぐに火照っていく。みゆは元々子供にしては体温は低く、まず私が熱くならないといけなかった。



 添えられたみゆの小さな手に温かみを感じるぐらいまで、じっとキスをし続けた。ようやく口を離すと、艶やかな糸が引き、みゆの瞳も完全に潤んでいた。



「あ、あの、ベッドで……」



「……ん? みゆは、もしかしてえっちはベッドでしたい?」



「はい。その、そういうことは、ベッドのあるとこじゃないと……」



 ふぅん。それはいいな。



「じゃあ、今から玄関に行こう」



「えっ? ど、どうしてですか?」



「そうだねぇ、良子がお掃除してるときにトイレでするのもいいけど、今は玄関かなぁ。ほら、行くよ?」



「あ、あの、どうしてですか?」



 にっこり笑って、「そっちのほうがきっと気持ちいいよ」と手を引っ張っていった。



「よくないです! ひ、人に見られますよ!」



「大丈夫、玄関は磨りガラスだから人がいるくらいしかわからないよ」



「で、でもっ、あの、やっぱり、ベッドが……」



 足を引きずるので、仕方なく持ち上げることにする。慌ててみゆはスカートを押さえ、残った抵抗はじたばたすることぐらいだった。



 おやつ時。誰かがここを通る可能性はそれなりにあるだろう。みゆだって学校が終わったばかりだ。夜まで来ないで欲しいと言っておいたが、誰か来るかもしれない。それはそれでいい。ちゃんとみゆは隠そう。



 すとんとみゆを床に置いて、かすかに震える肩をそっと両手で包み込む。



「ほら、こっちから向こうは見えないだろう? だから、向こうからこっちも見えないよ」



「でも、でも……」



「嫌?」



「……」



「そう。ごめんね、じゃあ戻ろう。寝室で、鍵もかけたほうがいいね」



 私があっさり踵を返したので、みゆがおたおたしてる様子が見なくてもわかる。やはり、いけないな。自分のやりたいことばかりを押し付けては。



「ごめんね。ほら、戻ろう」



「あ、あ……こ、ここで、します」



「いいよ、無理しないで」



「します! みゆは、憲邇さまみたいに、嘘つきません。憲邇さまのいうことは、なんでも聞きますから」



 少し涙が滲んでいた瞳をごしごしと拭いて、耐えるように唇を結んだ。



「……ありがとう。かわいいね、みゆ」



「あっ」



 軽いキス、それからブラウスを脱がしていく。一歩歩けば、そこは靴の置かれているところ。もう一歩歩けば、そこには閉ざされた戸があるのみ。そこで肌を露出していく羞恥に、みゆはまた涙を滲ませ、スカートの裾を握り締めていた。



 やはり、まゆとは違う。みゆは貞操観念が強い。あの経験からだろうか。それともご両親の教育だろうか。どちらにせよ……ものすごく私の好みなのだが。



 子供用のシャツにしては薄い生地に、そっと手のひらを当てる。みゆは体をびくつかせ、軽く下唇を噛んだ。押し付けるように指を這わせ、乳首以外をこね回していった。



「……あ、あの、憲邇さまは、胸は、やっぱり、その、ちっちゃいままのほうが、好きですか?」



「どっちも好きだよ」



「でも、あの……あっ」



 乳首に触れると、敏感な声を上げる。最初に比べると、感じやすくなったものだ。



「そうだなぁ、触らせてくれなくなったら嫌いになるかな」



「そ、そんなこと絶対ないです!」



「じゃあずっと好きだよ。触りたい。触らせて?」



「……はい」



 あっちを向こうよ、と玄関を指差し、最初は嫌がったみゆをなだめて、半ば強引に向かせる。誰かが戸を開けたらひとたまりもない。まだ平らな胸を後ろから揉みしだかれている様が、目撃されてしまう。そう、耳もとで囁くと、ますます敏感な声を上げた。



「やっ、う、だ、うっ、やぁ」



「そうだ、スカートたくし上げて。見せてあげようよ、ガラス越しに」



「ううう……」



 言われたとおり、みゆはゆっくりとスカートを持ち上げていく。正面から見れば、みゆの白い下着が丸見えだろう。うぅん、カメラの位置から見えるかな?



「あれ、おかしいな、私のところからじゃ見えないよ。見たいなぁ」



「……はい……」



 前と後ろ、両方からも見えるように斜めに持ち上げる。見えた白い布に、私のものをこすりつけた。



「ひゃっ」



「さっきキスしてたときからこうだったんだ。ごめんね、男はみんな変態なんだ」



「……ぅ……」



 それでも、両手は下ろさない。やっぱり、「かわいい」



「あぅ」



 上から、下着の中に手を入れる。左手は下の、右手は上の。震えながら持ち上げ続けるみゆに、少しずつ、愛撫をしていった。



「……ん……ぁ……ぅ……ぁ……」



 両目を瞑って時折首を振り、されるがままにする。奥に指を入れるたび、顔を持ち上げ、乳首にかすかに触れるたび、身をよじる。



「あ……あ、のっ、ゆ、指、なめちゃ、いけま、う、せんかっ」



 指? 胸をいじっていた右手を口まで持っていくと、見もせずにしゃぶりだした。安堵したかのようなため息が時折漏れる。舐めるものがあると安心するのだろうか。口が寂しいだけ? どちらにせよ、嬉しいことだ。



「指舐めるの、好き?」



「ふぁ、あい、ふ、ん、好きです」



「あそこいじられるのと、どっちが好き?」



「ふぇ? そ、そんなの……ゃ、う……」



 答える代わりに、必死に指を舐め続けた。強くあそこを押すと、一瞬動きが止まるが、すぐに同じくらい強く舐め返してくる。



「ふぅん、みゆはあそこより指舐めてるほうがいいんだ。そっか。じゃあもうやめちゃおう」



 するっと左手を抜くと、「あ、あ」とみゆも口を離した。



「……あ、あの、あそ、こ、いじるのも、好き、ですぅ……」



「どこ?」



「ううう……おま○こですぅ」



「そう、わかった。じゃあいじるね……どっちが多く濡らすか、競争だよ」



「ふぁい……」



 本当に好きなのか、かなり一心不乱に舐め続けてくれる。少し感嘆しながら、左手はあちこちを刺激していく。そのたびに、脚をくねらせてはため息が漏れていった。



「ふぁ、う……あん、ふっ、好きぃ……憲邇さま、んっ、好き……」



「好きだよ。私だって」



 摩擦音がいつまでも響いていく。今玄関の前に誰かがいたら、確実に気付くくらいには音が出ていた。みゆももう夢中で、そのことには気付いていない。



「誰かいるよ」



「えっ」



 体が硬直する。膣内が軽く締めつけられ、指が押さえられてしまった。



「嘘だよ。大丈夫、誰もいない」



「……ひ、ひどいですぅ、憲邇さまぁ……」



「ごめんね。でも、今のでちょっと濡れてきたんじゃない?」



「ええっ? そ、そんなこと……」



 多分、関係ない。愛撫してきたから順当に濡れてきただけ。でも、そう言うとまた赤くなるから。



「ふふ。いいんだよ、濡れたって。淫乱だっていいじゃないか」



「い、いんらんじゃ、あっ、ないですぅ」



「じゃあ、自分で下着下ろして、見せてよ」



「……ううう……」



 私が離れると、みゆは持ち上げていたスカートからいったん手を離し、中に手を入れ、下着を膝まで下ろし、それからまたスカートを持ち上げた。



 その隙を突いて玄関の戸まで飛びつき、一瞬だけ、ガラッと戸を開けた。



「ひゃああ!」



 もちろん誰もいなかったし、すぐに戸は閉めたが、二つのカメラが、今の様子をきっちり記録していた。よかった。二方向から撮っておいて。



「あれ、みゆ、見せてって言ったのに隠しちゃダメじゃないか」



「だ、だって今っ、と、戸がっ」



 みゆはしゃがみこんで丸くなっていた。両手で必死に隠してはいるものの、よく見ればそこに下着があるのはわかる。上半身もそうだし。



「どうかな、興奮した?」



「しませんってばぁ! ここ、怖いだけですっ!」



「じゃあ確かめるから、もう一回見せてよ」



「……ううう……」



 泣きながらも言うことは聞いてくれる。この辺も、後々変わってくれると嬉しいな……確かに、小さな秘部はわずかに濡れているだけで、とても興奮しているとは思えなかった。



「ごめんね、違ったみたいだ」



「ひどいです、ひどいですぅ……」



「でもまっかっかのみゆ、かわいいよ」



「ひどいです、ひどいですっ」



 う、困った。どうしよう。試しに、右手の指を差し出してみる。あ、舐めてくれた。



「あそ、こも……」



「うん」



 露になったままの性器の中に指を滑らせていく。もう少しほぐせばいけそうだ。



「もう、憲邇さまの、ぅ、バカァ……でも、好き……きらいに、なれない……」



「私もだよ。好きで好きで、嫌いになんて……」



「はぁ、あったかい……あっ、あ……」



 そのまま愛撫を続ける。みゆの息がだんだん途切れ途切れになり、スカートを持ち上げる腕が少し下がってきたところで、あそこも充分濡れてきた。



「……ふぅ……ふぅ……」



 いったん腕を下ろして一休みする。紅潮した頬に自分の頬をあわせて、楽しんでみた。うん、柔らかい。



「みゆはどんな格好でしたい?」



 シャツを脱がして、スカートと下ろしたパンツ、それとソックスだけになる。この場所を思い出したのか、みゆは肩を抱いて何度も戸の向こうを窺っていた。



「え? えっと……さ、最初にしたのが、いいです」



「普通のやつ? どうして?」



「だ、だって、憲邇さまの、顔が見れますし、しがみ、つけますから」



「そう。わかった」



 じゃあ玄関のほうから見てみゆとの結合部が見えるように、みゆの頭を玄関に向けよう。そうするように床に押し倒すと、やっぱり上をちらちらと見やる。「誰か来たら、大変だね」



「そ、そんなこと言わないでください」



「ごめんごめん。じゃあ、挿れるよ」



「はい……あっ、う……っ、っはっ! う……」



 何度挿れてもきつい。まだ、挿れるたびにぽろぽろと涙が零れてくる。強引に奥まで突き上げると、大きな嬌声が出た。



 かわいいな……



「あ、りがとぉ、ございますぅ」



 ……どうやら声が漏れていたようだ。思わず、というのは久しぶりな気がする。



「はっ、はぁ、は、はっ……あ、んっ……あぅ、う、ふぁっ……やぁ、だ、め……あぁっ!」



 時々我慢できないのか喘ぎ声が大きくなる。そのときは大抵、奥まで突いたときだ。小さいからかぎゅうぎゅうに締め付けられ、半分程度でもものすごい刺激になっている。気持ちよさはやはり望外だ。すぐにも射精そうだが、みゆの力は本当に便利だ。



「け、んじっ、さまっ……けんじっ、さまぁ……はぁ、はぅ……」



 みゆはもう両手を首に回し、両足を巻きつけしっかりと私を掴んでいた。力いっぱい抱きしめてくるので、こちらも堪えきれず少し強めに突いてしまう。



 ……ぼそりと囁いてみた。「ほら、言ってご覧」と、困った顔。



「い、言えません」



「じゃあ、ほら、外に向かって大声で言ってご覧」



「む、無理ですぅ……恥ずかしくて、言えません……」



「言わないとずっと射精しないままやり続けるよ? みゆが言うまでやめないから、誰かに見つかっちゃうね」



「……ううう……はっ、はっ……」



 一度深呼吸をし、覚悟を決めたみゆはしどろもどろながら言ってくれた。



「み、みゆはぁ、今大好きな人と、えっちしてますぅ……ううう……せ、せっくすしてます、お、ち○ちん、おま、おま○こに挿入ってますぅ……」



 張った声ではないが、一応言えたことは言えたので及第点かな。最初から完璧に言えてしまうのも面白いが、こうして少しずつ慣らしていくのも悪い訳がない。



「よく言えました。みゆのおかげですっごく興奮したよ」



「はぁ、い……」



 こんな子が、こんなかわいい小さな子が、あんな台詞を言うだなんて……ああ、考えただけでもう、大変なことだ。嬉しくてたまらず、奥を奥を突き続ける。そのたびに喘ぎ、歪むみゆの顔は綺麗だった。とめどなく溢れていく涙に、ぐにゃぐにゃの目。真っ赤な肢体。みゆの愛液と自分のものが擦れる音。かすかに漏れる吐息。なんだか、いつもより余計に締め付けてくる気がする。



「は、あっ、はー、はーっ、はーっ、はーっ、はーっ」



 そろそろ限界だな。ピストン運動を少しだけ激しくして……「みゆ……!」



「けんじ、さま……ぁふ……!」



 今日一番に両足でしがみつき、奥で射精が始まってしまう。数日分が一気に発射され、すぐに小さな膣から溢れてきた。



「……はっ、はっ、はっ……はー、はー……」



 ぽうっとしたみゆの表情を見ていると、やっぱり愛おしい。流れ続けていた涙を手でしっかり拭くと、首に回していた手をそれに添えた。でも、足は離さない。



「みゆ、これじゃ抜けないよ」



「……抜き、はー、たく、ない、です……」



「そっか。じゃあ、しばらくこのままで」



 この時間に誰かが来るかも、とは、言わないでおいた。



「あったかい……においがする」



 みゆはどこかうっとりとした表情で、幸せそうに私の手に頬をすり寄せた。



 軽く、口付け。



「け、憲邇さま、この体勢でキスするの、つらくないですか?」



「なに言ってるんだ、好きな人とキスすることが、辛い訳ないだろう? したいことをするのが、苦しいなんてことはないんだ。みゆとたくさん、いつだって、キスしてえっちしていたいんだよ」



「……ぁ……」



 回された足に力が込められる。心なしか、膣にも締め付けられている気がする。



「うれしいです、憲邇さま……みゆなんかと、キスしたい、えっちしたいって……みゆも、もっともっと、いっぱいえっちしたいです。キスしたいです」



「うん。たくさん、たくさんしよう」



「はい……」



 しばらく、そのままでいた。横になろうかとも思ったけど、みゆが掴んで離さないので、せっかくだからそのままにして。やがて疲れたみゆが足を下ろして、静かな寝息を立てた。事後処理を終えてからベッドに運ぶ。軽い体だ。十四キロだっけ。こんな体で、よく……



 やるべきことはたくさんあったが、それよりも今は、みゆの傍にいるべきだと思う。隣に横になり、みゆが起きるまでは。



 一時間半ほど寝続け、ゆっくりと目を覚ました。傍に私がいるとわかると、またひまわりのように笑って、抱きついてくる。



「みゆ、気持ちよかった?」



「はい。いつも気持ちいいです」



「本当に? 嘘つくと、もうキスしてあげないよ」



「あ、あ……あ、あの、今日、はじめて、き、気持ちいいって、ちょ、ちょっとだけ、感じました」



「そう。よかった」



 やっぱり、あの感じはそうだったのか。ようやくだ。よかった……のか? この年でもう、というのは。



 元々、みゆはセックスの最初のうちは演技での喘ぎ声を上げる。それも楽しませようとするみゆの配慮で、かわいいものだ。段々本気に変わっていくのは、例えようもない充足感に満たされていく。私は、嬉しいが。みゆにとって、どうなのだろう。



 幸せそうに目を閉じているようには、見えるけれど。



「あ」



 ん? 「どうしたの?」



「け、憲邇さまは、みゆの、お、おしっこ、見たいですか?」



「ふぅん? ねぇみゆ、どこからそんなこと知ったのかな?」



「えっ、だ、だって、まゆちゃんが、見てもらったって」



 ああ……



「そうだなぁ、みゆがどうしても見せたいって、『みゆはおしっこ見られて感じる淫乱な女の子です』って言えたら、見てあげてもいいよ」



「……は、はぃ……わ、かりました……」



 軽く頭を撫でる。「でも、無理しておしっこしなくてもいいよ。そっちのほうに慣れたんなら」



「えっ」



「我慢のしすぎもいけないけどね。無理はするな。命令だよ。無理に、私の言うことを聞く必要はないんだ。言いたくないなら、言わなくていい。恥ずかしいなら、やらなくてい」



「いやです! け、憲邇さまの言うことを聞きたいんです! 恥ずかしくなんてないです、言いたくないことなんてありません、全部、憲邇さまのものですから……」



 震える、幼い体躯。また、わからない。間違えている。思い遣ったつもりでも、それがいい迷惑であることなんてままあること。



 どちらがいいのだろう。くすぐられる加虐心のままに行動するのか、それとも庇護したいままに包み込むのか。どちらを、みゆは喜ぶのだろう? まさか、どちらも?



 わからないまま、ただ、貪るだけ。



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 第七話あとがき的戯言



 



 三日月(みかづき)まるる、以下作者「看板は大きくても当たり具合でそれほど重傷ではない場合もあると思います」



 眞鍋みゆ、以下みゆ「そうなんですか?」



 作者「こんばんは、三日月です。このたびは「ごめんなさい」第七話を読了くださりましてありがとうございます。みゆさんに三度登場していただきました」



 みゆ「あの、広子さんとか、泉さんのほうがよくないですか?」



 作者「そんなこと言うとチンジャオロース食べさせますよ」



 みゆ「なんですか? それ」



 作者「多分中華料理の一種です。詳しくは私も知りません。食べたことも一、二度くらいしかないので、おいしかったかどうか覚えてもいません。なので食べてください」



 みゆ「はぁ……」



 作者「えー、風邪をひいている人を飲食店に連れて行くのはやめましょう。今回は多分、憲邇さんはうっかりしていたのでしょうね」



 みゆ「あ……そ、そうですよね、ほかの人に迷惑が……」



 作者「ところで、みゆさんは身長と体重いくつですか?」



 みゆ「えっと、身長が百二センチ、体重が十四キロです」



 作者「……え? そ、それは本当ですか?」



 みゆ「はい。あの、それがなにか?」



 作者「まずいな……当初は小学一年生の平均が百二十センチだと思って意外になんとかなるかと思っていたのに、そんなに小さいと絶対に挿入りませんよね……」



 みゆ「挿入りましたよ? みゆには力がありますから」



 作者「そうですね。気にしては負けです。えーっと、手帳をつけているそうですが、ハートマークにしてると見られたときにすぐわかりますよ」



 みゆ「えっ、あ、そうですね。どうしよう……で、でも、ごまかせました」



 作者「うぅん、そうですね、確かに今ならなんとかなるかもしれませんし、いいのかも。えっちのほうは大体三日に一回、毎日じゃないのですね」



 みゆ「み、みゆより、ほかの人のほうがたくさんしてますよ……」



 作者「でも、静香さんはみゆさんだけ回数が多いと言ってましたけど?」



 みゆ「それは、きっとみゆが一番長いからです」



 作者「いつしてるとか教えてるのですか?」



 みゆ「いいえ」



 作者「じゃあどうやって調べてるのでしょうね……今度聞いてみましょう。みゆさんも、自分の分は後で振り返って数えておいてください」



 みゆ「は、はい……」



 作者「……ああ、既に結構してるんですね。後でこっそり、教えてください。それではまた」



 みゆ「か、数えてないです……さ、さようなら」



 



 20090207 三日月まるる



 




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2009/02/11 23:18 | 小説COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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